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【 福島第一原発事故の悲劇、住民の帰還は安全なのか?】《後編》NYT

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所要時間 約 9分

これまでの除染によって出た放射性廃棄物を詰め込んだゴミ袋の数は、2,900,000袋!
村に戻っても土地が汚染され、米も作れず酪農もできない現状での帰還は、早計に過ぎる
住民自ら行った放射線量調査の結果は、政府設置のモニタリングポストの数値を常に上回っている

 

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2015年8月9日

自分自身で放射線量を測定するため、月に1回無人になった農場を訪れる長谷川さん

自分自身で放射線量を測定するため、月に1回無人になった農場を訪れる長谷川さん

新たな帰還計画を支持する日本政府の官僚や一部の市町村長などは、その危険性が誤った形で伝えられていると主張しています。
彼らは居住者は戻るべきかどうか、自分自身で自由に決める権利を与えられていると語り、帰還を拒否した場合でも、詳細はまだ決まってはいないものの何らかの形で補償は続くとしています。

彼らは福島第一原子力発電所周辺地域の避難中の住民ができるだけ早く、政府が支出する補助金への依存から脱却し、経済的に自立することが最終目標だと語っています。
避難している人々が数々の不満を抱いているにもかかわらず、地図上緑や黄色に塗られた避難区域では現在除染作業のまっ最中です。

かつて事故の前、日本で最も美しい村のひとつと言われていた小さな農村、飯舘村。
現在、狭い谷間のこの場所は表土を6センチほど削り取る作業を行う作業員たちでいっぱいになっています。
削り取られた土が黒いゴミ袋に入れられ、それが何段にも積み重ねられている様子は突如人工の丘が出現したように見えます。

都路村住民03
全ての避難区域の除染作業で、作業員はすでに放射性廃棄物を詰め込んだゴミ袋を2,900,000袋作り上げました。
この廃棄物は避難区域内に日本政府が建設中の中間貯蔵施設に、短くても30年間保管されることになります。

多額の政府資金をつぎ込み、これほどの規模で除染作業を行なったにもかかわらず、飯舘村の住民の中で帰還の意思表示をしたのは6,200人の住民の5分の1でしかありません。
中でも放射線被曝に対し著しい危険がある幼児を持つ家庭は、すでに他の場所で生活を再建しており、帰還の意思表示をしている家族はいません。

一方年配者の多くは、余命を考えるとそれ程放射線被曝を恐れてはいないと語りながらも、村に戻っても土地が汚染され、米も作れず酪農もできない現状での帰還は、早計に過ぎると語っています。

村民の帰還計画に最も強く反対している一人が、62歳の長谷川さんです。
日本政府を信じることができない長谷川さんは、放射線量計を片手に毎月一回経営していた農場を訪れ、自ら放射線量を計測する作業を続けています。
その測定結果はいずれも全て、政府が設置したモニタリングポストの計測値よりも高くなっており、前述の大規模な除染作業にもかかわらず、2年以内に酪農を再開できる放射線量を計測した場所は一箇所もありませんでした。

飯舘村長谷川氏
日本政府の係官は、長谷川さんの農場内の納屋など数カ所にピンク色のリボンを結びつけて行きました。
その場所だけ放射線量が極端に高いホットスポットの目印です。
納屋のひとつに掛けられたホワイトボードには、事故以前ここに飼われていた50頭の牛の名前が書かれています。
名前の約3分の2は事故後に売却されたことを示す赤丸で囲まれています。
しかし残り3分の1は、名前の上に赤線が引かれています。
これらの牛は政府によって殺処分が命令され、別の場所でいっさい食べ物を与えられず餓死させられたことを示しています。
近くには死んだ動物たちを供養するための、手書きの木製の蘇東坡が立てられていました。

「私たちを帰還させるもうひとつの目的は、今回の事故に関する責任を政府当局者が回避することです。」
長谷川氏がこう語りました。
彼は今、避難区域から車で1時間ほどの場所にある窮屈な、プレハブのアパートに年老いた両親と一緒に暮らしています。

汚染02
帰還計画に反対することで、長谷川さんは個人的にも代償を支払うことになりました。
生涯の友人のひとりを失ったのです。
その人は帰還計画の最も熱心な支持者のひとり、飯舘村の菅野徳雄村長です。

菅野村長は放射線による危険が誇大に伝えられていると感じ、できるだけ多くの村民が一日も早く先祖伝来の土地と家に戻るべきであると主張する少数派を代表する人物です。

菅野村長はこの先長く飯舘村では人間が口にする農産物を生産することはできないだろうと認める一方で、花木の栽培などに切り替えることにより、生活を再建できるようにする計画を現在作成中であると語りました。

菅野村長は帰還をほぼ決心した1,000人の村民に、きちんと道筋を示したいのだと語りました。
帰還した人々が放射線による被害がそれほどひどくないという事を実証できれば、他の居住者も考えを変えるだろうと考えています。

都路町帰還02
高齢の人々が亡くなっていくのに加え、帰還を諦めて別の土地での生活再建を決心する人がこれ以上増えないようにするためには、一刻も早い期間の実現が必要なのだと語っています。
「飯舘村の戦いは、放射線の脅威に対するもので、この点に関する見解は一人一人違います。」
自身が元酪農家である68歳の菅野さんがこう語りました。

「戻るべきかどうかは、村民に自分自身で決めさせましょう。どうすれば日本を原発事故から立ち直らせることが出来るか、その方法のモデルのひとつを示すことが出来るはずです。」

《 完 》

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【 8月6日 - 13日の報道写真から 】《1》

アメリカNBCニュース 8月14日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

week01
8月7日にペルーのイーカのセロ・デ・サラハ(砂丘)で友人を待つ女性。(写真上)

8月8日スペインのマラガの近く、フェンテ・デピエドラ自然公園で、識別票をつけられる約600羽のフラミンゴとその雛鳥たち。(写真下・以下同じ)
week02
8月11日ギリシアのコス島のナショナル・スタジアムで難民登録の手続きを待つ間、幼児を抱いた若い母親が安全に通過できるよう道を開けるシリア難民の男性たち。ギリシャ各地にはトルコから粗末なヨットに乗るなどして大量の難民が押し寄せ、各自治体は対応に苦慮しています。
week03
8月8日グアテマラ、スペイン人征服者の衣装を身にまとい、聖母マリアを祝うための祭りでポーズをとる原住民の少年。マヤ文明時代の信仰とキリスト教が渾然一体となった祭りは善と悪との戦いを象徴するものです。
week04
8月6日アメリカ合衆国コロラド州デュランゴのアニマス川にカヤックを浮かべる男性たち。川の水は金鉱山から事故によって流れ出した、精錬の際使われる鉛、ヒ素その他の有毒物質によりオレンジ色に変色し、人間はもちろん多くの水生生物が危険にさらされています。
week05
8月13日北京の外港である天津市の倉庫街で巨大な爆発が起き、数十人が死亡、数百人が負傷しました。中国政府当局はこの爆発の原因が何であったか、未だ明らかにしていました。
week06
http://www.nbcnews.com/news/week-in-pictures/week-pictures-aug-6-13-n408681

 

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