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【 日本の命運を賭けた、危険極まりない作業が始まる 】

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所要時間 約 10分

福島第一原発の前途に待ち受けるものが、いかに複雑で危険なものであるか、改めて強調
東京電力はこれまで何度も事態を的確に把握する事が出来ず、重大な失態を繰り返している

田淵ひろ子 / ニューヨークタイムズ 11月10日

4号機核燃取出し
それこそは2年半前、日本の福島第一原子力発電所が事故を起こし、制御不能に陥った時、アメリカの原子力当局を恐慌に陥れた理由のひとつでした。

原子炉4号機で水素爆発が起きて原子炉建屋の屋根が吹き飛ばされ、核燃料プール内にあった1,500セット以上の使用済み核燃料アセンブリが雨ざらしになってしまったのです。

これから10日のうちに、福島第一原発を運営する東京電力はクレーンを使い、プール内からこの使用済み核燃料アセンブリを取り出す、きわめて複雑な、そしてきわめて危険な作業に着手しようとしています。
この作業はすでに重大な遅れが生じている福島第一原発の廃炉作業において、重要な一歩となるはずです。

使用済み核燃料をより安全な場所に移動するため、緊張の連続となるはずの作業を行うのは36名の男性です。
6人ずつ6つのグループに分かれ、各2時間ずつ何か月もかけてこの作業を行います。

もう一つ別のチームが、クレーンでの取り出しの際、核燃料アセンブリがひっかかったりしないよう、あらゆるがれき・破片の撤去にあたります。

「現在私たちは最後の準備に取り掛かっています。」
広瀬直己東京電力社長は11月8日の記者会見の席上、このように語りました。
「我々は次年度の終了までに、この作業を終えたいと考えています。」

第一原発大規模工事
今回の作業は、2011年3月に発生した東日本大震災により3基の原子炉がメルトダウンするという巨大事故を引き起こした福島第一原発の前途に待ち受けるものが、いかに複雑で危険なものであるかを、改めて強調することになりました。

今回の作業は事故直後から、福島第一原発において最大の脅威となっていた問題に対処するものです。

事故直後と比較すれば、4号機核燃料プール内の使用済み核燃料の温度は下がっており、核燃プールのある原子炉建屋も補強工事が施されました。
しかし核燃プールは原子炉建屋の上層階にあり、再び巨大地震が発生した場合には、プールごと倒壊する恐れがまだ残っていると、専門家が警告しています。

一方で、核燃料の取り出しに着手することにも危険が伴います。

現場にいる作業員の被ばくしないよう、使用済み核燃料が発するガンマ線を遮断するため、作業は水中で行わなければなりません。
さらには、燃料棒の再加熱を防ぐことも水中で作業する理由のひとつです。

2011年6月18日

2011年6月18日


もし作業中に事故が発生すれば、使用済み核燃料が直接大気に触れることになり、最悪の場合、放射性物質が福島第一原発の敷地外に放出される恐れがある、そう警告する専門家もいます。
発電所の技術者はクレーンを使って核燃料アセンブリをプールから取り出し、水を張った巨大なキャスク(収納容器)の中に収納します。
キャスクはトレーラに載せ、地上にある共用プールに運ばれ、再び水の中に沈められます。

「きわめて大きな危険が伴う作業です。」
原子力規制委員会の田中俊一委員長が、11月上旬にこう語りました。
「核燃料アセンブリの取り扱いについては、慎重の上にも慎重を期さなければなりません。」

東京電力はこの作業を順調に開始することにより、地震と津波により福島第一原発で巨大事故を引き起こしてしまった事、およびその後の事故収束・廃炉作業において数々の失策を重ねたことにより失ってしまった信頼を、いくばくかでも回復したいと願っています。

しかし大量の地下水が原子力炉付近に流れ込むことにより、高濃度の汚染水が海に流れ出してしまう結果を読み誤ったように、東京電力はこれまで何度も事態を的確に把握する事が出来ず、重大な失態を繰り返しています。
その東京電力が、完璧に進めなければ2011年3月以上の惨禍を作り出す危険性のある作業を、果たしてやり遂げられるのか、疑問を持つ専門家もいます。

もし核燃料の取り出し作業において、たとえ小さなものであっても事故を起こせば、これ以上福島第一原発の事故収束・廃炉作業を東京電力に任せるのは止めるべきだという、国内外の世論が強まる可能性があります。

第一大破壊
「私にできることは、とにかく間違いが起きないように祈る事だけです。」
かつて原子力発電所で技術者を務め、現在は福島第一原発の事故収束・廃炉作業について監視する独立した機関の代表を務める河合康郎さんがこう語りました。

河合さんによれば、作業がうまくいくかどうかは、作業中に核燃料棒が損傷を受けるか否かにかかっています。
もし燃料棒を入れたキャスクが何らかの理由で落下する事故が起きれば、燃料棒が地上に投げ出されることになります。
問題はその際、作業員が全員避難しなければならない程の放射性物質が放出される事態が発生するかどうかという事です。
「もし核燃料が地上に落下した場合、素早く事態を雌雄衆出来るでしょうか?それとも、連鎖的に別の巨大事故へと発展して行ってしまうでしょうか?その点が非常に気がかりです。」
河合さんがこう語りました。
「あらゆる可能性があり、現時点で必ずこうなると言えることは何もありません。」

東京電力自体は、今回の計画については内部の技術者と国際原子力機関(IAEA)を含む外部の専門家によって、事前に綿密な検証が行われたと語っています。
しかし作業自体は飽くまで東京電力の手により、外部の監視が一切無い状態で進められることになります。

4号基構造物
東京電力は事前に充分な対策を取ったとしています。
福島第一原発では何か月もかけて、損傷している4号機の原子炉建屋を覆うように鋼鉄製のフレームを建造し、そこに核燃料をいれたキャスクを地上30メートルの高さにまで釣り上げることが出来るクレーンを取り付けました。

水中カメラは技術者が2011年3月の爆発の際に出来、そのまま残っているがれきを探し出す手助けをすることになります。
がれきが残っていれば、核燃料アセンブリが取り出せない可能性があります。
邪魔になるあらゆるがれきを実際に取り除く作業をするのは、ロボットアームです。

クレーンは万が一電源が失われた場合にも、持ち上げたものをそのまま持ち続けられるように設計されています。
釣り上げるキャスクは中身がいっぱいになった状態で約90トンの重さになりますが、このクレーンはその2倍の荷重に耐えられるよう設計されており、釣り上げるケーブルは二重構造になっています。

最も大きな懸念は核燃料の移送途中、大地震あるいは津波に襲われることです。
東北太平洋沖地震の大きな余震は現在も続いています。
10月には福島沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、小規模ですが津波も発生しました。

これに対し東京電力は原子炉建屋を覆う鋼鉄の構造物もクレーンも、2011年3月に襲ったのと同じマグニチュード9.0の地震に耐えられるとしています。

スリーマイル事故
かつてアメリカ省の高官で、1979年に事故を起こしたスリーマイルの事故収束・廃炉作業を担当し、現在は東京電力の社長の特別アドバイザーを務めるレイク.H.バレット氏は、福島第一原発の原子炉4号機の使用済み核燃料プールからの核燃料の取り出し作業に伴うリスクは大きくは無く、莫大な量の放射性物質が放出される事態は考えにくいと語りました。
そしてこの作業を完遂できれば、福島第一原発全体のリスクは軽減されることになると語りました。
「使用済み核燃料は地面の高さの安全な核燃料プールに保管する必要があります。」
「そうなれば全体の危険が軽減されることになります。」

福島の危機が始まったばかりの頃、アメリカ政府は4号機の使用済み核燃料プールの問題がある限り、日本政府が設定した避難区域では危険を免れることが出来ないとして、さらに一層遠い場所まで避難するよう、日本国内にいた自国民に勧告しました。
この対応については、未だに多くの日本政府の当局者が快くは思っていません。

これまでは4号機使用済み核燃料プールの核燃料が露出し、大量の放射性物質が放出される最悪の事態は起きてはいません。
そして東京電力は問題の使用済み核燃料プール内の各部の損傷は、軽微なものに留まっていると考えています。

 

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