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【 路上の抗議が原発の稼働を止めた!】

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所要時間 約 6分

原子力発電所の稼働・建設を撤回した台湾政府
ハンガーストライキ、路上の一般の人々の声が、台湾の原子力政策を転換させた

エコノミスト 2014年5月3日

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4月半ばを過ぎたころ、ひとりの男性がかつて自宅があった敷地に建てられた台北市内の教会を立ち退くことを拒否しました。
来客を拒否し、一切食べ物を口にせず、林義雄氏は34年前に母親と双子の娘が(おそらくは当時の国民党政府に雇われたならず者に)惨殺された場所を頑として動こうとはしませんでした。

当時の国民党政権は、恐怖政治に近い独裁体制をもって台湾を支配していました。
そうした状況下、林氏は民主主義のために戦う闘志として、徐々にその世評を高めていきました。

72歳になった現在、林氏は未だに民主主義のため闘志であり続けています。
彼は徹夜のハンガーストライキを始めるに当たり、現在の国民党(かつての独裁体制から組織改革を行い、現在は選挙によって選ばれた)政権が、原子力発電を台湾の重要かつ不可欠な発電手段であるとする政策を転換するよう求め、必要なら餓死することも厭わないと語りました。

結局は『殉教者』の出現を望まない国民党政府側が妥協する形で、4月30日、林氏はハンガーストライキを終わらせました。

いまや台湾の原子力政策はぼろぼろです。

台湾03
発電手段としての原子力発電の放棄は、野党民主進歩党(民進党 - 林氏はかつての党主席でした)にとって、長い間の党の政策でした。

この政策に対する支持は、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により台湾全土で拡大しました。
そして林氏のハンガーストライキがきっかけとなり、再び火がついたのです。

台湾には、老朽化した3つの原子力発電所があります。
今回のハンガーストライキは、台北からそう遠くない新北市に建設中の第4(龍門)原子力発電所に反対するため行われました。
同発電所は台湾の電力需要の約9%の電力を供給することになっていました。

国民党政権が進める原子力政策に国民の支持を取り付けるため、馬英九総統は台湾では珍しい野党民進党の蘇貞昌主席とのテレビ討論を行いました。
席上馬総統は、経済的に台湾の将来は原子力発電を必要とすると主張しました。
それにもかかわらず4月27日、原子力発電の継続に反対する路上での抗議活動に参加した人はほぼ30,000人に達しました。

抗議者の数の多さに急きょ馬総統は彼の顧問を招集し、対策を協議しました。
顧問のひとりは、馬総統の主張は100%正しいものだったと語りました。
「しかし困ったことに…」
馬総統は言いました。
「誰も私の話など聞いていませんでした。」

台湾04
彼は林義雄氏を餓死させるようなことをすれば、国民党の地位に影響が出る上、路上での抗議活動が過激化する恐れがあり、そのリスクを踏むよりは方針をいったん撤回する方が得策だと主張しました。

そして江宜樺首相が抗議者であふれかえる台北市内の路上に現れ、方針の撤回を表明したのです。

第4(龍門)原子力発電所において第1期工事で建造された2基の原子炉は、安全点検が行われた後、そのまましまい込まれることになります。
第2期工事は完全に中止されることになりました。
そして第4(龍門)原子力発電所を稼働させる場合には、国民投票によってその是非を決定することになったのです。

世界が驚く方針転換が現実のものになったのです。

台湾の路上の抗議行動はその時々の民意を象徴するだけでなく、国政の決定の場にも直接的な影響を与えることになったのです。

台湾の反原発運動は、中国との貿易協定締結に抗議する学生たちによる台湾立法院を占拠に続く大規模な抗議行動でした。この時も馬総統は妥協せざるを得ない立場に追い込まれました。

人びとの抗議行動が政治の決定の場において、決定的役割を果たしたことに始め民進党は驚かざるを得ませんでした。
しかし党の一部のメンバーは、将来の党勢拡大のため市民運動との提携を進めることにより、世代交代を実現しようと考えています。
しかしそのやり方は民進党にとってリスクがあります。

第三世界05
2016年の大統領選挙で、民進党候補として有力視されている蔡英文氏は、路上での抗議活動の目的に共鳴はしていますが、次のように語りました。
「路上での抗議活動に基礎をおいて、国政の運営はできません。国政の運営は飽くまで政治の場で行うべきです。」

問題は台湾の国政運営の中心がどこに行くかという事です。

路上での抗議活動が活発化する背景には、国民全体の間に広がる台湾の政治機構の脆弱さに対する幻滅があります。
そして今回の原発政策の転換により、台湾政治の脆弱性がさらに増すことになりました。
馬総統にはまだ2年の任期が残されていますが、すでに死に体です。
台湾の将来は、今後増々路上で決まる可能性が出てきました。

http://www.economist.com/news/asia/21601553-president-bows-street-protests-against-nuclear-power-when-wind-blows

 

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