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【 自衛隊の新たな役割 – それは日本の民主主義史上の汚点?効果的抑止策?】[ECO]

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所要時間 約 9分

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安倍首相周辺による脅迫的国家主義は、敵対する人々を『反日(裏切り者)』と攻撃し、彼らが日本国内で孤立するように謀ってきた

エコノミスト 9月26日

安全保障関連法案成立
議会の中では怒気に満ちた論争が絶え間なく続き、国会議事堂の外ではこちらも怒りに満ちた抗議の声が盛り上がる中、9月19日日本の上院にあたる参議院は一連の安全保障関連法案を可決成立させました。
この法案は日本国憲法の中身について解釈の変更を行い、戦後続いてきた日本の平和主義路線を大きく転換させることが目的です。

投票の結果は148対90、安倍晋三の保守タカ派連立政権は法案成立を押し通しました。

この法案成立はふたつの場面で大きな転換点となりました。
ひとつは第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本が数々の非人道行為を行った中国との関係において、もう一つは安倍政権の支持率を急落させる結果をもたらしたという点において。

中国と国境接する近隣諸国とアメリカを核とした同盟関係にある、ただし韓国を除く各国政府はおおむね歓迎の意を表しました。

この法案の成立により大きく変わるのは、日本が直接攻撃を受けていなくとも、日本の自衛隊がアメリカその他の同盟国を掩護することが出来るようになることです。

安部自衛隊行進
2、3の弱小政党との話し合いにより、自衛隊を海外に派遣する際には国会の承認をえるという1項が加えられましたが、いずれにしても不測の事態が発生した場合には米軍が日本を防衛するための戦闘を行なわなければならないとする長年の日米安全保障条約の中身が、今後は一方通行ではなく双方向に掩護し合うという内容に変わりました。

これは今後自衛隊は国連平和維持活動においても、戦闘行動的な役割を担う可能性が高くなることを意味します。
興味深い最初の任務は南スーダンになりそうです。
当地では自衛隊は中国軍と協力して国連のPKO任務にあたる予定です。

新しい法律のもとでは、万が一にも中国軍兵士が攻撃にさらされた場合は自衛隊は直ちに援護のための戦闘を行なわなければなりません。

にもかかわらず、中国政府は安全保障関連法案を強引に成立させたことについて、安倍政権を厳しく非難しました。

参議院で安全保障関連法案が成立した数時間の後には、中国外務省は日本に対し『歴史から厳しい教訓を学び取る』ように『真剣な姿勢』で迫りました。
そして対立をあおるのではなく、『地域の平和と安定』にこそ貢献すべきだとコメントしました。

安保法案02
この法案が今年7月に衆議院を通過した際、中国の国営通信社である新華社は、安全保障関連法案は日本が軍国主義に復帰したことを象徴する『汚点』になったと表現しました。
論説委員の一人は武士の刀を比喩として用い、安倍首相が70年間続いた日本の平和主義を『バッサリ斬り倒してしまった』と表現しました。

安倍首相とその取り巻きによる脅迫的国家主義に対し、あからさまな怒りをぶつけることには慎重な態度をとってきました。
安倍首相周辺による脅迫的国家主義は、自分たちと敵対する主張をする日本人を『反日(裏切り者)』と攻撃し、彼らが日本国内で孤立するように謀ってきました。

安倍首相に対し、第二次世界大戦(太平洋戦争)中に日本が中国国内で行ったむごたらしい仕打ち、残虐行為について、中国国民は決して忘れることも許すことも無いという事を解らせることは正しいことです。

しかし中国自身は、その軍事的野心が日本を含む近隣諸国の不安をかきたてているという事にはかなり鈍感なようです。

中国の国防支出は実質で2009年までの5年間に2倍に増え、その後の5年間でさらに50%増加し、今年も経済が減速傾向にあるにもかかわらず10%以上増えています。

日中軍事支出比較
日本も国防予算を増額していますが、中国の規模とは比較になりません。(上の表)
今年日本は防衛予算を2%増額し4兆9,800億円(420億ドル)に達し、来年さらに2%増額されることになっています。

中国の軍事支出は昨年公式には1,320億ドル(約15兆6,500億円)と公表されましたが、スウェーデンの首都ストックホルムに本部があるシンクタンクのSIPRIは本当の数字が2,160億ドル(約25兆6,100億円)であると見積もっています。
アジア太平洋地域の他の諸国も引きずられるようにして、軍事支出を増額しています。
中国は近隣諸国と紛争が生じている領土問題については、強硬な姿勢を崩さず一方的な主張を繰り返しており、当事国として対応せざるを得ない状況にあります。

日米安全保障条約はしばしば日本では国内問題として争いの種になりますが、アメリカ軍との協働において自衛隊の対応範囲が広がることは、中国にとって明らかに好ましいことではありません。

特にアメリカ海軍と日本の海上自衛隊が今後は密に協力し合う可能性があり、そうなれば中国にとっては直接的な難題が出現することになります。

しかし中国政府は、新たに成立した安全保障関連法案に対して日本国民の反発が拡大していることに慰めを見出すことになりそうです。

SEALDs 5
法的問題に強い影響力を持つ日本弁護士会の村越進会長は今後、法廷闘争において安全保障関連法案の違法性を明らかにすると語りました。
村越会長は安全保障関連法案を国民の意思に反して強引に成立させた安倍政権のやり方は
「日本の立憲民主主義史上に『汚点』を残すものだ」と新華社通信と同じ表現を使って批判しました。

日本の軍事能力の拡大に対する中国政府の懸念にはかなりの裏がありそうですが、懸念を深めているという点に限っていえば、多くの日本国民もまた同じことのようです。

http://www.economist.com/news/asia/21667981-chinas-angry-reaction-japans-new-security-laws-echoed-home-abes-stain?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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この文章、中国の台頭する軍事的プレゼンスに対し日米が同盟関係を強めることは、国際政治学的に必然性はあるとする一方で、安倍政権のやり方は『脅迫的国家主義( the menacing nationalism of Mr Abe )』であると断じています。
国力が尽きかけていた機会をとらえて南ベトナムから西沙諸島の領有権を奪ったやり方、そしてチベット問題を見れば、領土問題に関して中国が善意の国家でないことは明らかです。
だからと言って私たち日本人はこれ以上、『脅迫的国家主義』の跋扈を許すわけにはいきません。
『脅迫的国家主義』こそは今回の安全保障関連法案に対し、国民がこれだけ怒りを爆発させた大きな要因の一つであり、民主主義とは絶対相容れないものだからです。

この記事の結びの部分については、普段【星の金貨プロジェクト】をご愛読いただいている方々には異論も多いとは思いますが、『脅迫的国家主義』という新たな表現が用いられたという点の重要性を考え、ご紹介します。
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【 10月9日の報道写真から 】

アメリカNBCニュース 10月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

難民20
10月9日、トルコからゴムボートでエーゲ海を横断し、無事ギリシャのレスボス島に上陸し、互いに無事を喜び合うカップル。
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-october-9-n442041

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