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世界が100年かけて築いた共存秩序を破壊するトランプ《3》

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所要時間 約 11分

トランプがアメリカの役割を変えてしまったことのダメージ、私たちはまだその全てに遭遇したわけではない

アメリカ合衆国という国家は信じて良い相手なのか?その信頼性も壊してしまったトランプ

 

エコノミスト 2018年6月7日

▽ トランプの手に大統領権限 - キチガイに刃物

 

さて再び絶望という視点から見てみましょう。
トランプの政策の中で、たとえ上辺だけでも成功だったというものはありません。
しかし、たとえトランプ自身はハットトリックを主張することはできたとしても、潜在的なマイナス面はプラス面を上回る可能性があります。
例えば北朝鮮の金正恩がアメリカ全土を射程内に収めたと豪語する大陸間弾道弾を放棄することを、アメリカに提案するかどうかは最も気がかりな点です。
しかし短距離ミサイルや核弾頭そのものを放棄しない限り、韓国と日本は依然として脅威にさらされたままです。

 

同盟国と信じていたアメリカが自分自身の安全だけしか眼中にないことが明らかになり、日本も韓国も「裏切られた」と感じれば、東アジア地区における軍拡競争につながる恐れがあります。

 

北朝鮮のある高官はイランの核開発に関する「共同包括行動計画(JCPOA)」からトランプが一方的に離脱した結果を見て、北朝鮮は以後アメリカの提案については一切信じるべきでないということを確信したと外国メディアに打ち明けました。
これはイランの核開発交渉から一方的に離脱したことが作り出した大きな副作用です。

イランの核開発能力を本当の意味で制限できるように、期待以上の分野にまで踏み込んで安全策を講じた巧緻な計画を崩壊寸前に追い込んだ(いまやイランがこの交渉からいつ離脱してもおかしくない状況に置かれています)だけではありませんでした。

 

アメリカという国は信じて良い相手なのかという信頼性が自壊してしまいました。
覇権国家が約束を破ったのです。

 

こうしたことからペンタゴンも外交官の多くも、トランプのやり方に反対しているのです。
一部のイラン人アナリストらは、米国が新たな制裁を課した場合、イランは民主主義国家としての再出発ではなく、現体制の下でウラン濃縮を再開する可能性の方が高いと警告しています。

 

貿易問題に関しては、中国がアメリカの輸入超過の状況の改善に動き出したことが多少はトランプの自尊心を満足させることがあっても、世界貿易体制の真の問題を解決するためには何の効果もありません。
トランプは結局はアメリカの貿易赤字を大幅に減らすことはできないという情けない運命に見舞われることになるでしょう。
さらに自動車の輸入超過は国家安全保障上の問題だと騒ぎ立てることによって世界貿易機関(WTO)に現実的な被害が及べば、事態は益々悪化することになるでしょう。

そして3つの問題すべてにおいてトランプは安っぽい手段を使い、それで解決だとしてしまう懸念があります。

 

北朝鮮は何十年もの間、友好的雰囲気の中で米朝首脳会談が実現することを望んできました。
そして金正恩はトランプとの会談実現のため、これまでほとんどどんな対価も支払っていません。

 

アメリカ大使館のエルサレム移転はイスラエルにとっては非常に大きな価値があります。
イスラエルはその実現のため様々な工作を行ってきたかもしれませんが、今回は別にトランプに実現を求めてはいません。

 

そして貿易収支の不均衡を是正する動きは、中国による知的財産の侵害、不公平な輸出奨励金、海外資本の流入に対する厳しい規制について中国政府が様々な対策を取らなければならないという負担を、むしろトランプが大幅に軽減してやるという状況につながるかもしれません。

 

観光客は海賊の餌食にはならない

 

このようにトランプの政策は目先の上では成功を収めるかもしれません。

しかし党派を超えてこれまでのアメリカの外交政策が支持してきた、長い時間をかけて築き上げられてきた世界秩序をトランプが否定したことは、世界にとって極めて深刻な状況です。

従来の世界秩序に基づく世界政策について研究を続けてきたシンクタンクのRANDは、このルールに基づきアメリカがその国益のために展開すべき2年間をかけたプロジェクトを完成させました。
この中でRANDは従来の世界秩序こそ米国の外交的優位と軍事的優位を確立させたものであり、米国の国益を大きなものにすることに役立ってきたと結論づけました。
「堅固な世界秩序は米国にとって有益なものである。」

だからこそ世界秩序が損なわれることによって、失望も大きくなるのです。

 

「大統領としてトランプはアメリカの政策を根本的に悪い方向に変えてしまいました。」
バーンズ氏がこう語りました。
「トランプは私の生涯で最も支持され無い大統領であり、最も危険な大統領です。そう考えているのは私は一人ではありません。アメリカ人の大部分が同じ考えです。

 

外交問題評議会の委員長で共和党員のリチャード・ハース氏は、すでに人々がアメリカという国家について異なった視点で考えるようになったと指摘しました。

「米国は堅固な土台から自分を引きはがしました。」
その影響は「持続的に自らを壊していく」可能性が高いと語ります。

シドニーの国際政策研究所の責任者であるマイケル・フルリエフ氏は、
「トランプが世界におけるアメリカの役割を変えてしまったことに対するダメージがどれほどのものであるか、私たちはまだその全てに遭遇したわけではありません。」
と語り、次のように続けました。
「自由世界のリーダーは、自由主義社会の価値など信じていないのです。」

 

このような背景の下で再び「Yes, but イズム(法)」という視点を設定しましょう。
イエス、でもそれは別に新しいものではありません。
その状況はこれからも続きますが、世界はすでに変ってしまいました。

 

トランプが歴代アメリカ大統領の政策を大きくひっくり返したのはごく最近の話ですが、国民の支持は見えません。
不人気な状態から脱出するためには、これまで採用してこなかった、しかしすでに道筋が見えている前政権の政策を踏襲することが有効です。

イランとの核合意は正式には「包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれるものですが、これには多くの反対者がいました。
気候温暖化に関するパリ合意は、共和党が過半数を制している上院の批准を必要としないように慎重に作成計画されたものでした。

 

ヒラリー・クリントン氏はトランプを相手にした大統領選挙期間中、アメリカの有権者に対しオバマ大統領の下で交渉が行われていた環太平洋パートナーシップ(TPP)貿易協定を拒絶すると公約しましたが、トランプはそれを実行しました。
その事実をクリントン氏はしぶしぶ認めはしたものの、中身については納得のいくものではありませんでした。

しかしトランプはとにかく実行したことを自慢しています。

 

トランプが抱え込んでいる問題の多くは以前から存在していました。

 

中国の知的財産権の侵害と中国に対する直接投資の制限に対する怒りは数十年来のものです。

 

NATOに加盟する同盟国に対する防衛費の増額要求はオバマ大統領も行っていました。

 

オバマ大統領は支持者がイラクとアフガニスタンに派遣した兵士の撤退を要望したにもかかわらず、駐留を継続させました。

この点においてもトランプと変わりません。

「歴史家はオバマとトランプの共通点の多さに気がついています。」
キャンベラのオーストラリア国立大学において同国の外交政策研究の第一人者であるアラン・ジンゲル氏がこう語りました。

 

トランプが行っている政策が実際にはアメリカの長い伝統の一部である例もみられます。
「アメリカ・ファースト」は、ウッドロー・ウィルソン(大統領任期1913年 - 1921年)以降4代にわたるアメリカ大統領のスローガンでした。
バード・カレッジのウォルター・ラッセル・ミードはトランプの外交政策が踏襲している4人の大統領を特定しました。すなわちジェファーン、ハミルトン、ジャクソン、ウィルソンです。

 

冷戦はアメリカの外交にアレクサンダー・ハミルトンのアプローチ、すなわちアメリカの利益、特にビジネスの利益を重視する国際的関与のあり方と、国際主義者で理想主義者のウィルソンが行った外交の両面性をもたらしました。
一方的な軍縮論者でありアメリカ孤立主義の信奉者であったアンドリュー・ジャクソンの政策を引き継いできた政治家たちはソビエト連邦が崩壊すると、それまでの同盟国への支援がアメリカにとって大きな重荷になっていることに気がつきました。

大統領執務室に陣取る強情で横柄な性格を持ったトランプも同じ考え方をしています。

19世紀の先例が21世紀の外交政策の最良の手本になるはずはありません。
しかしトランプのことを、少しはまともな人間に見せることには貢献しています。

 

《4》に続く
https://www.economist.com/briefing/2018/06/07/donald-trump-is-undermining-the-rules-based-international-order
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決して聡明とは言えない頭脳から出た価値観を押しつける人間がアメリカ大統領と日本の首相を務める現在…

それでもアメリカでは『弾劾』の機運が徐々に形を取り始めているようですが、日本では総理大臣3期目が当然のように取りざたされています。

 

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