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【 戦場のヴァイオリニスト 】

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所要時間 約 7分

ISISはイスラム教の何かを代表するものではなく、ただ単に自由を抑圧する無法者に過ぎない

テロリズムに抵抗し、美しい音楽を楽しむ自由すら抑圧しようとするすべてのイデオロギーに反対する

 

ロイター / アメリカNBCニュース 2017年4月20日

 

モスル出身のヴァイオリニスト、アメーン・ムクダッドさんは2年半に及んだイスラム国(ISIS)によるモスル市支配の下で、大切な楽器を破壊されるという経験を強いられましたが、今再びモスル市東部で演奏を始めました。

 

イラクのモスル市内にはイスラム教の聖地に加え、キリスト教の古代の聖地もあります。

ISISとの戦闘で廃墟と化したモスルの街中で、イラクのヴァイオリン奏者アメーン・ムクダッドさん野外の小さなコンサートを開きました。

演奏したのはアメーンさんがISISによる厳しい支配が続く中で、密かに作曲を続けていた自作の曲です。

その間もモスル西部からはアメリカ軍が主導する空爆の轟音、爆発や発砲の音が絶え間く響いてきていました。

 

「この場所は、ひとつのセクトのためのものではありません。すべての人々のための場所なのです。ダーシュ(Daesh : アラビア語の無知で乱暴な人間たちを指す軽蔑語 – 転じてISISの嫌悪・軽蔑的呼称)はイスラム教の何かを代表するものではなく、ただ単に自由を抑圧する人間たちに過ぎません。」

ロイター通信の取材に対し、アメーンさんがこう語りました。

「ダーシュは何もかも間違っています。」

 

ISISの戦闘員たちは彼の家に乱入して、楽器を没収、彼の音楽はイスラム原理主義に対する冒涜だと決めつけました。生命の危険を感じた28歳のアメーンさんは2014年にモスルを脱出し、今回の約1時間のコンサート開催を機に初めて帰還を果たしたのです。

 

アメーンさんがコンサートの場所に選んだのは、宗教を超えた連帯を訴えるため、ヨナスの墓あるいはイスラム教の預言者ユーニスのモスクと呼ばれる場所でした。

「私は自分の演奏を通して世界にメッセージを送りたいのです。テロリズムに対する抵抗、美しい音楽を楽しむ自由を抑圧しようとするすべてのイデオロギーに反対の声を挙げるきっかけを提供したいのです。」

アメーンさんがこう語りました。

「音楽を否定するのはすべて醜い人間たちです。」

 

▽ イスラム国(ISIS)に立ち向かう

 

アメーンさんは、ソーシャルメディアを通してコンサート会場と時間を告知しましたが、この時点でイスラム国(ISIS)がまだチグリス川を挟んでモスルの旧市街の東部を支配下に置いており、自分の命を危険にさらす大胆な行為でした。

 

古代のニネヴェの遺跡の近くにあるコンサート会場を防衛していたイラク政府側の兵士たちは、近くにロケット弾が着弾したことを理由にコンサート中の一般市民の安全を保障できないとして最初、コンサート会場に設定した場所への立ち入りを拒みました。

しかし粘り強い交渉の上、兵士たちはコンサートの開催を受け入れ、演奏が始まると拍手を送る聴衆の中に加わったのです。

 

「夢のような演奏を楽しむことが出来ました。」

イスラム国(ISIS)の市内占領によって大学での勉強を途中であきらめなければならなくなった女性、タハニー・サレハさんがこう感想を述べました。

 

私は戦争がモスルの人々の人生までを奪うことはできなかったのだというメッセージを伝えたかったのです。」
「ご覧のようにモスルの街はめちゃくちゃに破壊されてしまいましたが、それでも私たちは幸せな生活を取り戻したいのです。そのためにも音楽が必要なのです。」

 

イスラム国(ISIS)がこの街を支配していた期間、あらゆるエンターティメントが禁止されていました。
それにもかかわらずムクダッドさんは一人で、あるいは減り続けていた数人の仲間たちと、イスラム国(ISIS)の兵士に探知されないよう窓を閉め切り、用心を重ねながら演奏を続けていました。

「あまりに恐ろしくて、時に私は演奏するのをやめなければなりませんでした。、しかしそんな時でも、アメーンは演奏をやめようとはしませんでした。」
アメーンさんの友人で、一緒に音楽サークルを結成した同じヴァイオリン奏者のハカム・アナスさんがこう語りました。
「私たちは彼があっという間に殺されてしまうと思い、演奏をやめるよう何度も説得しましたが、彼は聞き入れようとはせず、演奏を続けました。」

 

ある晩、イスラム国(ISIS)の兵士たちがアメーンさんの自宅に乱入して楽器を破壊した後、血祭りに上げてやると脅しました。
アメーンさんはバクダットまで逃れ、危うく一命を取り留めました。

モスル市内からイスラム国(ISIS)の勢力を一掃するまでこれから約半年を必要とするという際どい状況を反映し、この日アメーンさんのコンサートにやってきた住民は20名ほどにすぎませんでした。
その大部分が若い人々です。
その一人、アブドラ・サイエルさんがこう語りました。
「これこそは、私たち若者が必要としているものなのです。」

 

http://www.nbcnews.com/news/world/iraqi-violinist-ameen-mukdad-plays-mosul-troops-battle-isis-n748836

 

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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