星の金貨 new

星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

ホーム » エッセイ » 火を噴くスピーカー

火を噴くスピーカー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

所要時間 約 8分

音楽好きの方にはおわかりいただけるかと思うのですが、自宅の音楽再生システムを組む上で、何より重要なものの一つがスピーカーです。ジャズやロックを楽しむならJBLのスピーカー、クラシックならタンノイ、というあたりは定番中の『定番』といえるでしょう。
では、ひとつのスピーカーでロックもクラシックも楽しむとしたら?!
これが実は大変な難題だったのです。
試したことがあるのですが、JBLでクラシックを聴くときつくてなんだかキンキンした音に、タンノイでロックを聴くと音ががたがたになってしまうあたり、不思議なほどです。
私の音楽の趣味は広く深く。多いのはクラシック(特に管弦楽作品)、ジャズ、そしてロックです。自分の音楽の興味の移り変わりによるもので、大まかには中学~高校 = ロック、大学~社会人 = クラシック、ジャズという興味の移り変わりがありました。でもだからといって以前聴いていた音楽も時々は聴きたい、だからCD の在庫がひたすら増え続ける、ということになります。ロックならビートルズとイーグルスのすべてのアルバムを持つのは基本の基、ジャズならマイルス・デイヴィスとアール・クルーはすべてを、クラシックではせめてブルーノ・ワルター、レナード・バーンスタイン、ジュゼッペ・シノーポリが指揮したものはすべて持っていたい。などとなると、手持ちのCDがどうしても3,000枚を超えてしまいます。
もっとも私の友人には、ブラームスのヴァイオリン協奏曲1曲だけで約300枚を収集し、同曲のコレクターとしては「おそらくアンタが日本一」とクラシックレコード専門店で太鼓判を押された人。ロック・ポピュラーだけで3万枚のCDを持っていて、私が「ベスト・アルバムしか持っていないエルトン・ジョンを、デビューからしっかり聴いてみようかな。」と言っただけで、デビュー以降そのほとんどのCD10枚以上をぽんっ、とくれたりする人がいます。前者はリスニング・ルームではなくリスニング・ハウスを持っていますし、後者は結婚もせず、一途に趣味の道をひた走っています。
私はそれほどの甲斐性も無いので、ひたすら凡人の道を歩み続けていますが、音には少しばかりこだわりがあります。
中でも納得できるスピーカーを手に入れるまでは、本当に苦労しました。
社会に出て、自前でオーディオを購入できるようになって、最初に手にしたのがCoralX-Ⅶという国産の中型スピーカーでした。クセが無く、市場でもコーラルというメーカーの存在を知らしめた製品でしたが、クラシックを聴き込むうち演奏の細部まで聴き取れるようになると『もっと繊細なスピーカーは無いものか ?』、と仙台市内の「のだや」さんというオーディオ専門店に通いつめるようになりました。最初に手にしたのが英国のロジャースというメーカーのBBCモニターという製品でした。何でも放送用の高い規格の製品ということで、現在のミニコンポのスーピーカー程度の大きさでしたが、2台一組120,000円という値段でした。実際、とても繊細で、クラシックではひとつひとつの楽器の音色がとてもクリアに聞こえました。しかし、ロックなどをかけるといかにも迫力が足りません。
「そういうときは2台スタック(並列接続)すればいいんですよ。」
とアドバイスされ、もう一組120,000円也を購入。なるほど、迫力が増しました。でも、好きなプログレッシヴ・ロックではもう一段の迫力が欲しいところ。そこでさらにもう一組を購入、片側それぞれ同じスピーカーが3台、計6台を接続しました。
これは迫力がありました。クラシック音楽の弱音はあくまで繊細、ポピュラーのヴォーカルは自然でのびのびした音、そしてロックは引き締まった迫力あるサウンド !
ところが、ある日調子に乗ってベートーヴェンの交響曲第5番を大音量で聴こうとして、100ワットのアンプのボリュームを上げた途端、「ぼんっ!!」といって左側のスピーカー3本が火を噴いたのです。そしてウーファー(一番口径が大きいスピーカー)が真っ黒に焦げていました。
これには慌てました。
焦げたスピーカーを持ってのだやさんに行きましたが、「正常な使用の範囲」とは言えないため、保証もきかないと言われてしまいました。
今度は小型に懲りてJBLの中型を購入。しかし、クラシックには本当に向きません、そこで今度はクラシック専用にバング&オルフセンという北欧製のスピーカーを買い増してJBLの上に縦に積み、AセットがJBL、BセットがB&Oという構成にして、ジャンルごと切り替えて使っていました。
ところが今度はポピュラーのヴォーカル、つまりは人間の声がいまひとつ。
ある日のだやさんから電話をもらい、
「いいスピーカーが入りましたよ。聴きにいらっしゃいませんか ?」
というお誘い。
早速出かけていき、店舗二階の密閉された視聴室へ。そこには一本の高さが120cm、専用の台にのせると高さが150cmを超えるというスピーカーが2本。エレクトロヴォイスという、はじめて耳にするメーカーのスピーカーでした。
最初にベートーヴェンのピアノソナタ、そして次が交響曲第5番「運命」...特にピアノはグランドピアノが等身大で聞こえる迫力。続いてかかるどのジャンルの音楽も、きりっとした音像を結びながら、スケールの大きな自然な音が広がります。
「こ、これ、くださいっ!」
と危うく叫ぶところでした。
ここでかろうじて、考えました。自分の部屋は6帖一間の和室、そこに高さ120cm・幅65cmのスピーカーを2本置いたらどうなるか。それより団地サイズの家の玄関をこのスピーカーが通るのか?
そして1本120万円、2本で240万円というその価格。
ここまでのだやさんでは、もう200万円近くの買い物をしており、それが全部月賦。
ここでさらに240万円の月賦を抱え込めば、いくら経済観念の乏しい自分でも、それが自殺行為であることぐらいはわかります。
「ムリだわ...」
何となく、肩を落としてリスングルームを出たとき、お店の人に声をかけられました。
「小林さん、これも一緒に発売されたんです。」
指差すそこには、今見たスピーカーよりふた回りほど小ぶりの(といっても高さが80cmだったのですが)、同じメーカーのスピーカーが...
「こ、これ、いくらですか ?!」
「1本40万円、2本で80万円です...」
「か、買いますっ ! 」
後で考えれば、120cmを見せて80cmを...240万円を見せて80万円を...
そういうストーリーだったのかな、と...
その後、私はゲップ返済に長い間苦しむことになります。月賦の完済に10年かかりました。
でも、音は最高でした。
Electrovoice CD-1
ベートーヴェンでも、マーラーでも、ビートルズでも、ピンクフロイドでも、カーペンターズでも、山下達郎でも、マイルス・デイヴィスでも、ビル・エヴァンスでも、1950年録音のモノラル録音でも、1985年デジタル録音でも、何でもOKでした。
いいスピーカーは人間の声が前に出てきて、楽器は定位置にあって動かず、音像が「見え」、そして大きな音でも小さな音でもそれが絶対に崩れないのです。
今我が家のリビングには2代目ElectrovoiceのSentry500EXが鎮座しています。
CD-1よりは少し小ぶりになっています。
我がオーディオ人生、8代目のスピーカーです。
家族がみんな出かけて一人で留守番をしているときだけ、ちょっとばかり大きな音で音楽を聴いています。

.
twitter

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事に関連する記事一覧

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
最近の投稿
@idonochawanツィート
アーカイブ
カテゴリー
メタ情報