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【 放射線が汚染した故郷、放射線が台無しにした暮らし 】

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所要時間 約 8分

何もかも破壊されてしまった、福島県の農家
どこまでの放射線量なら人体に影響が無いのか、誰もが納得できる基準が存在しない

スヴェンドリーニ・カクチ / IPSニュース(イタリア) 7月30日

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渡辺よしひろさんと妻むつ子さんの日常は、2011年3月11日、マグニチュード9.0の地震とその後に襲った巨大津波により、福島第一原子力発電所で破滅的な原子炉のメルトダウンが発生して以来、全く別のものになってしまいました。

「破壊された福島第一原発からは高い濃度の放射性物質が放出され、私たちは暮らしを支えていたキノコ栽培をあきらめざるを得なくなりました。その結果私たちの農業収入は、80%も減ってしまったのです。」
IPSニュースの取材に対し、渡辺さんがこう答えました。

渡辺さんはさらに、家族が安全な食物だけを口にするよう、極端な程に気を使っているとつけ加えました。
放射性物質に汚染された食物を口にすれば、ガン発症のリスクが高まることになり、毎日「神経をすり減らすようにして」生活していると語りました。

日本政府が定めた安全基準により、1キログラムにつき100ベクレルを超える放射性物質を含む食品は販売することができません。
ベクレルは、食品中の放射性物質の量を表す単位です。

200年続いた渡辺さんの農園は、今は全く機能していない福島第一原発から55キロメートル離れた福島県伊達市霊山町にあります。
実質的には福島第一原発から100キロメートル離れた場所でも放射線による危険がある事が確認されていますが、計画的避難区域に指定されているのは、半径40キロ圏内の地域に限られています。
渡辺さんは、将来を見通すことが出来ない生活を強いられていると語りました。

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「福島第一原発の事故は福島の農業に、計り知れないほどの打撃を与えました。
放射性物質が広大な農地を汚染してしまい、日本国内の消費者は福島産の食品を可能な限り口にしなくなってしまったのです。」

福島県には日本で3番目に多い農家が存在し、多種多様な果物や野菜、そして加工食品を生産しています。

この農民たちにとって今最大の障害になっているのが、どこまでの放射線量なら人体に影響が無いのか、誰もが納得できる基準が存在しない、と言う点だと語りました。
国民みんなが納得できる基準の設定を誤ったことは、農業にとって致命的でした。

山地が多い地区で渡辺さんが栽培した数種類のきのこは、すべて許容値の10倍前後の1キログラムあたり700~1000ベクレルの放射性物質を含んでいました。

懸念を深める福島県の住民と科学者からなるグループが、食品に含まれる放射性物質について正確な量を調査する、独自の調査システムを立ち上げました(ニューヨークタイムズの記事をご参照ください → http://kobajun.biz/?p=1903 )。
この取り組みは福島産の食品の正しい状況を明らかにするとともに、今は政府の補助金に頼って暮らさなければならない福島県の農民の生活の立て直しをも目的としています。

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『放射線の被害から美しい故郷を取り戻す』会を率いる菅野学さんは、この取り組みは事故直後、NGO(非政府組織)として始めたものだと、IPSの取材に答えました。
このグループは大きな打撃を被った地元の農業の再建を目的としています。
この組織は現在90,000軒に上る農家の作物について、その放射線量を測定し、正確な数値に基づいて食べても安全であることを消費者に伝えています。
「ミルクが高い放射線量を示したように、牧畜業者は最悪の影響を受けました。しかし放射線量は下がり続けており、2年経てば何となるかもしれません。」
菅野さんがこう語りました。

福島県の農家ではいまキュウリなどの新たな作物の栽培に取り組んでいますが、消費者との直接取引による販売を志向するようになりました。
スーパーなどの店頭に『福島産』として並べるだけでは、消費者は誰も買おうとはしないからです。
農家の中には米の栽培を再開したところもあります。

しかし事故の代償はあまりにも高くつきました。

福島第一原発の周囲の帰宅困難地区や警戒区域で暮らしていた約150,000人の人々が、被ばくを避けるために『原発難民』として他の場所で避難生活を送っています。

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環境省は、放射性物質が降り注いだ地区の表土を削り取るなどする除染作業を行っていますが、この作業は最低でもあと5年以上かかる見通しとなっています。
被曝の影響を受けやすい小さな子供たちがいる家庭では、あらゆる事態に対し疑いの目を向けざるを得ません。

放射線から子供たちを守る会の代表、中山みずほさんはIPSの取材に対しこう答えました。

「福島第一原発の事故は食品の安全に関する概念を、根こそぎ変えてしまいました。特に放射能に汚染された農産物から、子供たちを守りたいと考える母親たちにとっては…」

自身4歳の子の母親である中山さんは、政府が定めた放射線に関する基準は徒に一般の親たちを混乱させるだけのものだと批判しました。
彼女たちのグループは子供たちを危険から守るため、政府が公表するデータを絶えず検証する作業を行っています。

「私たちが食品を購入する際の消費行動パターンは変わりました。政府の安全基準は私たちを守っては暮れない、そう割り切ることにより、優先課題は何と言っても安全、そして自己責任です。」
「日本政府が設定した放射線被ばく限度量が信頼できないものだと初めて知った時、私たちは大きな衝撃を受けました。」

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放射線による影響を受けているのは、農家だけではありません。
7月後半福島の漁業関係者の代表が、福島第一原発から出た放射能汚染水の太平洋への漏出を止めるよう、東京電力に対し抗議を申し入れました。

http://www.ipsnews.net/2013/07/fukushima-fallout-hits-farmers/
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作物を慈しみ、大切に育てるのが農業。
妻の実家が農家のため、見ているとそのことがよくわかります。
なんと言っても米作りが上手な人もいれば、とびっきりみずみずしい野菜を育てる人もいる。

それがある日、
「あんたが作ったものは、もう食えんよ。これから何年も、場合によったら何十年も…」
と言われることの理不尽さ。

そのつらさ。苦しさを万人が共有する覚悟を持たなければ、この国の真の再生は無いのではないでしょうか?

 

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