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初めて『良識ある人間の顔を持つ』報告書が作られた

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【国会事故調査委員会・福島第一原発の事故は人間が作り出したもの】

ヒロコ・タブチ / ニューヨークタイムズ 7月5日

日本の国会事故調査委員会は5日木曜日、福島第一原発の事故原因について、以下の結論を下しました。
すなわち「政府機関と産業界との間のなれ合いという、日本の伝統の中でも最悪の部分に根ざしたものであり、事故そのものを回避する事は可能であった。」

国会 東電福島第一原発事故調査委員会は、これまで政府と東電が主張してきた事故経過の筋書きのいくつかに、疑問を呈しました。
今回の報告書の中、最も特筆すべきは、今回の事故を大事故たらしめた冷却システムの停止が、津波だけではなく、それ以前の3月11日の地震によっても損傷していた可能性がある、とした点です。
この指摘によって、福島第一原発の事故の後、すべて停止していた日本の原発が、地震が多発する国土で再稼働された事にも、疑問が突きつけられる事になりました。

「何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、 今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である。」
国会事故調査委員会の黒川委員長は、報告書の序文の中で、このように述べています。
「もしそこに人間として当然の責任感があれば、事故を予見し、被害をもっと小さなものにする事も可能だった。」

広範囲にわたる非難が行われていますが、報告書は政府関係者、あるいは東電幹部の個人を特定して非難する事はしていません。
日本ではすでにいくつかの市民グループが事故当時の東京電力の経営陣について、事故を防ぐための対策を故意に怠ったとして、刑事告発を求めています。
しかし黒川委員長は、報告書を公表した後の記者会見で、告発するかどうかという問題は、この委員会とはまた別の問題である、と語りました。
「その問題については、別の方々にお任せします。」

自己防衛のため、自分たちの組織にばかり目がいきがちな、官僚政治が続いてきた日本では、独立した調査委員会の存在は際立っています。
これは、民間会社との合同の下で発生した大きな失敗について、技術的問題の検証を行う際に、アメリカ政府が取り入れた手法を参考にしたものです。
委員会が設立されて検証を行った例として、1979年のスリーマイル島原子力事故、1986年と2003年の2度発生したスペースシャトル・コロンビアとチャレンジャーの事故、そして2001年9月11日の同時多発テロの際、この方法がとられました。

641ページのこの報告書は福島第一原発の6基の原子炉のうち、3基の原子炉が電源喪失によりオーバーヒートし、メルトダウンを起こした問題について、東京電力がいち早く地震による損傷の可能性を否定した事について、早計であると非難しています。
東京電力側は津波が襲う前、地震だけが発生した時点では、原子力発電所はまだ機能しており、飽くまで専門が言うところの『1000年に一度の』巨大津波によって事故は起きた、と主張してきました。
そしてそれほどの規模の天災の発生は『想定外』のことであり、そのような天災を予測し、対策をとる事は他の原子力発電所においても不可能であろうと、東電の経営陣が示唆していました。

しかし1,167名の人々に聞き取りとインタビューを行い、900時間をかけて作成された報告書は、特に原子炉1号機において、津波が襲う30分前にすでに、地震が配管を損傷させたために冷却剤が失われ、事故につながった可能性がある事を指摘しました。
この事に関する検証を行うためには、現在は放射能汚染がひどいために今後数年官は近づく事もではない、原子炉内部の検証が不可欠であると強調しています。

報告書にはこう記されています。
「原因は津波に限定される、という東京電力の主張を否定する証拠がいくつもあり、事故原因のすべてを津波のせいにする事は出来ない。それでも東京電力が事故原因のすべてを『想定外の』津波のせいにするのは、責任回避を図ろうとしているからに他ならない、というのが委員会の見解である。」
しかし「当委員会の調査では、地震のリスクと同様に津波のリスクも東電及び規制当局関係者によって事前に認識されていたことが検証されており、言い訳の余地はない。」

また木曜日に議会に提出された今回の報告書は、先に公表された報告書で、一方的に事態が悪化し、手の施しようが無くなった事故現場から全員が撤退しようとした東京電力に対し、決断力に富む当時の菅前首相が福島第一原発の放棄を思いとどまらせた、とする見解を否定しました。
東京電力が福島第一原発から全員を撤退させようとしたとする証拠は無い、としています。
そして菅前首相側が事故の翌日、福島第一原発を訪れた事を含め、過度に現場の指揮に介入した事により、初動段階での混乱が助長された、と結論を下しました。

それに代わり、委員会は菅前首相と清水正孝東京電力前社長、双方の証言を検証し、首相官邸と東京電力との間の相互不信が拡大した点について、双方ともに責任がある、としています。
「総理が発電所の現場に 直接乗り込み指示を行う事態になった。その後も続いた 官邸による発電所の現場への直接的な介入は、現場対応の重要な時間を無駄にするというだけでなく、指揮命令系統の混乱を拡大する結果となった。」
さらに報告書は、清水前社長が曖昧な発言を繰り返し、東京電力側の意図を明確に首相官邸側に伝えなかった点も批判しています。

そして報告書は、地震、津波、その他の災害により電源喪失が起こりうる事を認識していたにもかかわらず、基本的な安全対策を怠ったとして、政府、原子力安全・保安院をはじめとする規制当局、そして東京電力を告発しています。
「平成 18年(2006年)には、福島第一原発の敷地高さを 超える津波が来た場合に全電源喪失に至ること、土木学会評価を上回る津波が到来した場合、海水ポンプが機能喪失し、炉心損傷に至る危険があることは、保安院と東電の間で認識が共有されていた。 保安院は、東電が対応 を先延ばししていることを承知していたが、明確な指示を行わなかった。」

報告書はさらに、東京電力、原子力委員会や原子力安全・保安院などの規制当局、そして政府の間にはもたれ合い、癒着が常態化した結果、「国民が原子力事故から守られるべき権利」をすべて踏みにじった、と非難しています。
そして東京電力は「電気事業連合会などを通して規制当局に働きかけ、規制を骨抜きにする事に成功した。」と結論づけました。

国会事故調査委員会委員長の黒川博士は、素直に聞き入れれば、もしかしたらこの国の全く緊張感の無い原子力の取り扱い態度を改善する事が出来たかもしれない、異議や外部からの指摘を許そうとしないこの国の風土について、最も衝撃的な表現を用いました。
「言うのもつらい事だが、福島第一原発の事故はまさに『メイド・イン・ジャパン』そのものであった。」
英語版の報告書の序文で、黒川委員長が語った言葉です。
「事故の根本的な誘因となったものは、日本の文化の中に根強く染み付いているもの、すなわち
権威に対して本能的に媚びへつらう
権力に対し疑問を持つ事へのひるみ
いったん立てた計画に拘泥し、周囲の状況を考慮した対応が出来ない
組織優先の行動哲学
そして、島国根性…」
日本語版でも、似たような表現が用いられています。

委員の一人、中央大学法学部の野村修也委員は、報告書が目指すものについて、こう語りました。
「日本の社会全体に広がっている膿を検証し、この社会が抱える構造的な問題に、光を当てようとしたのです。」

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写真集【日本の抗議する人々】
ザ・ガーディアン(英国)7月2日
▽ 首相官邸前



▽ 関西電力本社前

▽ 大飯原発前



▽再び首相官邸前

 

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