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【 『積極的平和主義』という名の平和主義の放棄、日本の市民の足元に迫る脅威 】《後篇》

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所要時間 約 9分

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軍事同盟国を増やし、武器輸出の規制を緩和し、憲法第9条の解釈を変更し、自衛隊の増強に注力
安倍政権が舵を取る経済大国から軍事大国への転換

リチャード・ジャバード・ヘイダリアン / アルジャジーラ 2月1日

人質事件ALJ
▽ 資源エネルギーをめぐる利害を超える事態

天然資源に恵まれない日本は、産業力において世界をリードし、世界で第3位の規模の経済を誇る国を作り上げましたが、世界の中で最も資源に恵まれない国々のひとつであるという現実に変わりはなく、2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故以来続く危機によって、事態はかえって深刻になっています。
そして日本が消費する化石燃料の90%を供給しているのが中東地域です。

第二次世界大戦後の日本が実現した『経済の奇跡』、それを支えた重要要素のひとつは中東が供給し来た原油でした。
その中東の資源に対する著しい依存が、何かある度日本と中東を繰り返し世界規模の大変動へと追いやることになったのです。
こうした実情を考えれば、日本が1970年代と1980年代に発生した「オイルショック」によって、最も深刻な打撃を被った国のひとつになったことに何の不思議もありません。

長い間、日本はイランを含む多くの中東産油国の最大のお得意様であり続けました。
しかし一方で日本はその経済的影響力を中東地区全体に均一に行き渡らせることに、長い間苦労を続けてきました。

日米艦船
日本の最大の同盟国であるアメリカは、何十年もの間アジア地区における安全保障体制の元締めとしての機能を果たしてきました。
日本は中東における『有力同盟国』として中東地区で何かが起きる度、そのアメリカの外交方針に繰り返し従わざるを得ませんでした。
イランへの大規模投資の凍結、1991年のサダム・フセインに対する米軍・NATO軍による湾岸戦争、2003年の『同盟国有志による』イラクへの侵攻、日本はそのすべてを『支持』してきました。

平和憲法による制約は、日本が海外において軍事力を行使することを厳格に規制されています。
このため西側先進国が中東情勢の動乱にあたふたした挙句、繰り返し軍事介入を行った際も、日本はその役割をほぼ金融面の支援にのみ限定してきました。

日本は第一次湾岸戦争の際、最大の資金提供元になり、イラクを域に回した米軍・NATO軍に対し、130億ドル(約1兆5,300億円)を拠出したのです。

▽ 安倍政権が舵を取る経済大国から軍事大国への転換

中国の急速な台頭と朝鮮半島の政治情勢の不安定さが増す中で、日本は近年その外交方針を急ぎ見直す必要にせまられました。

Abeno07
安倍首相は東シナ海にある尖閣列島(ダイユー諸島)を巡る中国との危険なレベルに達している領土紛争を利用し、さらには経済の復興と人口の若返りを国民に約束することにより、日本の政権を取り戻すことに成功しました。

安倍首相は公約に従い『アベノミクス』と称する大規模な経済政策を実施しましたが、間もなく何十年も続いている日本の経済停滞を終わらせることができる程の政策ではないことが明らかになりました。

しかし外交政策の転換については、きわめて積極的でした。
首相就任以来2年の間に複数の大陸との間を数度往復し、何十カ国も訪問することによって日本の外交方針を転換し、フィリピン、ベトナムといった重要な軍事同盟国を増やし、武器輸出に対する規制を緩和し、憲法第9条の解釈の変更により集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の能力を強化する点においては、安倍氏は歴代首相の中で最も精力的でした

今年早々には、安倍首相は第二次世界大戦以降、最高額となる防衛予算を承認しました。
5兆円に上るその軍事予算により、F-35ステルス戦闘機、イージス艦戦闘システム、P-1海潜哨戒機、ノースロップ・グラマンRQ-4無人攻撃機その他に代表される最新技術を駆使した兵器の購入など、すでに世界有数の軍事力を誇る自衛隊の一層の強化が可能になりました。

トルコ原子力協定
西側先進各国と主要同盟国の中で日本の存在感を高めていくという安部首相の方針のひとつが、イスラム国対策を続ける周辺各国に対する2億ドルの資金供与だったのです。

それにもかかわらず、2人の日本の人質の悲劇的な死は、安倍首相が唱える『積極的平和主義』、すなわち海外紛争に進んで関わっていくという方針に対し、日本国内でくすぶっていた懸念に火を点け、そして反対意見を持つ人々を立ち上がらせる結果になりました。

安倍首相は今回の人質事件で2人の犠牲者の殺害に心を痛め、これ以上日本が海外の紛争に進んで関わることを望まない平和主義的な日本国民の意向を完全に無視して、西側同盟国との間の国際貢献に今後は日本も積極的に参加するという盟約 – 具体的にはイスラム国などの要求には決して屈しないとするアメリカ、イギリスなどとの方針も含めた『積極的平和主義』を、やみくもに推進するわけにはいかなくなっています。

〈 完 〉

※リチャード・ジャバード・ヘイダリアンは、中東・アジア地区の地政学・経済問題の専門家であり「資本主義はどのようにアラブ社会を破壊したのか」「中東動乱の経済ルーツと不安定な未来」などの著作があります。
本稿で示される見解は著者個人のものであり、必ずしもアルジャジーラの編集方針を反映しているわけではありません。

http://www.aljazeera.com/indepth/opinion/2015/02/abe-vision-threat-150201060458999.html
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ヨルダン人パイロットが『焼き殺され』ていたことが解り、ヨルダン政府が死刑囚2名の死刑を執行しました。
後者は法に基づく処刑ですが、どのような形にせよ『殺し合い』が始まったことに慄然とせざるを得ません。
焼き殺すなどというのは言語道断の行為です。
江戸時代日本にも『火あぶりの刑』はありましたが、その残酷さから、火をつけてから間もなく2本の槍を突きいれてとどめをさしていました。
そして交戦中ではあっても国際協定が存在し、捕虜虐待は国際法により禁じられています。
それが完璧な無法状態の殺戮が現実になっている場に、日本も巻き込まれてしまいました。

現在閲覧中の海外記事には、日本はすでに『交戦状態』にある、というものがありました。
振り返れば、太平洋戦争の実質的な始まりは真珠湾攻撃ではありませんでした。
張作霖爆殺、あるいは盧溝橋という『事件』が発端であり、その時も『抗日テロの激化』に対し『非の無い日本が屈することは無い!』と声高に叫ぶ声に、冷静な議論が圧殺されて行ったのです。

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【 故国を逃れ、隣国の路上で命をつなぐ人々 】《再掲載》

アメリカNBCニュース 2013年11月17日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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開戦から3年が経つにもかかわらず、一向に収束する気配の無い隣国シリアの内戦は、レバノンにとって社会的・政治的に大きな重圧となり続けています。
人口わずか400万人のレバノンには、どこよりも多くのシリア難民が流入しました。
国連によると約200万人の国民がシリアを脱出しましたが、そのうちの半分は子供たちで占められています。
レバノンの路上で命をつなぐ、子供を含めたシリア難民の数は5万人とも、7万人とも言われています。
レバノンの裕福な地区では、シリア難民が物乞いをするか、ごみ箱をあさるか、あるいは道行く人々の靴を磨いている姿が、あらゆる街区で頻繁に目につきます。

シリアのアレッポを脱出し、ベイルートの富裕な地区で物乞いをする女性。(写真上)

シリアのダマスカスを脱出し、娘とともに物乞いをする女性。(写真下・以下同じ)
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くず鉄を集めるシリア難民の10代の少年。(下2点)
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シリアのダーラを脱出し、ベイルートの富裕な地区で靴磨きをする15歳の少年。
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靴磨きをしている少年の手。
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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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