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【 日本を代表する報道機関、NHKの『公正と中立』が危ない! 】[ニューヨークタイムズ]

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NHKは「日本の民主主義の基礎を作り上げる、大切な基盤の一部」
NHKは日本国民の歴史と生活に深く関わってきた、『国民のための』メディアであるはず

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2月2日

NHK01
まずはじめに報道内容が「自由主義に『偏向』し過ぎている」として、前任の松本NHK会長が政権与党の攻撃を受け、突然の辞任に追い込まれました。
これに対し今度は、後任に選ばれた会長が今後NHKは政府の方針に異議を唱えるつもりは無いと暗に表明し、国民の怒りを買うことになりました。

さらにそれから数日後の2月2日木曜日、長年勤めてきたNHKのニュース解説者が重要な選挙の前に原子力発電を批判するのを止めるように命令され、辞任することになったと、怒りを込めて記者会見しました。
この事実に批判が高まっています。

NHKにとっては受難の時代がやって来たのかもしれません。
これまでNHKはテレビ放送、ラジオ放送において日本で最も権威ある報道機関と考えられてきました。
その存在を英国BBC放送と比較する向きもありますが、現在はスキャンダルの渦中にあります。

安倍晋三首相とその支持者が日本国内のあらゆる分野において右翼的政策を強要しようとしている中、NHKの在り方についての現在の論争の背景にも、批判的な言論や報道を力で抑えこもうとする安倍政権の姿勢があるとの批判が評論家などの間にはあり、国内のリベラル的立場の人々は懸念を深めています。
安倍首相はすでに『愛国心を育てる』教科書の採用を教育界に迫る一方、反対意見の方が多かった特定秘密保護法を成立させ、もともと秘密主義傾向の強さについて批判が多かった日本政府が、より一層その傾向を強めることを可能にしています。

こうした一連の動きは、中国・韓国との間にもともとあった領土問題に加え、戦後長い間深刻な紛争の火種となって来た第二世界大戦中の歴史認識の問題により、日本と両国との関係が泥沼にはまり込んでいく過程において発生しました。

反日本
「私が心配しているのは、NHKがこれまでよりももっと体制を支持する性格を強め、日本政府の宣伝機関になってしまう事なのです。」
野党議員である原口一博氏が、議会においていつになく激しい口調で批判を行った金曜日、このように語りました。
NHKは「日本の民主主義の基礎を作り上げる、大切な基盤の一部」であるはずなのです。

新しく就任した籾井勝人(もみい・かつと)会長が海外向け放送において、今後NHKは日本の外交政策について一切批判する事無く報道するという姿勢を明らかにしたことも含め、議会委員会の席上、議員が新会長の見解を求めました。
領土紛争を含めた諸外国との外交紛争においてNHKはどのような報道姿勢を取るのかと尋ねられると、籾井会長は次のように答えました。
「政府が右というものを、我々が左という訳にはいかない。」

籾井会長はNHKが政府の方針に従うのは『極めて自然な事』だと語ったのです。
籾井会長はさらに、特定秘密保護法の成立や安倍首相の靖国神社訪問についても、批判的な報道を止めるべきだと語り、中韓両国の怒りを買ったのです。

しかし籾井会長の一連の発言は、放送受信設備を持つ人すべてが受信料の支払い義務を持ち、『不偏不党、公正中立な報道』を行わなければならないNHKの立場に反するものと言えます。

名目上独立しているとはいうものの、予算に関する決定権を持ち、実質的にNHKの経営を行う12名の委員は、国会によって任命されます。
この委員はNHKの会長を選挙によって選定しますが、現在の委員の内4人は安倍政権によって任命されました。

議会での質問に対する籾井会長の誠意を欠いた対応は、第二次世界大戦中に日本軍が行った数々の戦争犯罪行為は無かったものとして歴史を書き換えてしまう事も含め、安倍政権が推し進めようとする国家主義的政策に対する批判を封じ込めようとしている同政権が、NHKの経営委員会においてもその影響力を決定的なものにしようとしている、その点に対する疑いを濃厚なものにしました。

特定秘密03
この後籾井会長は、自身が会長を務めるNHKも報道をしたその証言について、『誤解』があると謝罪をしました。
「私の真意は言論の自由と公正中立の報道を行うという事です。」

しかし籾井会長が撤回するとした発言はわずかひとつだけでした。

籾井会長は、第二次世界大戦中に日本軍の占領地区の女性たちが売春宿で働くことを強制された従軍慰安婦問題について「戦争地域にはどこの国にもあった」と発言しました。
その見解は各国の数多くの歴史家によって否定されましたが、日本の国家主義者たちはこぞってこの見解を支持しました。

過去においては安倍首相もその一人だったのです。
しかしこの撤回についても、心からそうしたようには全く見えませんでした。
籾井会長は比較が適切では無かったとは謝罪せず、NHK会長として『個人としての見解』について発言をするべきでは無かったとだけ語ったのです。

組織の頂点に立つ籾井会長が就任後わずか1週間で、公の場でこれ程の追及を受けてしまったことは、夜のニュース番組が他の小規模な民間放送局の報道の論調に影響を与える程の力を持つ組織としては、恥ずべき事態です。

NHKは高品質のドキュメンタリーや子供番組から人気の高い時代劇まで、幅広い分野の番組を提供していることで知られます。
NHKは歴史の転換点においても、重要な役割を果たしてきました。

昭和天皇が第二次世界大戦を終わらせる日本の降伏を国民に告げたのも、NHKの前身の放送局を通じてでした。

そしてこの国の高度成長時代、労働者が大挙してNHKラジオに合わせて屋外で体操をしたこともあったように、その時代時代において、国民の生活と文化に密接に関わってきました。

2004年には番組制作者が愛人を東南アジアのリゾートへ連れだすために、NHKの番組制作費を着服していたことが明らかとなり、日本国内では4軒に1軒の割合で、月額1,000円~2,000円の放送受信料の支払い拒否が発生しましたが、今回はその時以来のNHKの企業イメージにとって大きなダメージとなりました。

NHKは2011年の福島第一原子力発電所の際、放射性物質が広範囲に拡散した状況を国民に隠したという疑惑に直面したこともあります。

公共放送に対する安倍政権による政治的介入が明らかにされたことは、安倍政権にとって新たな頭痛の種になりました。
安倍政権は特定秘密保護法を半ば強引に成立させたことにより、その支持率が下がり始めています。

秘密保護法05
日本のジャーナリストの多くが特定秘密保護法を、政府にとって不都合な真実を報道関係者に伝えないように国家公務員を脅迫する手段のひとつだと考えています。
日本のニュースメディアはあまりに国家権力寄りだとして、世界の報道関係者から批判的な目で見られていますが、安倍政権による一連の動きは日本の報道の独立性を一層窮地に追い込んでいます。

「これは、著しい政治的干渉です。」
元NHKの政治記者で、現在は名古屋市近郊の椙山女学園大学(すぎやまじょがくえんだいがく)でジャーナリズムの抗議を行っている川崎 泰資(やすし)教授がこう語りました。

「安倍政権は報道を無力化するために、NHKの経営委員会に自分たちに都合の良い人間たちをどんどん送り込んでいるのです。」

日本政府の最高位のスポークスマンでもある菅義偉官房長官は、NHKの経営委員の氏名には政治的動機はあったが、安倍首相が個人的に信頼している人物を選んでいるという指摘に対しては否定しました。

前任者であるNHKの松本雅行前会長は昨年12月、次の任期につくつもりは無いと突然発表しました。
他局や新聞報道によれば、松本前会長は原子力発電や沖縄の米軍基地の問題について、安倍政権の意に沿わない報道姿勢をにらまれ、与党自民党による執拗な攻撃によりその座を去ることになったと伝えました。

NHKが安倍首相の圧力に屈したのは、これが初めての事ではありません。

2005年に安倍首相と自民党議員が、NHKが制作した番組の中から、日本軍が従軍慰安婦を利用することを許可したかとで昭和天皇は有罪であるとした模擬裁判のシーンを削除するよう圧力をかけ、NHKがこれに従ったとされる疑惑です。
NHKのプロデューサーによるこの証言を伝えたのは、日本最大の日刊紙のひとつ、朝日新聞です。
この場面が削除された背景に政治的圧力があったとされる点については、NHKの幹部も安倍首相も否定しています。

そして昨年には、人気が高かったテレビニュース・アナウンサーである堀潤氏に対し、アメリカに留学中に作成した福島第一原子力発電所の事故を題材にしたドキュメンタリー映画について、上司による6時間を超える審問が行われ、結局堀氏はNHKを退職することになりました。
このドキュメンタリー映画は、東京の小さな劇場で今月上映されることになっています。

そして1月の末には、約20年間コメンテーターを務めてきたNHKのラジオ番組で、原子力発電の問題点について解説を行なおうとした中北徹東洋大教授が、原発問題には一切触れないように強く求められ、担当した番組を降板しました。
東京05
NHK側は中北氏に対する要求について、原子力発電が争点の一つとなっている東京都知事選挙において、公平性を保つために行ったものだとしています。

フリージャーナリストである堀氏がNHK側の見解について、否定しました。
「NHKは、権力機構に対して反対意見を述べるのが難しい場所になりってしまいました。」
堀氏がこう語りました。
「日本の民主主義にとって、憂うべき状況です。」


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こうした問題に対する現在の日本政府の対応は『いじめの論理』に終始している、私はそう感じています。
では『いじめの論理』とは何か?
それは『異分子』を排除する、攻撃する、という事です。
では『異分子』とは何か?
それはもちろん、自分たちの意に従おうとしない人間の事です。

民主主義本来の姿は、異なった考え方を持つ同士が地位や立場に関係なく議論を重ね、妥協点を探しながら物事を前進させていくというもののはずです。
だから民主主義は時間がかかるし、面倒でもあります。

だからといって『いじめの論理』で一国の大切な基盤をこわしてしまったら、この先日本はどうなるでしょうか?
それは政治的主張の違い、それとは別次元の話のはずです。

『建設的野党』の皆さんは、その点をどうお考えでしょうか?

 

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