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食糧争奪戦争への懸念・もう始まってしまった食糧危機〈後編〉[米国CBS]

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所要時間 約 9分

【飢えによる凄惨な争い、それは避けられない未来】

マイケル・T・クレア / アメリカCBSニュース 8月8日


▽ 飢えとの戦い 2012 – 20??

今回の大不作が一回限りのもので、しかも一国内に留まるものならば、世界は安心して数々の困難がやがては克服され、来たるべき年に回復することを待てばよいことになります。
しかし残念ながら2012年の大干ばつは、隔絶された一つの大国の中だけの出来事ではありません。
状況的に悪化が続く地球温暖化がもたらす、回避不能な結果の一つなのです。
ならば結論は?
干ばつをもたらした夏場の高温状態は数年に渡り悪化を続け、より高温化し、より頻度高く発生し、アメリカ国内にとどまらず、世界のどこでも干ばつが発生し得る不測の時代がやって来ます。

今の今まで多くの科学者が、巨大なハリケーンや台風、あるいは干ばつの原因を地球温暖化に求めることを避けてきました。
しかし今となっては、いくつかの異常気象が地球温暖化の一端であることを、認めざるを得ないとする科学者が着実に増加しています。
たとえば2011年の異常気象についての研究結果の一つにおいて、アメリカ海洋大気局(NOAA)と英国の国立気象観測所の気象の専門家たちは、ともに2011年にテキサスで起きた干ばつのような維持世気象の原因は、明らかに人間が作り出したものであると結論を出しました。
アメリカ気象協会が発行した月報の中で、この研究は、1960年と比較して、テキサス州で熱波が発生する確率は20倍に上昇した、と報告しています。
そして2011年11月に英国で発生したような異常な高温状態に至っては、その発生割合は地球温暖化により62倍になってしまったのです。

2012年の大干ばつを見て、地球温暖化の影響について計算を行ってきた科学者たちは、その到来があまりに早く、またあまりに極端であることに驚きました。
しかし私たちは温暖化がもたらす影響が、思っていたよりずっと深刻であることを認めざるを得なくなりました。
そして将来起きることが、おおよそわかってきました。
でも対処するための猶予は、あるのでしょうか?

地球温暖化がもたらすものを、すべて列挙してみましょう。
主なものは気温の上昇、執拗に続く干ばつ、巨大化するハリケーンや台風、地獄の業火と化す山火事(野火)、そして海面上昇です。
他の条件にもよりますが、これらは社会の基盤となる設備に損害を与えると同時に、結果的に食糧の供給量を減少させることになります。
これはもちろん、気候変動が物理的に現した兆候であって、私たちが日常を快適に過ごしたり、生命を安全に保ちつつ暮らしている、人間社会に現れた社会現象ではありません。

気候変動による純粋に物理的な影響は、疑いなく破滅的なものになるでしょう。
そしてその中に社会現象が含まれることになります。
食糧暴動、大規模な飢餓、国家の崩壊、民族の大移動、そしてあらゆる種類の地域紛争、場合によっては全面戦争へと発展する可能性があり、その先にあるのは一層の荒廃と人間の大量死です。

スザンヌ・コリンズの著作『ハンガー・ゲーム(飢えているが故の闘争)』は大ヒット作となり数百万の読者をくぎ付けにし、映画化もされることになりました。
筋書きはまさに『黙示録』を暗示させる世界です。
荒廃が進んだ未来の北アメリカに誕生した国家『パネム』では、かつて体制に従わなかったとの烙印を押された地区から、テレビ放送される剣闘士の試合に、毎年二人ずつ10代の少年を送り出すことを強制されています。
この試合では最後の勝者たった一人だけが生き残ることが許され、他はすべて殺されてしまいます。
彼女は小説の中で未来をユートピアとは程遠い、何もかもが不足する社会として描きました。
この『ハンガー・ゲーム』に最終的に勝利すれば、勝者を送り出した地区は名誉を回復され、以後優遇されることになります。
コリンズは地球温暖化に特に言及することはしませんでしたが、将来のいつの時代か、気候変動により北アメリカが飢える大陸になってしまったことを明らかにします。
話が展開する中、代表となる剣闘士を選び出す場面で、『パネム』の主だった12の地区の首長がこう語ります。
「打ち続く災害、すなわち繰り返し襲った干ばつ、嵐、山火事、海面上昇が国土の大半を襲い、わずかに残された豊かな土地を巡り、凄惨な戦いが行われた。」


暴力が日常化してしまうような未来は作り物であるとしても、こうした世界を描き出したコリンズには先見の明があります。
彼女が『ハンガー・ゲーム』の中で描いたような未来がそのまま訪れることは無くとも、そのいくつかが現実になるのは疑いの無いことです。
そう、『飢えているが故の闘争』は、私たちの未来社会に蔓延することになります。
この闘争の中には2008年にハイチの政権を崩壊に追い込んだような、暴動が各地で一斉に発生したり、連鎖的に続いていく状況も含まれます。
『アラブの春』が進展していくにつれ、エジプトのカイロ市内の一部は抗議する市民と治安部隊の激しい闘争の場と化しました。スーダンにおける耕作地と水源を巡る民族紛争は、ダルフールでの大規模な虐殺と村落の破壊につながりました。
インドのナクサラトでは土地を持たない零細農民が、毛沢東主義者の指導の下、大地主の農地を力ずくで奪い取り、警官隊と衝突した後、武装闘争を開始しました。

こうした紛争と、これから起きることを併せて考えてみてください。
執拗に続く干ばつは大規模な飢餓を生み、何百万という飢えた農民は土地を捨て、不潔極まりない大都市のスラムへと流入し、その結果都市をぐるりと取り囲むようにしてスラム街が巨大化していきます。
もとからスラムで暮らしていた住人の中に不満が鬱積し、一触即発の危機的状況が生まれます。

それがどんな悲惨な結果を生むか、2008年南アフリカのヨハネスバーグのスラム街で現実になりました。
マラウイとジンバブエから流れ込んできた極めて傷しい、慢性的に飢えた難民が、元からスラムで暮らしていた南アフリカの貧困層に襲われました。暴行を受け、中には焼き殺された人々もいたのです。
警察署の中で、暴徒の襲撃から逃れた一人のジンバブエ人女性が、故国を捨てた理由について震えながらこう語りました。
「職も無ければ、食べるものも無かったのです。」

付け足さなければならないことがあります。
これからの数十年間、さらに数百万人の人々が干ばつや洪水、海面上昇による災害に追い立てられ、今いる場所から逃げ出そうとするでしょう。
そして逃げ込んだ先で、深刻な敵意を煽ることになります。
私たちの未来にある『飢えているが故の闘争』、それを逃れるためにできることなどほとんど無い、それが現実なのです。

そして現時点では、未だに(アメリカで)進行中の大干ばつが何をもたらすのか?そのことが差し迫った問題です。
死にかけている大量の作物、激減する収穫量、そして高騰する食料品価格。
しかしその社会的・政治的影響ががはっきりと見えてくるのは、ここアメリカでも世界的にも今年の暮れから2013年にかけてになるはずです。
その時まで、注意深く事態の推移を観察する必要があります。
この時目にすることは、どんな学問・研究よりも、将来必ず訪れる『飢えているが故の闘争』を極力避けるためのヒントを与えてくれるはずです。
気温が上昇し、干ばつが延々と続き、毎年のように食料品が不足し、何億人もが飢えて自暴自棄になる、そんな未来を避けるための。

▽ 執筆者について
マイケル・クレアはハンプシャー・カレッジの教授で、専門は世界平和と世界の安全保障です。
作家でもあり、最新の著作は『生き残るためのレース』(メトロポリタン出版)です。
彼の著作を基に作られた映画『血と燃料』は www.bloodandoilmovie.com. で入手可能です。
ここに示された見解は、飽くまで彼個人のものです。


http://www.cbsnews.com/8301-215_162-57489345/the-hunger-wars-in-our-future/?tag=contentMain;contentBody

 

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