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【 フクシマ : 強い比放射能を放つ粒子状物質、ホット・パーティクルがもたらす脅威 】〈4〉

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所要時間 約 8分

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ホット・パーティクルによる被ばくは極めて危険、絶対に口に入れてはならない
事故を起こした原子炉内で生成され、外部に漏出してしまった疑いがある
福島第一原発の本当の健康被害を明らかにするため、ホット・パーティクルの実態を解明する必要がある

フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイション 4月3日

さて私はこの検体に等級をつけなければなりません。
日本では放射線量をベクレルという単位で表します。
ベクレルというのは放射線の発見者であり、この功績により1903年にノーベル物理学賞を受賞したアンリ・ベクレルの名前にちなんだものです。
1ベクレルというのは、具体的に1秒間に1回の放射性崩壊が起きることを表します。

現在、日本においては1キログラム当たり100ベクレル以上の食品が、食べては危険であるとされています。
これはアメリカ合衆国の安全基準よりいくらか緩いものですが、とりあえずこの基準を基にホット・パーティクルについて考えてみましょう。
私たちのもとに送られてきたサンプルはペタベクレルという単位で汚染されており、当然のことながら絶対に口に入れてはならない程危険なものです。
ペタなどという単位が日常使われることはまずありません、ゼロが19個並ぶほどの莫大な単位です。
原子炉の炉心でなければ存在しないような、非常に高い量の放射線を放っている物質なのです。

ホット・パーティクルはきわめて小さな塵状の物質ですが、その小ささを証拠立てるような、こんな出来事がありました。
実際に送られてきたあるサンプルについて分析を行った時の事ですが、まずはじめに全体の放射線量を測ったところ、310ベクレルという数値がでました。

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送られてきたサンプルは掃除機の使用済みのカートリッジでしたが、測ったところ線量計の針は310ベクレル前後でカタカタ触れる程度であり、その値は福島県全域の掃除機の使用済みのカートリッジの放射線量の平均をわずかに上回っている程度だったのです。
そのため私たちはこのサンプルに、それ以上の注意を払う事はありませんでした。

ところで私たちはホット・パーティクルの存在を確認する作業の第一歩として、ゴム手袋のついた密閉容器や覆いのついたケースの中でサンプルを切り分ける作業を行います。
この半分に切り分けたサンプルの放射線量を計測した場合、質量が半減したのだから放射線量も半分の155ベクレルになるものとお考えかもしれません。
正しいでしょうか?
半分になった一方を実際に計測したところ、私たちは周囲の空間線量以外、何も計測できなかったのです。
実質的にゼロです。
残り半分の方に放射性物質はかたまって存在していたのでしょうか?
そこでもう片方も計測しました。
ところがこちらもゼロだったのです。
いったい放射性物質はどこに行ってしまったのでしょうか?
そこで私たちはこのサンプルをもう一度一つにまとめ、計測を行いました。
結果は310ベクレルです。
なぜなのでしょう?
ちょっとしたミステリーでした。

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そして私たちはホット・パーティクルがこのサンプルのちょうど真ん中に存在し、ナイフを使って切り分けた際、それがナイフの刃に付着してしまったことを突き止めたのです。
そこで私たちはナイフの刃先を顕微鏡で確認しながら、慎重にそこにあったホット・パーティクルを回収し、その放射線量を計測したのです。
結果はぴったり310ベクレルでした。

そこで私たちはすぐに、正確にホット・パーティクルの位置を特定し分析を行うため、手順を少し改めることにしました。
高い放射線を放つホット・パーティクルを見つけ出すまで、私たちはサンプルを2つに切り分ける作業を続けます。

今回私たちは福島県浪江町、飯舘村、そして北日本の2つの市町村から検査用のサンプルを受け取りました。
このサンプルは普段見かける黒い砂粒に非常によく似ています。
コンクリートの小片を顕微鏡に乗せて見た場合を想像してみてください。
コンクリートというのは、砂とセメント、そして砕石片の混合物です。

私たちは今、黒い粒子が最悪の場合何であるかについてお話しています。
それはこの黒い粒子がホット・パーティクルである場合です。

汚染水プール
ホット・パーティクルを構成する物質は事故の際、福島第一原発の事故により気化して環境中に放出され、やがてそれらが寄り集まり、凝固して、その存在を確認できる1個の物体と化しました。
それは風によって運ばれ、やがて何かにぶつかり、そこに付着したのです。

名古屋のケースでは風に乗って飛んできたホット・パーティクルが屋内に入り込み、カーペットまたは床材、あるいは屋内の何かに付着したものと考えられます。
そしてそれが掃除機によって吸引され、ごみの詰まった紙パックの中に入り込んだと考えられます。
幸いなのは他にもサンプルの分析を行いましたが、名古屋ではこれ以外にホット・パーティクルが検出されなかったという点です。
この家庭以外の場所ではホット・パーティクルの存在を確認するサンプルは見つけられず、この家庭でもこの掃除機の紙パック以外からはホット・パーティクルは検出されませんでした。
従って私たちの調査結果は、この家庭で発見された以外のホット・パーティクルはその存在を確認できなかったということになります。
実際、そうしたサンプルはありませんでした。

しかしそれた逆の言い方をすれば、ある特定の場所には強い放射能を放つホット・パーティクルの存在が存在する可能性があり、調査をする価値があるという事になります。
なぜならホット・パーティクルによって被ばくをすれば、人間の健康が大きく損なわれる危険性があるからです。

NBC02
現在まで福島と東京から送られてきた様々な形のサンプルのうちの25%から、計測が可能なホット・パーティクルが平均して2~3個検出されています。

その中でこれ程強い放射能を持つものは、名古屋で発見されたこの一個だけでした。
しかしそれは最悪のケースでした。
このホット・パーティクルはいかなる平均でもありませんが、可能性としてどのような問題が考えられるか、その事実を証明しています。

ここが肝心な点です。
私には送られてきた全てのサンプルについて調査・分析を行い、全体の傾向を見た上でそれぞれのホット・パーティクルについて等級をつけて分類しました。
そしてそのデータをワーチェスター工芸研究所の研究員たち全員が、閲覧・検証できるようにしました。
同時に現在は、このデータを出版できるように準備を進めているところです。
そこまで実現すれば、従来の平均的空間線量による外部被ばくに加え、ホット・パーティクルの存在によって人々がどの程度の被ばくをしてしまったのか、研究者が結論を出せるようになるはずです。
そうすれば、福島第一原発の事故による健康被害の実態を、一層明らかにすることが可能になります。

アーニー・ガンダーセン
このような物質科学的な話は、これまでの一般的な報道や、東京電力の発表、あるいはIAEAのコメントなどでは決して触れることはありませんでした。

フェアウィンズは福島第一原子力発電所の事故により、日本国内でガンの発症割合が著しく上昇する危険性がある事を繰り返し警告してきました。
今回ご紹介したホット・パーティクルに関するビデオは、まさにその最悪の危険性について証明するものであるのです。

〈 完 〉

http://fairewinds.org/hottest-particle/

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