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危機の時代のジャーナリズム《6》

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所要時間 約 10分

どこかの『群れ』に属したいという不安は独裁主義やファシズムに利用される危険性がある

『これまでの秩序と態勢を崩壊させる』転換点に立つわたくしたちには現代、ありのままを伝える報道が必要

直面している現実のすべてを変えることはできないが、現実に直面しなければ何も変えることはできない

 

キャサリン・ヴィナー / ガーディアン 2017年12月8日

こうした従来の価値観の崩壊と貧富の差の極端な拡大、その両方が個人レベルにおける別の一連の危機につながっています。

今年、世界保健機関(WHO)は、過去10年間にうつ病の症例が急増したことを発表し、世界中の疾病原因の上位を組めるようになっていることが明らかとなっています。

孤独は今や西側社会全域に蔓延する病として認識されるようになりました。

私たちの生活はますますつかみどころの無いものになっていますが、一方ではコミュニティの一員としての認識あるいは市民型参加によって得られる喜びを見出すことができます。

 

人々は長い間互いに助けあい、同じ場所に立ち、経験を共有し、地域社会の一員となり、自分たちの生活を支配する力に影響を与えてきました。

しかし日常生活の中でこうした一体感を達成することは難しいものです。

ギグ経済時代の職場はもはや、多くの人々が共に集まる場所を提供してはくれません。

そして宗教の影響力も減少しました。

技術という言葉は、互いに顔を合わせるのではなく、画面を介してコミュニケートする機会が圧倒的に多いということを意味することになりました。

 

しかしこれは危険な時代の到来を意味するものです。
こうした状況は独裁主義とファシズム運動の温床となっています。
そう考えれば、人々が不安や混乱を感じるのは驚くべきことではありません。
どこかの『群れ』に所属したいという欲求は、暗い場所で灯りのついた家を見つけるのと同じように簡単に実現できるようになりました。

群れに加わるための新しいやり方は、憎悪を煽るのと同じように簡単に実行できるのです。

この種の今日の危機的状況は、第2回でご紹介した『ピータールーの虐殺』が『古い秩序と態勢を崩壊させるきっかけとなった」というA.J.P.テイラーの発言を思い起こさせます。
同様に今日の危機的状況こそ再び『これまでの秩序と態勢を崩壊させる』転換点となっているのではないかと思わないわけにはいきません。

『ピータールーの虐殺』の現場での熱狂的興奮を受け、大勢の一般市民が平等な投票権を要求しましたが、マンチェスター・ガーディアンこうした人々の気分を捉え、人々にどう応えるべきかその方法を見つけ出しました。
起きていることを否定したり過少報告するのではなく、現実を把握し的確に伝えること、そして適切な解釈に努めその『情報を得ることが役に立つ』ようにすることです。
答えを出すことに急を要する問題は、ガーディアンは今日どうあるべきかということなのです。

 

こうした危機への対応法のひとつが失望と現実逃避です。
スマートフォンの世界にどっぷり浸かること、あるいは暗黒社会のテレビを見ることです。
別の対応法は世の中のシステム全体がすでに機能しなくなっていると宣言し、すべてを破壊する必要があると主張することです。
一部の人間たちがこのやり方を支持していることが、最近の政治的な混乱を説明する理由のひとつになるかもしれません。

しかし失望というのは拒否感情のひとつです。
人々は再び希望を感じられるようになりたいのです。
そして特に若い人たちほど、かつての世代と同様の希望を感じることを切望しています。

レベッカ・ソルニットはその霊感に満ちた著作「暗闇の中の希望」の中で、希望は現実を単純に否定することを意味するものではないと述べています。
「希望とは、未知のものと不可解なものを取り入れたもので、それは楽観主義者と悲観主義者双方がそれぞれ信じ込んでいるものに代わるべきものだ。」と記しています。
私たちが行動することには意味があり、行動することこそが重要であるという信念です。
「本物の希望」には「明快さと想像力が必要だ」とも記しています。

そして希望とは何にも増して、私たちジャーナリストたちが市民と一緒に行動することにより変化を実現させることができるということを信じることです。
そのためには、私たち市民がもっと大胆でなければなりません。
ジェームス・ボールドウィンは1962年、
「直面している現実のすべてを変えることはできない。」
と書きました。
しかし
「現実に直面しなければ、何も変えることはできない。」
と続けています。

今日のジャーナリストは既存の力が限界に達してしまっていることを受け入れ、新しい種類の力が良い結果に繋がるのかどうか可能性を検討する必要があります。
ジャーナリストは1821年にガーディアンの設立を宣言したときのように、突き放すことなく自分たちの利害にとらわれることなく市民の側に立って世界と対峙する必要があるのです。

 

人びとがより良い世界をつくることを望んでいるのであれば、報道機関のプラットフォームは人々の想像力を大きく膨らませるために使われなければなりません。

希望に満ちたアイディア、これまでなかった選択肢、物事のあり方はこうあるべきだという形ではないという発想が必要です。

ただ単に現状を批判するだけでは何も解決しません。

私たちはそれに変わることが出来る新しいアイディアを探さなければなりません。

希望を築く必要があるのです。

 

その実現のため、ガーディアンは可能な限り幅の広いしかも進歩的な視点を取り入れていきます。

私たちは政策やアイディアを支持する事はありますが、それを打ちだした政党や個人を無条件で支持するつもりはありません。

そして私たちは真実に基づく報道に専念します。

激動の時代には、たった一人だけが正しい考えを持っているなどという事はありえません。

今後報道の焦点は、特に英国、米国、オーストラリアなどの国では、市場における競争と個人的利益の追求を最優先し、自然界の法則や公共的利益を二の次にしてきた過去30年間の経済的前提が行き詰まりを見せることになるでしょう。

これからの報道は良識によって社会を編み直すため、これまでとは別の原則と手段を追い求める必要があります。

 

しかし現在は社会に対する認識の中身が変わり、権力や影響力といった力がかつてとは違う場所に存在しています。

そのため良識が支配する社会を実現するためには、微妙な差異を見分けること、広範な知識、新たな発見、それらをまとめる力や歴史が必要になります。

近代から最近までの政治的原則は、現代における原理としては通用しなくなりました。

私たちが進むべき方向には確実な見通しなどは無く、未知の事態が待ち受けています。

専門家の意見に頼りがちな私たちですが、それだけでは不十分です。

なぜもっと多くの人々が現状を変えようとしないのか、問いかけていかなければなりません。

 

公共の利益を守るべきこの種のジャーナリズムは、現在進行中の変化について深く理解する必要があり、そのために私たちは、相手がたとえ私たちの読者でなくとも、絶やすことなくその意見を聞き続けていきます。

そのためには私たちはあらゆる階層を代表する人々を、スタッフとして迎え入れる必要があるのです。

私たちはジャーナリストがそれぞれ異なる物語を取材し、異なる受け止め方をし、異なる分析を行い、関連性について異なる認識を持ち、沈黙する人々に発言を求め、それまで無視されていた地域や話題にスポットを当てる、言い換えればジャーナリズムを良くするようにする必要があります。

私たちは一般の人々の意見を真剣に受け止め、私たちの主題、情報源、読者として大切に接して行きます。

読者とジャーナリズムの関係は手早く処理すべき業務ではありません。

読者とジャーナリズムは目的意識を共有し、私たちが現在生きている時代を理解し解析していくことに互いに関わっていくべきです。

 

《7》に続く
https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis
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