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「ぞっとするような眺め」、鳴り響く線量計、振り切れる針

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所要時間 約 19分

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【「真実の危険は知らなかった…」福島第一原発の作業員】

アメリカCBSニュース 11月1日


津波によってメルトダウンが起きた福島第一原発では、汚染された冷却水の危険性を知りながら、東京電力は適切な防護措置も取らず、正しい情報提供も行わず、緊急作業員を現場に送り込んだと、元作業員が告訴理由の中で述べました。

この元作業員は、危機的状況にあった事故直後、原子炉3号機の事故対応にあたった6名の契約雇用による作業員の中の1人で、東京電力の対応により、放射線による健康被害を受けてしまったと語りました。

事故当時の作業員が、当時福島第一原発で何が起きていたかを、公の場で明らかにするのは珍しいことです。
彼は自分の名が『シンイチ』であることだけを明かし、AP通信の取材に応じました。

46歳の『シンイチ』は、事故当時の行動について、以下のように語りました。
暗闇と恐怖が支配する身の毛もよだつような現場で、あふれだした高濃度汚染水の中をヘッドランプひとつでかき分けるようにして進んでいきましたが、防護ブーツを通してさえ、汚染水の暑さが伝わって来ました。
「とんでもない状況でした。人間を送り込んでよい場所では無かったのです。」

3月24日、彼を含めて6人のチームは、電源ケーブル敷設のため3号機の地下部分に送り込まれたのです。
3号機は10日前に原子炉建屋が爆発を起こし、大量の放射性物質を環境中に放出していました。
彼らの任務は、過熱している核燃料プール内に冷却水を送り込むため、ポンプの電源を復旧させることでした。


彼は、東京電力とその第一次下請会社は、汚染された水が施設内のいたるところにあることを、作業員たちには伝えなかったと主張しています。

こうした『シンイチ』氏の告発に対し、東京電力の一杉よしみ氏は、福島第一原発の敷地内の他の場所で汚染水の存在が懸念されてはいたものの、3号機の地下にもそれがあるとは予測できなかったと、主張しています。
『シンイチ』氏の被ばく線量は、この日だけで政府が定める法定限度の半分を超えてしまい、直後から福島第一原発での作業を止めなければなりませんでした。

『シンイチ』氏は彼の家族が嫌がらせを受けたり、彼自身が事実と違う事を語っている、またはトラブルメーカーとしての汚名を着せられる恐れがあることから、取材に関しては顔写真の撮影を行わないことを条件に取材に応じました。

10月30日に彼は福島の労働基準監督局に刑事告発を行いました。
内容は、東京電力の安全対策に違反があったことを認めた上で、改善命令を出すよう求めています。
また、6か月以下の懲役または500,000円以下の罰金を定める労働安全衛生法に基づき、彼を直接雇用した会社を告発しました。

『シンイチ』氏の雇用主である東京電力の下請け会社は、3月中に彼を福島第一原発の現場で働かせることをやめ、待機を命じました。
彼は現在、ホットスポットと呼ばれる、福島県内の汚染がひどい場所で、除染作業員として働いています。

「私はこうした不当な取り扱いについては、告訴する充分な理由があると考えています。告訴に踏み切った理由は以上です。」


3月24日朝、『シンイチ』氏のチームは福島第一原発の危機管理センターに集合し、その日の作業について指示を受けました。
彼らは防水加工された防護服の下に、さらに2重構造の防護服を身に着け、チャコールフィルター付きのフルフェイスの防護マスク、そしてゴム手袋を二重に装着しました。
作業員はそれぞれ携帯型の線量計を身に着け、警報を前日検出された放射線量の40倍にセットしました。
この時、放射線量の増加については、それほど急激なものは予測していなかったのです。
しかし実際の放射線量は400ミリシーベルトでした。
この量は致命的ではありませんが、一時的に白血球数を減少させるのに十分な被ばく線量です。

3月11日に襲った巨大地震と巨大津波が重要な設備である原子炉冷却システムを破壊し、福島第一原発の3基の原子炉でメルトダウンが発生し、大量の放射性物質が放出されました。
過熱している原子炉に対し何トンもの水が送り込まれましたが、それは直後に高濃度汚染水となって漏れ出し、原子炉建屋の地下や他の施設に漏れ出していったのです。


『シンイチ』氏はこの時受けた簡単な指示を覚えています。
すぐに原子炉建屋一階と地下の、制御盤の電線をつなぎなおすように。
放射線量が少しばかり高くなっているだろうが、問題というほどではない。
「汚染水については、何も触れられていませんでした。」

そのため、作業用ブーツを選ぶ際、膝まである長いブーツを履いたのは2人だけで、残る4人は短いものを選んだのです。

行く手を照らし出すものと言えばヘルメットにつりつけられたヘッドランプのみ、そんな状態で彼らは壁に開けられた穴から原子炉建屋の中に入っていきました。
電動ドアなど動くはずもありませんでした。
『シンイチ』氏と2人が1階で待機している間、2社の異なる下請け会社によって派遣された作業員3人が地下へと降りていきました。
何気なく下を見ると、白い湯気を立てている水面が見えました。
そしてめちゃくちゃになった機器の部品、そして壊れた建物の破片が落ちていました。


「ぞっとするような眺めでした。」
『シンイチ』氏が語りました。
「原発で働く人間なら知っていますが、床にたまった水は最悪の状況の象徴なのです。決して触れてはならないものなのです。」

線量計が鳴り響きました。最大値を検出したら5回警報音を鳴らすように設定された線量計は、原子炉建屋に入ってから度々短い警報が鳴っていましたが、この時も警報が鳴ったのです。
数秒間のためらいがありましたが、結局3名の作業員は地下に降りはじめした。
その時線量計の警報がけたたましく鳴り響き、そして静かになりました。
それはその場の放射線量が、計測可能な値を超えてしまったという合図でした。
しかしチームのリーダーは、きっと誤作動に違いない、と話しました。
地下に進んだ三人は、くるぶしまである水をかき分けながら、制御盤までたどり着くと点検を済ませ、再び1階に戻ってきました。
彼らは地下に溜まった水が、ゴム製のブーツを通しても暖かく感じた、と話しました。

他の任務を与えられた別のチームは、『シンイチ』氏のチームを無視し、何もせず現場を飛び出しました。放射能がきわめて危険な値に達していることを、線量計が警告していたのです。


しかし『シンイチ』氏のチームはそこに留まり、水浸しの地下をさらに奥へと進んで行ったのです。
ただちに命に関わることはありませんでしたが、短いブーツしか履いていなかった2名の作業員は、両脚にベータ線(放射線)による火傷を負いました。
最も長くこの場にとどまった3名の作業員は180ミリシーベルトの被ばくをしていました。政府が7月に定めた年間被ばく限度量の、ほぼ4倍の被ばくをしてしまったのです。
『シンイチ』氏は短いブーツしか履いていないことを理由に、地下に降りてぶら下がっているケーブルの結束作業を行うことを拒否し、長いブーツを着用していた2人が代わってこの作業を行いました。
おかげで『シンイチ』氏は、放射線火傷を免れることができたのです。

東京電力のスポークスマン吉田まゆみ氏は、この時のチームリーダーは現場から撤退しなかった理由について、非常に重要な任務を担っていると考えたので、あえてそこに留まったが、床に溜まっていた汚染水についてはもっと注意深く対処すべきだったかも知れないと、後に東京電力の職員に語ったことを明らかにしました。
さらに東京電力は、施設内の予期せぬ状況について、さらに慎重に状況判断をすべきであったと、付け加えました。

結局『シンイチ』氏が13日間福島第一原発で作業した間の累積被ばく線量は20ミリシーベルトで、『ただちに健康に対する悪影響は無い』とされましたが、彼自身は安心しているわけではありません。

他にも原発作業員の問題を取り扱っている『シンイチ』氏の顧問弁護士は、東京電力とその下請け最大手である関電工は、『シンイチ』氏とその同僚5名の作業員を、許容限度をはるかに超える放射能に汚染された現場に、防護が不完全なまま送り込んだと指摘しました。


『シンイチ』氏の顧問弁護士、山添拓氏はこう語りました。
「きわめて危険な現場に作業員を送り込んだこと自体違法である上、著しく高い放射線被ばくの危険にさらしたことも労働安全衛生法に違反しています。」
「たとえ東京電力が対利用の鳳雛作業を行った結果、現場がどうなっていたのか予測できなかったにしても、作業員の安全確保のための意識に欠けていたことは事実です。」

『シンイチ』氏が経験したことは、きわめて過酷な状況が続く福島第一原発の現場で、不十分な防護策しか施されず働いている作業員の中でも、特異なものです。
しかし何段階もの下請け、孫請けによって作業員が雇用されている今の体制では、作業員に事故が発生した場合に、責任の所在が曖昧にされてしまう可能性があると、山添弁護士が指摘しました。

国会独立調査委員会、政府事故調査委員会、そして民間の調査委員会による報告書は、この件について、東京電力の危機管理能力の欠如、緊急時対応の訓練不足、そして監督官庁との不適切な関係について、批判しました。
このうち国会独立調査委員会は、3号機の地下で作業員2名がベータ線やけどを負ってしまった件について、東京電力は原子炉に対する放水・散水を行えばどのような影響があるか、そもそもの始めからこれを厳重に監視すべきであったとの、結論を出しました。


『シンイチ』氏は福島第一原発で働いていた当時、5歳になる息子の2次的被ばくを最小限にするため、帰宅すると言えに入る前に着ていた服をすべて脱ぐようにしていたと話してくれました。
彼は着衣を洗濯機に放り込むや否や、すぐに風呂場に飛び込むようにしていました。

福島第一原発の他の作業員の人々も、皆同じように心配していると、『シンイチ』氏が話しました。
「私は満足に教育を受けていませんし、年齢もすでに40歳になりました。選択の余地は無いのです。」
彼がこう話しました。
「私は今、打ちのめされています。私は一生懸命働きましたが、家族と子供が犠牲になってしまいました…。これが私という人間の、人生の結末なのです。」

http://www.cbsnews.com/8301-501712_162-57539827/ap-interview-japan-nuke-plant-water-worries-rise/?tag=mncol;lst;9

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ここに語られていることに、『重い』などと言うありきたりの表現を使うべきでは無いと思いました。
最後の一言に、この『シンイチ』氏という方が、どんな思いで福島第一原発の現場で危険を押して働いていたかが表現されています。
働くのなら一生懸命取り組まなければならないというひたむきさ、家族と子供のためにという愛情。

ちょうどこの原稿をアップする準備をしている時、NHKのクローズアップ現代で、福島第一原発作業員の方の特集番組を放映しました。
その待遇があまり恵まれたものではないと感じました。
今福島第一原発の現場で身を挺して働いておられる作業員の方の取り組みが無ければ、この日本はどうなるでしょう?

故郷と住む家を追われた100,000人を超える原発難民の方々もまた、信じがたいほどの悲劇に見舞われました。

人間なら当たり前の『生きていくための願い』を、信じられぬほど大規模に、情け容赦なく、破壊しつくしたのが福島第一原発の事故でした。

この【星の金貨】でも数々の海外記事を翻訳・ご紹介する中で、どれ程多くの方々の悲劇を見てきたことか…

「監視・規制が問題というより、原子力発電そのものが問題」( http://kobajun.biz/?p=4337 )というフェアウィンズのサイトに掲載された原稿の中の言葉が、今さらながら思い浮かびます。

いま大飯原発の活断層を巡る報道で、原子力規制員会の『見解』がどうなるか注目を集めています。
でもちょっと待ってください、こうした報道に『慣らされて』しまうと、原子力規制委員会の存在を受け入れ、やがては原子力規制委員会を成立させている日本の原子力発電体制も、『仕方ないもの』として心のどこかで容認することにはならないでしょうか?

いくらでも人間の悲劇を生み続ける「原子力発電そのものが問題」、この意識を忘れないようにしたいと思っています。

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【えっ、誰がキュリオシティと一緒にいるの?!】

アメリカNBCニュース 10月31日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ご覧いただいているのはNASAの火星探査車キュリオシティを、1メートルほど離れた場所から撮影した写真のようです。
えっ、でもちょっと待ってください。
一体だれが撮影したのですか?

答えはキュリオシティ自身です。
キュリオシティと高度な技術を持った画像処理の専門家による作品なのです。
原子力を動力に6つの駆動輪で動き回るこの移動式研究所の写真は、火星のGlenelg(グレネルグ)と名づけられた場所で、10月31日に撮影されたものです。

キュリオシティから伸びた長さ2.1メートルの火星画像採集装置 - Mars Hand Lens Imager(MAHLI)という名のロボットアームの先に取り付けられたカメラが、撮影した画像を組み合わせて合成された写真です。

MAHLIの主要な役割は、火星表面の様子を顕微鏡の精度で撮影すること、たとえば砂の粒子の形状の確認することなどです。
しかしスマートフォンのユーザーが自分の写真を撮影するようにして、キュリオシティが自分の姿を撮影することも可能なのです。

キュリオシティが自分で撮影した『自画像』はどんなものなのか、火星のゲールクレーターに着陸して一カ月が過ぎた9月に、最初の一枚が送られてきました。
この時からサンディエゴに本拠を置くマリン・スペース・サイエンス・システムズとNASAのジェット推進研究所のMAHLIチームのプロジェクトは大きな一歩を踏み出したのです。

同様の作業をアマチュアのレベルで行っているのが『無人宇宙飛行サイト.com』(UnmannedSpaceflight.com.)です。
このサイトは、宇宙における無人、すなわちロボットによるミッションの愛好者が集うサイトで、NASAが提供・公開した原版の写真から自由にイメージを膨らませるコーナーがとりわけ人気を誇ります。
時にはアマチュアの方が先に『完成画像』を作り上げてしまう場合があります。写真を合成し、発表するに至るまでの面倒な手続きを、アマチュアならきちんと守る必要はありません。

冒頭の写真はキュリオシティの司令塔部分に焦点を合わせ、オハイオ州のエンジニア、ジョー・ナップが合成したものです。


この魚眼レンズで撮影したような写真は、イギリスの教育者で天文学者のスチュアート・アトキンソンが、NASAが公開した火星での写真を合成して制作したものです。
写真の断片を組み合わせて作ったため、ロボットアームの痕跡が、黒い影となって画面に残り、気味悪く感じるかもしれません。
「ちょっと完成を急ぎ過ぎたかもしれません。でも黒い影もそんなに気にならないでしょう?NASAの公式写真では無いにもかかわらず、いい出来だと思いますよ。」
アトキンソン氏がこうコメントしました。


そしてこの一枚が、今日初めてNASAが公開した『公式』第一版の写真です。
MAHLIが撮影したサムネイル・サイズの写真を組み合わせてつ作り上げました。
高解像度版、つまり完成版はまだ公開されていません。
マリン・スペース・サイエンス・システムズのマイケル・キャプリンガーが、『無人宇宙飛行サイト.com』の同好の氏たちに対し、少しばかり自重するよう求めています。
「とりわけこのプロジェクトに関しては、キュリオシティの着陸前から、慎重に準備を進めてきました。」
キャブリンガー氏がこう口説きました。
「アマチュアの皆さんのスクープ合戦により、私たちが重ねてきた苦労が色あせてしまわないよう願うばかりです。」

キャプリンガー氏の16年間に及ぶ苦労の積み重ねを思えば、同情を禁じ得ません。
しかし一方ではやはり、これらのアマチュア作品も皆さんにご紹介せずにはいられません。

皆さん、高解像度版のNASAの『公式』画像が公開された暁には、ぜひNASA火星探査サイトを開き、そのプロの技を堪能していただきたいと思います。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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