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「これだけの核廃棄物を、いったいどうすれば処分できるのか…」

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【 原子力発電所の負の遺産に苦悩するドイツ 】

ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 5月17日

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ドイツ連邦議会はE-On社が運営してきた原子力発電所が排出した核廃棄物を、どうやって、どの場所で、地下深く安全に保管するか、その法案を作成するための長い議論を開始しました。
しかし法案の細部において、すでに激しい火花が散る事態となっています。

ドイツの環境大臣ピーター・アルトマイアーは、5月中旬、ドイツ国内にあった原子力発電所が排出した核廃棄物を地層処分する場所を決定するための法案を審議するための24名からなる委員会で最初の演説を行いました。
この委員会は2015年までに、処分場所について最初の素案を作り上げなければなりません。
そして「人類と地球環境にとって最適な」、花崗岩、岩塩、あるいは泥岩などによって構成される安定した地層の、最終処分場候補地が2031年までに決定されることになっています。

アンゲラ・メルケル首相率いる中道右派政権が行った『原子力発電の廃絶宣言』を受け始まった取り組みについて、アルトマイアー環境大臣は、ドイツ国内の原子力発電所が生み出した核廃棄物をどう処分するかという問題は、第二次世界大戦以降、最大で最長の国内の対立を生むことになるだろうと語りました。

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金曜日に始まった審議は、連邦議会において政府与党と対立する野党との間で今後の進め方について合意が得られ、ドイツの16州の代表によって構成される連邦参議院によって承認されました。

これら一連の議会における審議と手続きは、もちろんドイツが2011年に行った原子力発電廃絶宣言に基づくものです。
2011年3月の発生した福島第一原発の事故にドイツはいち早く反応し、2022年までに国内の19基すべての原子力発電所を廃止する決定を行いました。
すでに8基の原子炉が稼働を停止し、その分不足する電力を補うべく、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーの発展が続いています。

▽「進展はある」

「これから数十年という単位で行わなければならない、核廃棄物をどう処分するかという議論において、今日は一定の進展がありました。」
アルトマイアー環境大臣が連邦議会でこう発言しました。
そして現段階における具体的な候補地は無い旨、付け加えました。
かつて候補に挙がっていたドイツ北部、ニーダーザクセン州の岩塩採掘跡地であるゴールベンを含め、現在のところ具体的な候補地というものは無いと語りました。

野党社会民主党(SPD)のニーダーザクセン州知事のシュテファン・ワイルは、連邦議会でこう発言しました。
「我々は、最終的な貯蔵所を見つけるために、新たな選定作業を急いで進めなければならない。」

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野党緑の党の議会院内総務でかつての環境大臣であるユルゲン・トリッテンは、アルトマイアー環境大臣に対し、イギリス、フランスで再処理を行ったガラス固化核廃棄物をゴールベンの臨時貯蔵施設に列車で運び込もうとして、かつてドイツ国内で騒乱寸前にまで騒ぎが拡大した事件に鑑み、二度とこうした行為を行わないよう要求しました。
ゴールベンの臨時貯蔵施設の設置期限は2034年までとなっています。

アルトマイアー環境大臣による委員会は6名の連邦議会の各党議員、そして12名の科学者、環境団体の代表、産業界、労働組合、そして教会関係者から構成されています。

▽ 少なすぎる『市民の代表』

ニーダーザクセン州東部のタンネンベルク地区で反原子力発電運動を率いるヴォルフガング・エームケ氏は、ドイツ・プロテスタント教会通信社(EPD)の取材に対し、今回の草案には、一般市民の意向が十分に反映されてしないと語りました。

別の反原発運動を率いるヨッヘン・ステイ氏はドイチェ・べレ(ドイツ国際放送)のテレビ取材に対し、アルトマイアー環境大臣が9月22日に行われる連邦議会選挙前に、ステイ氏が『急ぐあまり雑な内容の』法案を、市民に諮ることなく議会に提出したとして批判しました。

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同じ週、ドイツの原子力フォーラム – ドイツの原子力発電を行っている企業と原子力産業に従事する個人からなる団体 – は、核廃棄物の貯蔵施設の場所の選定と施設の建設のために必要な資金、20億ユーロのための献金を拒否しました。
原子力フォーラムは
「すでに、16億ユーロがゴールベン周辺の調査のために費やされたにもかかわらず、見るべき結果は何も得られず、これ以上の資金提供を行うべき理由は無い。」
とコメントしました。

7月5日には、ドイツ連邦参議院においてこの法案に関する投票が行われますが、すでにその雲行きは怪しいものになっています。

もう一人の社会民主党議員で、ドイツ北部シュレスヴィッヒ・ホルスタイン州代表のトリスタン・アルビグは、同州にあるブランズベッテル発電所跡地を、核廃棄物の一時貯蔵施設として利用するつもりなのかどうか、メルケル政権に対し6月13日までに答えを出すように要求しました。

もう一つ、臨時貯蔵施設の候補地になっているのはバーデン=ヴュルテンベルク州にある、フイリップスバーグ原子力発電所の施設です。
しかし現在バーデン=ヴュルテンベルク州の政権は、緑の党が運営しており、先行き予断を許さない状況です。

http://www.dw.de/bundestag-debates-nuclear-waste-disposal/a-16821122
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日本でも、福島第一原発の事故よって作りだされた核廃棄物をどうするか、大きな問題になっています。
しかし事故を起こしたことも無く、存在した原子炉の数も18基しか無かったドイツですら、そこから生み出された核廃棄物の処理問題は「国内で第二次世界大戦以降、最大で最長の対立を生む」ことになるだろうと予想されているようです。

では54基もの原子炉を稼働させていた日本はどうなのでしょうか?

今回は私が断片的に感想を述べるよりも、下記URLから河北新報の『神話の果てに・東北から問う原子力』の記事を、ぜひじっくりとお読みいただき、日本の核廃棄物問題の現状をご確認ください。

東北から問う原子力
第8部『核廃棄物の行方』

(2)惰性のサイクル/可否先送り、蓄積膨大( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130603_01.htm )

(3)袋小路/最終処分場化を懸念( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130604_01.htm )

(4)廃炉/行き場なく進む解体( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130605_01.htm )

(5完)50年先の悪夢/無期限貯蔵に現実味( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130606_01.htm )

核廃棄物/多種多様、東北に滞留( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130602_02.htm )

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