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脱原発候補、『保守王国』での戦い

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結果がどうであろうと、一般の人々が立ち上がり、行動を始めたことに、大きな意義がある

ヒロコ・タブチ / ニューヨークタイムズ 7月27日


山口県 - フグとミカンの産地として知られ、日本の本州の西の端にあるこの県の知事選挙が、全国紙が取り上げるべき大きな話題になることは、普段なら考えられません。

しかし福島第一原発の事故からもうすぐ1年半になる今、今回の選挙は日本の将来のエネルギー政策に関し、一種の国民投票的な性格を帯びることとなりました。
天然資源に乏しい日本ですが、経済が低迷する中、石油と天然ガスの増え続ける輸入代金がかさみ続けています。

発展を始めた日本の反原発運動の象徴とも言うべき立場で、脱原発を訴えて立候補した飯田哲也氏ですが、これまでずっと保守的な風土を保ち続けた山口県では、今回の知事選挙でも元官僚出身である保守系候補者の勝利は確実と思われていました。

しかし投票結果は、日本の旧来の保守的体制を象徴する山田繁太郎候補(63歳)に対し、飯田氏が猛追を見せる結果となりました。

国土交通省出身の元官僚である山本氏は、3年前に国政の政権を失うまで、戦後の日本を長く統治し続けてきた自由民主党の支持を受けています。

自由民主党こそ、日本における原子力産業の建設者です。

日本国内に54基の原子炉を建設するため、多額の補助金を交付し続け、福島第一原発の事故直前にはこの国の電力需要の30%を賄う能力を有するまでに、日本の原子力産業を育て上げました。
山本氏は前任の二井関成知事(69歳)からの支持も得ています。二井知事も自由民主党の支持を受け、16年間けんせいのかじとりをおこなってきました。
一方の飯田氏(53歳)は、山口県内に新たな原子力発電所を建設する、という計画の廃棄と、日本国内の原子力発電所の廃炉を進めることを公約として掲げ、選挙運動を行いました。
こうした公約は東京やその他の都市で拡大を続ける反原発抗議行動に参加する人々の大きな共感を得ましたが、保守的傾向の強い地方にあっては、その訴えが浸透するまでには至らなかったようです。


国政を預かる民主党の野田政権は、少なくとも当面、原子力発電の継続を支持していますが、東京をはじめとした都市部で、日本ではあまり見られない大規模な抗議行動に直面しています。
これに対し野田首相は、これほどの抗議行動であっても、原子力発電を止めることによって日本経済が打撃を受けることを心配する国民の、声なき声の方が多数派であると強弁し、首都圏にあっても抗議行動を行っている人々は、多数派を代表している訳ではない、としています。

しかし、評論家は山口県知事選挙において、飯田氏が一定以上の支持を集めることになれば、まして勝利することでもあれば、野田首相の考えは的を得たものでは無い、と指摘します。
「野田政権は、反原発抗議行動が、いずれは尻すぼみになるものと考えていましたが、実際にはそうなりませんでした。」
東京高千穂大学の准教授で、市民運動の専門家である五野井郁夫氏がこう語りました。
「飯田氏が善戦すれば、今回の抗議行動は一転して政治的発言力も持つことになるでしょう。他の政治家はこの抗議活動の上に乗ることにより、一定の支持が得られる、ということに気がつくでしょう。多くの政治家が脱原発陣営に加わる、という事になる可能性もあります。」

飯田氏の選挙運動が可能になった背景には、1,000人のボランティアが集まり、飯田氏の主張を伝えるため、電話をかけ、眠ったままの市町村を行脚して、問題の存在を気づかせたことがあります。

飯田氏は、環境研究所の創設者です。
彼は福島第一原発の事故以前はほとんど無名の存在でしたが、彼のメディアに対する造詣の深さが、世界史上2番目の大惨事となった福島第一原発の事故が、環境面に与える影響についての解説者として、彼をして脚光を浴びさせることになりました。

飯田氏は、太陽光パネルを取り付けた小さなワゴン車で山口県内を回っていますが、下関市の集会では、クリーンエネルギーを産業化する子ことにより、地元に雇用を創出するつもりである、と語りました。

「もしここでも、原子力発電所事故が起きたらどうなりますか?」
緑色の腕章をつけた支持者たちが、彼のグリーンエネルギー政策について述べたパンフレットを手渡している脇で、飯田氏がこう尋ねました。
「私たちの未来は、原子力発電とは共生できないのです。」


飯田氏の選挙運動にボランティアとして参加しているハンドバッグ・デザイナーの阿部みちるさんも、この意見に賛成です。
彼女は日本政府の今回の災害への対処について、怒りを感じる、と語りました。
始めに福島第一原発の危険性について過少報告を行い、その次には食品の安全性をないがしろにしている、と。
彼女が懸念しているのは、原子力発電の安全性そのものに留まりません。
原子力発電を取り扱う日本政府の管理能力、そして政治家、政府官僚と原子力産業界の癒着によるもたれあいについて、多くの人々がその現実を見せつけられました。
「それは、自分たちにとってのみ居心地の良いムラなのです。いつもそうです。」
投票日が近づいた日の午前中、37度を超える猛暑の中、阿部さんはパンフレットを配り終えた後で、こう語りました。
「飯田さんのように、そんなムラには属さない人でなければ、改革などできません。」

決して多くは無いボランティア軍団と共に、飯田氏は楽ではない戦いを続けています。

2009年に民主党との戦いに歴史的敗北を喫した時でさえ、山口県民は自由民主党へ投票しました。
それ程に自民党は、この県には強固な地盤を持っています。
今回の知事選には民主党からも前国会議員が候補者として立候補していますが、野田首相がこの知事選に関わらないようにしてるのと軌を一にするように、その支持率は低迷しています。
湧き上がる脱原発のうねりの前に、自民党が支持する山口氏は、現在計画中の山口県内への原子力発電所の建設計画を、当面の間凍結する(中止ではなく)と表明することにより、かつては原発推進の立場にあったという印象を薄めようとしています。

いったいどれだけの日本人が、国家が原子力発電に関する取扱いをより慎重にするべきだとだけ考えるにとどまらず、原子力発電に完全に背を向けているのかは明らかではありません。
日本政府は原子力発電所の安全管理について、完全に近い対策を施した、そう広く国民に信じ込ませようと努力してきました。しかし、現時点で稼働している原子炉はわずかに2基だけです。

79歳の野村としすけさんは農協に努めていましたが、原子力発電の安全性に疑問を持つ一方、経済が不安定になることも望んでいません。山口県内に原子力発電所を新設することには反対です。

演説会で保守系候補の山本氏が「いっぺんに何もかも変えてしまうのは危険です。」と主張しましたが、野村さんも飯田氏が県政に未経験であることを懸念しています。
「私は全体的に、より慎重な候補者を支持します。」


一方、たとえ日本の経済が立仕様不安定となったとしても、そのことが現状改革の障害になってはならない、と語る人々もいます。
61歳の宮川えつこさんは、飯田候補の選挙演説に足を止め、自分自身で物事を考えようとしない態度は改めるべきだ、と語りました。
「何の変化も起きなかったこの地に変化をもたらす、という彼の公約に心が動きました。」
主婦である宮川さんは、飯田候補に投票するつもりであることを明かし、友人たちにもそれを進めるつもりだと語りました。
「結果がどうであろうと、一般の人々が立ち上がり、行動を始めたことに、私は大きな意義があると考えています。」


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【人間の祭典、ロンドン・オリンピック】
アメリカNBCニュース 8月5日

日本チーム - 女子サッカー対ブラジル戦


フランスチーム - 女子サッカー対スウェーデン戦


スウェーデン・チーム - ヨット競技


一位、二位独占のイギリス・チーム - 二人乗りカヌー競技


アメリカ・チーム - 女子競艇

 

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