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【 崩壊の危機が続く、福島第一原発・事故収束・廃炉作業の現場 】〈 後編 〉

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所要時間 約 11分

本当の危機は、これから始まる
熟練の作業員が現場を去り、未熟練作業員が増加し、今後増々トラブルが多発することになる

ワシントンポスト 5月23日

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絶えず水をかけ続けることによりメルトダウンした3基の原子炉の状態がある程度安定しましたが、今度は別の問題が持ち上がりました。
一匹のネズミが死んで、仮設の原子炉冷却システムも含め、発電所内の電源が失われるトラブルが発生、さらには地中に作られた臨時の貯蔵施設から大量の放射能汚染水が漏れだしていることが判明し、地上にある鋼鉄製のタンクに至急汚染水を移し替えなければならなくなりました。

日本政府や東京電力は現在の作業を『廃炉作業』と言っていますが、原子炉を完全に廃棄する廃炉作業はまだ始まっていません。
これまで行われてきたのは、事故がこれ以上悪い状態にならないよう、臨時=間に合わせのシステムを製作し、原子炉を安定させることだったのです。

現在はまだ数千本の燃料棒が、原子炉近くにある使用済み核燃料プール内に放置されており、これを取り出して安全な場所に保管する必要があります。
しかし取り出し作業は非常に難しいものになります。
なぜなら原子炉建屋で相次いだ爆発によって原子炉建屋の構造が破壊されてしまい、通常の設備を使っての取り出しが不可能になっているからです。
この燃料棒を一本一本取り出す作業も、まだ始まってもいないのです。
これらの燃料棒はすでに原子炉内で使用されたものですが、信じられないほど高濃度の放射能を発し続けています。

福島第一原発の夏至路がメルトダウンして以降、事故現場の状況をツイッターでリアルタイムに逐一報告し続け、大量のフォロワーを獲得したひとりの作業員がいます。
彼が放射線量の高い場所で働いていた多くのベテランの作業員が、累積被爆線量が限界を超えてしまったために引退、あるいは解雇されていると語りました。

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「この仕事を続けることに、ある種の罪悪感を感じない訳にはいかなくなりました。」
彼はAP通信社の取材に対し、こう答えました。
「これまでにたくさんの作業員がやめていきました。彼らの家族が、この仕事を一刻も早くやめるよう望んでいたからです。自分の子供のことが心配でやめた人もいましたし、親からもっと安全な仕事に就くよう命じられた人もいました。」

「ハッピーさん」の名で知られ、71,500人のフォロワーがいる彼は20年間原子力産業界ではたらきつづけ、そのうちの半分が福島第一原発での仕事でした。
彼は以前は下請けの中でも大手の会社で働いていましたが、現在は従業員が20人ほどの中規模の下請け会社で管理職の仕事をしています。
「もしこのままの状況が続けば、事故収束・廃炉作業はとても40年では終わりません。私はそうなってしまうことを恐れています。」
「海外で日本が原子力発電所を建設することになれば、今いる技術者は海外に行かなければなりません。」

「そして国内の原子力発電所が再稼働することになれば、ここにいる技術者や作業員は別の原発にいかなければならなくなります。」

彼がこうツイートしました。

日本国内の原子力発電所は、現在一カ所を除きすべて停止しています。

彼自身の累積被爆線量はすでに300ミリシーベルトを超えてしまっています。
医療分野の専門家は、被爆線量が100ミリシーベルトを超えるとガンや他の疾病を発症する確率が高くなると指摘していますが、とのような被害を受けるかは個人によって異なります。

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彼は事故の発生後、最初の一年で60ミリシーベルト被ばくし、以後6ヵ月ごとに定期的に線量を測定してきました。

通常原子力発電所など核施設で働く労働者は、累積被爆線量について5年間で100ミリシーベルト、あるいは1年間で50ミリシーベルト以内と決められています。
しかし福島第一原発の事故があった年、その限度は1年間で100ミリシーベルトに引き上げられました。

福島第一原発の現場では作業員たちは、様々なホースを施設内に引き回し、そのバルブの状態と温度をチェックし、各種の漏れをふさぎ、がれきを片付け、使用済み核燃料を取り除くための設備の建設に、毎日毎日追い回されています。

福島県労働局によれば、福島第一原発の周辺の市町村で除染を行う、原発内の事故収束作業よりも高額な報酬が得られる作業員ですら、現在は充分な数を確保できなくなっています。
今年の第一四半期には、除染作業を開始するにあたり2,142人の作業員を募集しましたが、確保できたのはわずかに321人だけでした。
除染はその場所の放射線量を下げるために、地面の表面を削り取り、落ち葉などをかき集め、壁などをこすり洗いする作業です。
「再建作業が本格化し、ここにはたくさんの仕事があるのです。」
労働局の菅野康生氏がこう語りました。

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昨年12月に福島第一原発の作業員を辞めて、除染作業員になった作業員がこんな話をしました。
低い賃金、ひどい扱い、そして放射線の恐怖に怯えながら働くことには、もう飽き飽きしたと…
彼は福島で育ち、原発作業員として10年の経験がありました。
彼は充分な経験を積んだ作業員の数は減る一方であり、そのために今後は増々ヒューマン・エラーによるトラブルが増えることになるだろうと警告しました。
彼は東京電力が利益確保のためコスト削減にばかり目が行き、作業員の安全確保や公正な待遇などについてはなおざりにされてきたとして非難しました。
東京電力は福島第一原発の事故の後、実質的に破たんし、政府の財政援助を受けることで実質的に国有化されました。

たとえ東電が今後数ヶ月の間に必要な作業員を確保できたとしても、その雇用条件は悪化せざるを得ないと彼が語りました

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「本当の危機は、これから始まるのです。」
フリーライターで写真家の木野龍逸(りゅういち)氏が語りました。
彼は福島第一原発の事故に関する著作を行い、2011年3月以降東京電力について集中的に報道を行ってきました。
木野氏によれば、監督の職務をこなせる経験豊かな労働者が皆、被ばく線量の限界に達してしまい、作業現場で
作業現場からいなくなってしまう最悪のシナリオが現実になる可能性があります。
木野氏は作業員の安全を妥協する事無く確保し、税金がもっと適正に使われるようにするため、東京電力とは別に、事故収束・廃炉作業を専門に行う会社を設立する必要があると考えています。

いわき市の渡辺市議会議員は、比較的大きな下請け会社が廃業する可能性が出てきたと指摘しました。経験が少ないために安い賃金で働く労働者を提供する、さらに下層にある下請け会社がより安い価格で斡旋を行っているためです。
このため、技術力の有る作業員の不足を悪化させる可能性があると語りました。

先にご紹介した『ハッピーさん』も同じ怖れを抱いています。
零細な下請け業者が送りこんできた作業員の中には、まともな教育を受けた様子も無く、満足に読み書きも出来ない人間が居ると語りました。

事故直後と比較すれば、福島第一原発内の様子はだいぶ落ち着いたように見えますが、『ハッピーさん』は原子炉のうちの一基が爆発した際の様子を鮮明に記憶しています。
破片が空から降り注ぎ、その時間が永遠に続くように思えた程に、彼には長いものに思えました。

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「私たちはパンドラの箱を開けてしまったのです。ありとあらゆる種類の悪魔がそこから現れました。しかし、箱の底には、未だわずかな望みが残っているかもしれません。
いつの日はまた再び、平穏な日々が訪れることでしょう。」

「でも私たちが生きている間に、そんな平穏な日々が訪れることは無いと思います。」

〈 完 〉

http://www.washingtonpost.com/business/stricken-japan-nuke-plant-struggles-to-keep-workers-in-setback-for-decommissioning/2013/05/23/052afba0-c382-11e2-9642-a56177f1cdf7_story.html
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本稿に出てくる渡辺博之議員という方は5月30日にご紹介した【 福島第一原発の現場が崩壊する! – 不足する緊急作業員 】IPSニュース(ローマを拠点とする国際通信社で、市民の権利と女性問題を得意とする)( http://kobajun.biz/?p=11520 )の記事にも登場しました。
福島第一原発の労働者の問題について、豊富な、しかも正確な知識と見解を持っている、世界のジャーナリズムがそのように認めているのだと思います。

原発廃止を現実のものにするためには、こうした良識を持つ議員を、原発マネーと利権にズブズブになり、業界の利益を国民の安全より優先させ、挙げ句は原子力規制委員会の敦賀原発などに関する「活断層判断はけしからん」などと、臆面も無く吠える「政権与党議員」と入れ替えていかなければなりません。

ことは原発に限った話ではありません。
株価が多少上がったから安倍政権を支持し、原発もまあ、仕方が無い、などというのは蒙昧な話では無いでしょうか?
私たちは福島第一原発の事故収束・廃炉、そして賠償について、どうやら100兆円前後の負担を強いられることになりそうです。
国民ひとりあたり100万円です。
4人家族なら400万円です。
しかもアメリカで始まっている裁判などの展開次第では、その負担はさらに増えることになるでしよう。

そしてこの春から保険料が上がり、税負担が増し、食料品価格が上がり、生活に対する重圧は大きくなっています。
弱い立場の方々の心労は、なおさらでしょう。

プロパガンダや一部マスコミの煽動に乗って、現実を見失わないようにしなければなりません。
「本当の危機」が始まらないように…

 

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