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独り勝ちを狙うトランプの北朝鮮外交、恐ろしいツケを払わされるのは日本と韓国《中編》ECO

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所要時間 約 13分

北朝鮮はこれ以上は無理だというところまで、自分たちに有利な条件を要求した

米国との和解を経て中国への対抗勢力に加わることにより、急速に成長したベトナムに倣った経済発展の道を模索するキム・ジョンウン

 

エコノミスト 2018年6月7日

▽ 世界が注目する瞬間

 

しかし歴史的なツーショットのシャッターチャンス以外、米朝首脳の直接会談が何をもたらすかははっきりしません。
朝鮮半島情勢に詳しい米国の専門家は、キム・ジョンウン委員長に非核化を迫るための手段はいくつかあるとテレビ番組の中で語りました。
制裁措置の緩和、多額の財政援助と投資、朝鮮戦争を終結させる正式な平和条約の締結、「利害」に基づく外交関係確立(互いに大使館を置く一歩手前の外交関係)などです。

 

トランプはキム・ジョンウンが武装解除に同意すれば、キム一族の体制は米国からの攻撃を一切受けないという「非常に強い」保証を提供されることになると話しています。

 

しかし最も大きな問題は、これまでにすべて試みられたことがあることばかりだということです。

 

韓国と北朝鮮は1992年に互いに核兵器を持たないことについて正式に合意を交わし、その直後アメリカは韓国内の米軍基地から戦術核兵器を撤去しました。
しかし1994年、高齢化した「偉大なる指導者」、金日成(キム・イルソン)は国際機関の査察団を追い出し、原子炉から取り出したプルトニウムを使って6発の原始爆弾に転用すると脅しました。

1994年後半「合意された枠組み」の下で北朝鮮はアメリカが原油と商業用原子炉を援助することを条件に、プルトニウムを使った不法な作業を放棄すると約束しました。

1999年には北朝鮮は制裁措置の緩和を条件にミサイル開発の放棄を約束し、続いて2000年には南北首脳会談が行われ、ビル・クリントン大統領の訪問が表明されました(しかし在任中には実現せず、大統領職を退いたクリントン氏が訪問することになりました)。

 

しかし2002年には極秘裏にウランを使った核兵器を行っていることが明らかになると北朝鮮は国際査察官を追放し、その結果事態は「6カ国協議」と呼ばれる多国間交渉の開催によって解決が図られることになりました。

 

そして北朝鮮は2009年から2017年の間に5回の核兵器実験を強行しました。
さらに北朝鮮は国連安全保障理事会の決議に反し、アメリカ本土に到達可能な弾道ミサイル実験も行いました。

 

アメリカの元外交官クリストファー・ヒルは、2005年に米国、中国、日本、北朝鮮、ロシア、韓国が合意した6カ国協議の「朝鮮半島の恒久平和体制」の合意に向け文言について感慨を込めて思い出しました。
この協定では北朝鮮が核兵器を放棄し、国際査察を受け入れ、先に脱退した核不拡散条約(NPT)に再度加入するという約束をしたはずでした。

当時、米国は核兵器はもちろん通常兵器であっても武力による北朝鮮への攻撃・侵攻意図は全くないことを明言し、韓国国内の米軍基地に核兵器は一切装備されていないことを確約しました。
同時にヒル氏は当時中国が強く主張した、米朝双方の利害関係を調整するという手法も実現に向けた検討が行われたと語りました。
彼は北朝鮮に対し懐疑的だったブッシュ政権にこの考えに同意するよう説得し、2007年に北朝鮮側に条件提示を行いました。
「しかし北朝鮮側は土壇場でそれを拒否したのです。」
元駐韓米国大使であるヒルはこうため息をつきました。

 

「北朝鮮はこれ以上は無理だというところまで、自分たちに有利な条件を要求したのです。」

 

▽期待できるものは単なる偶然

 

しかしこれまでとは異なり、北朝鮮は今度こそは対米交渉を成功させたいと熱望していると考えるのに十分な根拠があります。
核兵器は依然として金氏一族の支配体制の屋台骨であり北朝鮮の一般国民の支持も得ていますが、北朝鮮のエリート層はキム・ジョンウンがもう一つ力を入れているまだ小規模な経済発展への取り組みの方に期待しています、ソウル国民大学のアンドレイ・ランコフ氏がこう指摘しました。

金氏はこれまでの数年間武器製造に心血を注いできましたが、いずれ経済成長と両立させると約束していました。

金総書記は経済政策よりも軍事政策を優先する一方で、国内に大規模にはびこる闇市場を半ば黙認し、国有企業内の運営を実質的に民間企業に委ねることにより、北朝鮮経済のバランスをとってきました。

 

金総書記は自身の方針にさえ逆らわなければ、私的な投資も奨励しています。
「眠ったのままの一般住民の資金の活用と動員」を呼びかけている政府の方針すら明らかにされています。

韓国中央銀行がまとめた統計によると、2011年にキム・ジョンウンが政権を引き継いで以降、北朝鮮の経済成長は毎年1桁台の前半に留まり低迷を続けています。

 

こうした数字は信頼できるものではありませんが、父親の金正日体制時代の経済破綻や広範な飢饉に苦しんでいた時代とは一線を画しています。

 

キム・ジョンウン総書記は、米国との和解を経て、そして中国への対抗勢力の一翼を担うことによって急速に成長したベトナムを先例とする国家の経済発展の道を模索していると、北朝鮮当局者が海外から視察に訪れた人々に語ったことがあります。

少なくともキム・ジョンウン総書記は制裁の緩和には真剣です。

首都平壌の住民たちはいつ停電するかわからない電力供給から解放されるため、中国からの太陽光発電パネルの輸入が昨年まで急激に増え続けていましたが、英国人のチャッド・オーキャロル氏が運営する北朝鮮関連のニュースを専門とする独立系ニュースサイトのNK Newsが分析によれば今年3月8年ぶりにゼロに落ちこみました。

 

4月初めには燃料価格が高騰し、人道支援を行っていたNGOの各団体は農村部での肥料不足が深刻になっていることを把握するようになりました。

こうしたすべての問題が北朝鮮の準資本主義的経済発展の気分に水をさすことになりました。

 

「北朝鮮で一定程度以上の資産を持つ人々は金を稼ぐことに執着しており、それが不可能になったり不自由になったりすれば、その不満は現在の指導体制に向けられることになるでしょう。」
ソウル国民大学のアンドレイ・ランコフ氏がこう語りました。

 

しかしキム・ジョンウン体制は画期的な可能性を認識できるかもしれません。
北朝鮮はトランプ政治を理解するため、かなりの努力を続けてきました。
北朝鮮当局者は、最近アラバマ州の上院議員選挙で共和党が議席を失った影響などについて、接触できる外国人からできるだけ詳しい情報収集を行ってきました。

中国の研究者によれば、キム・ジョンウン政権はトランプ氏にはイデオロギーと呼べるほどの信念を持っておらず、歴代アメリカ大統領とは異なり言わば商売人(ディールメイカー)であると判断しました。
しかしイランとの核開発疑惑に関する交渉から突然撤退を表明したトランプのやり方を見ると、苦労して積み上げてきた交渉を瞬時にダメにしてしまうこわし屋(ディールブレイカー)としての側面も持っています。

 

結局、今回北朝鮮としては、十分に検討に値する機会を手にしたと感じているとこの研究者が語りました。
現在のアメリカと中国の間のライバル関係をうまく利用すれば、北朝鮮はそれぞれから思惑通りのチャンスを手に入れることができます。

一方トランプ大統領側は今回は柔軟な対応を行うと決断したように見えます。

 

5月下旬、北朝鮮の「敵対的姿勢」のために首脳会談を取りやめると一度宣言したにもかかわらず、トランプは金総書記の随員の一人をホワイトハウスに温かく迎え入れました。
この直後トランプは、北朝鮮側が軍縮に関する具体的公約を何も明確にしていないにもかかわらず(トランプ政権はキム・ジョンウン委員長からの親書の中身を結局は公開しませんでした)、米朝首脳会談の開催を復活させました。

 

トランプの国家安全保障担当顧問のジョン・ボルトンは、完全非核化のモデルとしてリビア方式を導入するよう提案して北朝鮮を激怒させたましたが、解任もされずトランプの顧問としてその背後にとどまっています。
ジョン・ボルトンが主張したやり方に同意したリビアの指導者ムアマール・カダフィは、結局なぶり殺しの目に遇いました。

最も重要な点はトランプが現在、これまでの『オール or ナッシング』という主張を取り下げてしまっていることです。
トランプは現在の米朝関係の良好なことを考えれば、もはや『最大限の圧力』といった類の政策を口にするべきではないとも語っています。

 

6月12日に近づくにつれトランプは朝鮮半島の非核化はすぐには実現しないとの見方を示すようになり、約65年の不安定な停戦を解消するために朝鮮戦争を正式に終結させる平和条約の締結を視野に入れた象徴的な勝利の可能性を語るようになりました。

 

こうした態度の変化はより重要な問題について、交渉が長引く結果につながる可能性があります。

トランプはシンガポールでの米朝会談について、「まずは互いについて知る」機会になるべきだろうと語るようになりました。

 

《後編》に続く
https://www.economist.com/asia/2018/06/07/talks-between-america-and-north-korea-might-succeed-at-a-terrible-price

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1960年代〜70年代、まだ高度成長期の延長上にあったセピア調ともいうべき日本社会にビートルズに代表される極彩色の欧米の文化がなだれ込む社会で成人したのが私たち世代です。

その私たち世代は社会はどこまでも民主主義を発展させていく場所である、とごく自然に考えてきました。

 

それが今になって第二次世界大戦で精算されたはずの国家主義が台頭する場面に遭遇しようとは、30年前、20年前には想像もしていませんでした。

どころかディールメイカー、要は近視眼的な利益主義者のトランプと抜け目のない独裁者キム・ジョンウンに挟まれ、無定見な安倍首相は必要性についての厳密な検証のないまま何十億何百億もする米国製武器を次から次へと買い込む姿勢をあからさまにしています。

 

間違っていた、そう反省するしかありません。

日本は戦後の民主主義を、敗戦をきっかけにアメリカからバーゲンセール並みの手軽さで手に入れました。

その点、革命を繰り返し多数の犠牲を払いながら民主主義社会を組み上げてきた英国やフランスと異なっています。

 

その代わり軍国主義の非人間的所業に苦しみ、最後は人類史上わたしたち日本人だけが核兵器攻撃まで受ける羽目になりました。

その言葉では表現できないほどの苦痛の果てに日本の民主主義は実現したのだ、という意識を持って誠実に日本の民主主義について考え続けてこられた人々もいらっしゃいます。

 

自分ももっともっと誠実に真摯に民主主義の質的向上について考え、努力を重ねるべきだった、今はそう反省しています。

 

しかしここで日本の民主主義を諦めてしまうわけにはいきません。

ひとりでも多くの方に立ち上がり続け、声を上げ続けていただくしかないと思っています、日本の民主主義をこれ以上劣化させないために。

 

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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