ホーム » エッセイ » 【 ゲンパツが二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすというのは本当の話ですか?】《2》
新たに1,000基の新型原子炉を稼働させたとしても、CO2(二酸化炭素)排出量は増え続ける
わずかな割合の二酸化炭素(CO2)排出量を削減するために、ゲンパツは信じられないほど巨額の投資を要求する
アーニー・ガンダーセン / フェアウィンズ 2016年10月19日
大気中のCO2(二酸化炭素)の濃度は、100万個の空気分子の中にいくつCO2(二酸化炭素)の分子が含まれているかという単位で計測されます。
これがppmという単位です。
産業革命以前の時代、世界的なCO2(二酸化炭素)濃度の通レベルは、およそ280ppmであったと考えられています。
歴史上初めて商業用原子炉が世界で本格的稼働を始めた1970年、CO2(二酸化炭素)の世界的な排出量は約16ギガトン、そして大気中のCO2濃度はおよそ320ppmでした。
世界で初めてCO2(二酸化炭素)の排出量が地球温暖化をもたらすと提言したNASAの
ジェームズ・ハンセン博士は、地球規模の破滅的な気候変動を避けるためには、大気中の炭素濃度を350ppm以下に留めなければならないと主張しました。
しかし2015年までに、多額の政府資金が原発建設・維持のための補助金として世界各国で交付された結果、438基以上の原子炉が建造され、この間化石燃料を使った火力発電と合わせ36ギガトンのCO2(二酸化炭素)が大気中に放出されるようになりました。
そして大気中の二酸化炭素濃度はすでに400ppmを超え、毎年約2ppmの割合で増加を続けています。
原子力産業界のロビイストとそのマーケティングを担当する企業は、もし現在稼働中の438基の原子炉がもし存在しなかった場合、大気中のCO2(二酸化炭素)濃度はもっともっと悪化していただろうと我々が考えるように仕向けようとしています。
では彼らは438基の原子炉を稼働させたことにより、どのくらいの量のCO2(二酸化炭素)の排出を削減できたと主張しているのでしょうか?
世界原子力協会の産業業界団体は、438基の原子炉の代わりに化石燃料を燃やす火力発電所が稼働していれば、2015年1年間に1.1ギガトンの温室効果ガスが大気中に放出されていただろうと見積もっています。
では算数の問題です。
1.1÷(36.0+1.1)=0.0296…
つまり1.1ギガトンは総排出量の約3%です。
3%という数字は別に誤植ではありません。
世界中に438基の原子炉が築かれましたが、全部合わせて達成できたCO2(二酸化炭素)の削減量は3%だけでした。
今度はこれを原子炉1台について考えてみましょう。
438基の原子炉は1基ずつ0.007%未満のCO2(二酸化炭素)削減に貢献しています。
この程度の数値で、これ以上の海面上昇を防ぐために、あなたの町にある古くて危険な原子炉の稼働を続けさせるべきであるという主張を正当化できるでしょうか?
時間を2050年まで早送りしてみましょう。
マサチューセッツ工科大学(MIT)は、2015年のパリ協定(COP 21)が合意内容通りに実行され、さらに新しく1,000基の新型原子炉を稼働させても、世界的な二酸化炭素の排出量は少なくとも64ギガトン/年にまで増加するとする試算結果を明らかにしました。
これ程の増加が見込まれることはCOP 21の協定内容とかけ離れているように見えますが、多くの人口を抱えるインド、中国、東南アジア、アフリカ諸国などが欧米並みの生活水準の実現を目指している状況がそうさせているのです。
本題に戻りましょう。
2050年までに新造の原子力発電所はCO2(二酸化炭素)の排出量削減に貢献できるのでしょうか?
残念ですが過去に実際にあった出来事が前提条件となります。
世界原子力協会はCO2(二酸化炭素)の排出削減と気候変動の問題を解決するため、1,000基の原子炉を新造する必要があると主張しています。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の予測も新たに1,000基の原子炉が2050年までに稼働することが前提となっています。
世界原子力協会自身の計算によれば、1,000基の原子炉を新たに建造することによって削減できるCO2(二酸化炭素)の排出量は一年間に3.9ギガトンという量です。
もう一度算数の問題です!
2050年のCO2(二酸化炭素)の総排出量64ギガトンのうち、1,000基の新造原子炉が削減できるのは3.9ギガトン、つまり全体のわずか6.1%、これでは絶滅の危機に瀕しているホッキョクグマを助け出すことはできません。
これら1,000基の原子炉を擁する原子力発電所が安く、そして素早く建設することが可能なら、原子力発電所建設に投資することはまだしも意味のあることかもしれません。
しかし原子力産業界とは利害関係を持たないラザール・フィナンシャリー・アドバイザリー・アンド・アセット・マネジメントは、この1,000基の新造原子炉の建設コストが8,200,000,000,000ドルに上ると見積もる試算結果を公表しました。
わずか6% のCO2(二酸化炭素)の排出量を削減するために、8兆2千億ドル(約965兆円)が必要なのです。
-《3》に続く -
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
下の写真ですが、私の中でアレッポというのは秀逸な建造物が数多く残る輝ける古代遺跡都市というものでした。こうした観光資源に恵まれたシリアという国は『地中海の真珠』と言われたレバノンと並び、産油国ではなくとも中東でも豊かな国のひとつであったはずです。
それが5年間に渡る内戦の結果、遺跡に留まらず今を生きる多くの人々が暮らす場所を奪われ、命を奪われました。
民主化を求める抗議運動がなぜ内戦にまで発展したのか?
理由は様々あるでしょうが、双方に武器を渡した連中がいたはずです。
結局民主化は実現せず、街はロシア・シリア連合というダースベイダーの帝国軍のような軍隊にめちゃくちゃにされてしまいました。
何のために5年もの間、アレッポの市民たちは苦しみ続けたのでしょうか?
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
【 内戦の悲惨さと愚かさを記した傷跡 】《1》
アメリカNBCニュース 2016年12月15日
シリアのバシャル・アル・アサド大統領政権が反乱軍からアレッポを奪還しましたが、そこには内戦の悲惨さを証拠だてるありさまが広がっていました。
2010年10月6日、シリア、アレッポの旧市街のアレッポにある古代のグランド・ウマイヤ・モスクを散策する見学者。(写真上)
2013年12月15日時点の、同じグランド・ウマイヤ・モスク。(写真下・以下同じ)
2016年12月13日アレッポ市内の大部分を占領し、グランド・ウマイヤ・モスクを歩く政権派の兵士。
何週間にも及ぶ激しい戦闘の末、体制派の軍隊は5年間続いた反体制派の軍を壊滅状態に追い込み、アレッポ全市を支配下に置こうとしています。
2009年12月11日アレッポの史跡の砦から見たアレッポの旧市内。
2016年10月12日時点のアレッポの史跡の砦と廃墟の塊と化してしまった旧市街。
内戦以前のアレッポは、シリアで最も人口の多い都市でした。
http://www.nbcnews.com/slideshow/today-pictures-dec-12-n695231