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【 極めて偏った教育を行う幼稚園のスキャンダルと日本の首相夫人 】《後編》

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盲目的愛国心に基づく指導、人種的偏見に基づく人格攻撃が常態化している問題の幼稚園

土地のダンピング価格を隠そうとした財務省、近隣の同規模の土地を豊中市は10億円以上高い価格で購入

 

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 2017年2月24日

 

塚本学園は学校教育の場での愛国心の高揚のため、他では見られないような手法をとってきました。

 

はじめに悪評を得たのは、数年前に子どもたちに戦前に制定された教育勅語を唱和させたことでした。

 

教育勅語は明治天皇が国民に伝えるという形で交付され、日本の軍国主義的な戦前の学校教育の基礎として用いられました。

1890年に交付され、第二次世界大戦の敗戦によって戦後廃止されました。

日本の保守派は、教育勅語を伝統的な価値への賛歌と考えています。

一方自由主義者は権威主義的な時代の遺物と見ています。

その中身は「親孝行を心がけ、家族は互いに仲睦まじく」「広く全ての人に慈愛の手を差し伸べ」「勉学に励み職業を身につけ、知識を養い才能を伸ばし」、国家が危急存亡の事態に陥ったなら「天皇制国家の誠実な一員として」「自分の身を犠牲にして国家を支えるよう」求めています。

 

自分たちの子供を塚本学園から退学させた5人の母親にインタビューしたところ、学園では盲目的愛国心に基づく指導を強制されたり、籠池氏と教頭を務めるその妻から、しばしば人種的偏見に基づく攻撃を受けたと語りました。

母親たちは発言について保守主義者や右翼を批判したりするとしばしば報復を受けることがあるため、匿名を条件にインタビューに応じました。

 

母親の一人は、彼女の家族が韓国が好きで時折韓国に休暇旅行に行っていましたが、息子が幼稚園の教師に韓国旅行の予定があることを話したところ、この教師は韓国が「汚い場所」であると攻撃し、家族で旅行するなら「日本のどこかもっと良い場所に」行かなければならないと言いました。

 

別の母親は塚本幼稚園の教師が彼女の息子について「犬のようなにおいがする」と蔑んだ上で、籠池氏が母親のことを『反日外国人』と呼んで攻撃したと証言しました。

ちなみにこの母親は間違いなく日本人です。

 

ニューヨークタイムズは籠池氏への接触を試みましたが、うまくいきませんでした。

 

電話口で質問に答えた塚本幼稚園を経営する森友学園の女性は、小学校建設に関わる土地取引に関する日本のニュース報道は「不当なものだ」と語りました。

しかしなぜ不当なのか、その詳細については語りませんでした。

その後何回か電話取材が試みられましたが、すべて未回答です。

 

幼稚園校長として勤める一方で籠池氏は森友学園のトップであり、さらには安倍首相を始め日本の保守派の影響力のある政治家が加盟し、右派の圧力団体として突出した存在の日本会議の大阪支部の運営委員も務めています。

森友学園のウェブサイトは安倍首相が寄せた

「優れた道徳的教育基盤に立ち、日本人としての誇りについて熱心な姿勢で子供たちを教育している」と称賛する内容の文章を23日に削除しました。

稲田朋美防衛大臣もかつて森友学園を称賛し、籠池氏に対しその取り組みを称える公式書簡を送ったこともあります。

 

塚本幼稚園に関わる一連の疑惑がリベラル派の人々の眉をひそめさせる問題から、一転して国家規模のスキャンダルにまで発展したのは昨年末のことでしたが、その全容が表面に現れるまで数か月を要しました。

 

政府側の記録と官僚による国会での証言によれば、日本の財務省は、大阪郊外の空港近くの0.8ヘクタールの空き地を森友学園が1億3400万円で取得すること認可しました。

財務省は当初売却額を明らかにしようとしませんでしたが、土地の評価額と比較すると驚くほど低い金額です。

 

財務省は以前この土地の価値を9億5600万円と評価していました。

今回の売却額の7倍以上です。

具体的な比較例を挙げれば、問題の土地よりもわずかに敷地面積の大きい近隣の場所を2010年、地方自治体である豊中市は14億円で購入しました。

 

財務省は森友学園が敷地内の廃棄物の処分費用を負担しなければならないため、この分を差し引いたことによって価格が下がったと説明しています。

廃棄物はコンクリート片や他のがれきなどですが、量の多さに加えヒ素や鉛の含有濃度も高いとしています。

野党の議員は財務省に対し、それ程高額な廃棄物の処理費用について積算根拠を明らかにするよう求めています。

 

このスキャンダルの存在を明らかにした朝日新聞は、籠池氏自身がこの廃棄物の処理費用として「約1億円を要した」と語ったことを挙げ、財務省が廃棄物処理費用としている金額と大きく乖離していることを指摘しました。

新しい小学校は、現在この土地の一部を使って建設が進められています。

森友学園の小学校新設に許可を与えた大阪府の府の私立学校審議会の議長を務めた奈良学園大学の梶田叡一学長は、審議の際にこの土地取引に関する件について報告は無かったと語っています。

大阪府議会はこの決定について見直すことにしていますが、梶田氏は日本の古代宗教に基づく神道を森友学園がその教育指針としていることは、学校開設の際の障害にはならないと語っています。

 

「不適切な問題が明らかになれば、許可が取り消される可能性はあります。」

梶田氏はこう語り、次のように続けました。

「しかし森友学園が神道あるいは右翼的思想に基づく教育をしても、子どもたちの両親がそれを望んでいるのであれば、私たちが反対すべき理由にはなりません。」

 

〈 完 〉

https://www.nytimes.com/Asia Pacific
Bigotry and Fraud Scandal at Kindergarten Linked to Japan’s First Lady

+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

 

先進各国でレイシスト - 人種差別主義者と言えば『最悪の部類の人間』のことであり、そういう人間が教育者であるなどと言うのはあり得ない話です。

その有りえない話が日本では現実であり、その種の人間に対し国家が信じられない程の優遇をした、ということは単なるスキャンダルを超えた話だと言わなければなりません。

 

+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

 

【 メトロポリタン美術館375,000の収蔵作品をデジタル化、無料提供 】《4》

 

NBCニュース2017年2月14日

フィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ : 1853年-1890年)[糸杉のある麦畑]油彩1889年

この作品は1889年の6月にゴッホが麦畑シリーズとして描いた油彩画の一点で、フランスのアルルに近いサン・レミにあるサン・ポール・ド・モーゾール精神病院で制作されたものです。(写真上)

 

クロード・モネ(フランス : 1840年-1926年)[睡蓮の沼の上の橋]油彩1889年

モネは1890年にジヴェルニーの地所を購入しましたが、1893年にはさらに隣の敷地を購入して、川の水を引いて睡蓮の咲く池を作り、「水の庭」と呼ばれる日本風の太鼓橋のある庭を造り始めました。目的は「自分の目を楽ませた上に、画題として」活用することでした。

1899年モネは12点の作品を完成させましたが、この作品もそのひとつで夏に制作されました。(写真下)

http://www.nbcnews.com/slideshow/met-digitizes-its-collection-releasing-350-00-images-free-n719661

 

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