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危機の時代のジャーナリズム《5》

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所要時間 約 9分

変化の時代に必要なのは、市民の目線に立ってものを考えるメディア、そして報道

世界的にも国家的にも地方においても個人的にも危機に直面し、人々は不安を抱き続けている

今日のように価値観が混乱している社会にあっては、一般市民の権利と人権を守ることが急務

 

キャサリン・ヴィナー / ガーディアン 2017年12月8日

ほぼ似たような裕福な背景を持つ人々は、危機的な時代の到来によって悪影響を受ける人々に対する充分な理解を示したり、あるいは危機が生み出されている場所まで出かけていくという事はまずしません。

限られた階層の人々によってコントロールされているメディア組織は、市井の人々が『ニュース』だと考えている問題に改めてニュース性を見出す可能性は低いと見るべきです。

こうした組織内の議論は、必然的に参加者が共通して持っている特権に影響されて形作られることになるのです。

 

2017年6月に火災で71人の犠牲者を出したロンドン市西部のグレンフェル・タワーについては、住民が何年も前から危険性を指摘していました。

この事件の報道の中でチャンネル4のニュース・プレゼンターのジョン・スノーは、住民たちの警告に耳を傾けなかったことは、メディアが

「エリート階級の話にばかり耳を傾け、 そうでない人々に対しては関心が希薄で、関連性を見出そうともしないし、関係を持とうともしない。」"

からだと述べました。

ガーディアン編集長のゲイリー・ユンゲはもっと厳しい表現を用いました。

「彼らは『私たち = 一般市民』ではないのです。 そうした彼らの考え方は報道の場で明らかにされることはありませんが、自分たちが市民としての目線に立っていない事には気がついています。」

もしジャーナリストたちが一般市民の生活から遠ざかることになれば、彼らは本当のストーリーを見逃すことになり、その結果人々からの信用を失うことになります。

ガーディアン自身もこのような課題から免れるわけではありません。

スタッフ全員があらゆる価値観を共有している訳ではありません。

新聞社としての歴史、目的、そして価値観を基にこうした問題に私たちガーディアンは取り組んできたつもりですが、まだまだ道半ばといったところです。

 

一方現在権力の座にある者は、メディアが民主主義制度の中で本来果たすべき公共的役割をねじ曲げ、メディアに対する不信を自分たちに有利に利用しようとしています。

ドナルド・トランプが繰り返す「フェイク(偽の)ニュース」発言、メディアに対する「アメリカ人の敵」呼ばわり、英国閣僚メンバーがほのめかした放送局は英国のEU離脱問題を報道する際には『愛国的立場』を明確にしなければならないなどの発言がそうです。

トルコ、ロシア、ポーランド、エジプト、中国、ハンガリー、マルタなど多くの国々では、自由な発言に対する圧力が強まっています。

ジャーナリストたちが迫害され、攻撃され、時に殺害されることさえあります。

今日のように価値観が混乱している社会にあっては、一般市民が持つ当たり前の権利を守ることが急務です。

世界的にも国家的にも地方においても個人的にも危機に直面し、人々は不安を抱き続けています。

気候変動、難民問題、世界経済の動向すら左右する強力な超富裕層の台頭など、特に地球的規模の危機が最も深刻です。

 

私たちがこれまで気がつかなかった大きな変化に、人類が直面しているという事を理解するところまでは簡単です。

哲学者のティモシー・モートンが『トラウマのようなすべての座標の喪失』と表現した圧倒的なそして急激な技術的、環境的、政治的、社会的変化は、私たち全員がまさに今直面している事なのです。

 

こうした世界的な大変動は多くの国々の政情を不安定なものにしており、これまでの2年間に様様々な衝撃と驚きを生み出しました。

英国のEU離脱に関する国民投票の予想を覆す結果は、英国をきわめて不確実な未来に向かわせることになりました。

泡沫候補の一人に過ぎないと見られていたドナルド・トランプの大統領当選。

欧州全域で発生した既成政党への支持の崩壊。

そしてエマニュエル・マクロンの予期せぬ台頭などがありました。

これら一連の出来事は、そのようなことにはならないと断言していた内部関係者、そして専門家たちを混乱に陥れました。

英国では2017年6月に行われた突然の解散総選挙では、特に若者の間で労働党自身が長年にわたり顧みることの無かった社会主義政策に対する支持が急増し、結果的に労働党党首のジェレミー・コービンが20年にわたる保守党の政権支配を実現させてきたルールブックを引き裂きました。

アメリカでは民主党大統領候補のバーニー・サンダースが、同様の政策を打ちだし選挙戦前半を盛り上げました。

 

貧富の格差の著しい拡大は従来の政治的権力層と富裕層の憤慨の的になっています。

2017年10月にはパラダイス・ペーパーの公開という内部告発により、世界の超富裕層がこれまでの120年間で最大の富の集中を実現させたことが明らかになりました。

パラダイス・ペーパーには、その多くの人間が課税を免れるため手の込んだ巧妙な手段を講じていることが明らかにされました。

 

現在明らかになっていること、それは従来採られてきた様々な手順や方法が持続不可能になっているという事です。

私たちは作家のナオミ・クラインの表現を借りれば、

「新自由主義の魔力は消えうせ、実際の経験の重さと山のように積み上がった証拠によって粉々に砕かれた」

という歴史的転換点に立っています。

クラインは、新自由主義について「人々が共に暮らす空間を傷つける経済プロジェクトの略語」と定義していいます。

このように市場原理は結局すべてに対する答えを持っていないという可能性があります。

不平等を悪化させるということの「根本的な意味合い」を多くの人々は理解して来なかったと語るフィナンシャル・タイムズのコラムニストであるマーティン・ウォルフは、グローバリズムに対する政治的な逆行は、第一次世界大戦とロシア革命と同じ規模の、世界の仕組みの根本的な変化を現実のものにする可能性があると語っています。

 

私たちの近隣やそれぞれの地域社会では、広範囲にわたり資金的な行き詰まりにより図書館、学校、公共医療機関などの運営が継続不可能となり、閉鎖に追い込まれて市民生活が崩壊し、その跡地が安価で不動産デベロッパーなどに売却されています。

こうした状況に対する我々の怒りが、政治を揺るがしている潮流をどれほど大きなものにしているかを想像することは難しいことではありません。

 

あなたのような一般市民が小さな町で苦労を重ねている間に、大都市で暮らす富裕層がまんまと税金逃れをしている光景を目にすると心が痛みます。

高齢者は地域社会の人びとが支え合う暮らしが消失してしまったことを嘆いています。

若い人たちは思うような仕事を見つけることができず、生きがいを持って働くという事が出来なくなってしまっているのです。

 

《6》に続く
https://www.theguardian.com/news/2017/nov/16/a-mission-for-journalism-in-a-time-of-crisis

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