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【 従軍慰安婦問題に関する国連報告書、拒否された日本政府の記述改訂要求 】

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所要時間 約 9分

歴史認識の変更を求めた日本政府に、従軍慰安婦問題は国際社会が史実の存在を確認済みとの回答

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 10月16日

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日本政府は20年前に作成された第二次世界大戦中、日本軍の売春宿で強制的に使役された韓国その他日本が占領していた地域の女性たちに関する報告書について、その記述の一部を削除するよう求めましたが、報告書の作成担当者はこれを拒否しました。
10月16日、日本政府のスポークスマンが明らかにしました。

日本国内では『従軍慰安婦』という婉曲的表現が使われていますが、国際的な歴史認識においてはこれらの女性たちは日本兵に対し売春行為を強要されたという評価が概ね確立しています。
それでもなお今回日本政府がこうした要求を行う事を決めた背景には、安倍政権の下で活発に愛国主義を鼓吹する保守勢力の意向があるものと見られています。

日本政府の今回の発表は安倍政権の有力な支持基盤である、あからさまに国家主義を唱える勢力には歓迎されるかもしれませんが、韓国からは改めて厳しい批難を引き出すことになりました。

「従軍慰安婦問題の歴史の真実を歪曲し、過去に犯した不正な行いを過少に見せる、あるいは隠し通すために日本政府がどれほど懸命になろうとも、歴史を自分たちに都合よく書き換えることなどできるはずはありません。」
韓国外務省のスポークスマンは17日、こうコメントしました。

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日本政府のスポークスマンを務める菅義偉官房長官は、かつて国連で女性に対する暴力についての調査報告を担当したラディカ・クマラスワミ氏に直接面会し、個別に依頼を行うため日本政府が外務省の高官を派遣したことを明らかにしました。
スリランカの女性弁護士であるクーマラスワミー氏は1996年、日本政府が従軍慰安婦だった女性たちに謝罪し、補償を行うよう勧告する報告書をまとめました。
菅官房長官は日本政府が報告書のどの部分について訂正を求めたのかは明らかにしませんでした。

日本の自由主義的立場を代表する新聞社である朝日新聞が1980年代から1990年代に大きく取り上げた、従軍慰安婦問題に関する記事に誤りがあったとして訂正を発表した今年8月以降、保守派の政治家と右翼活動家による史実の見直し要求は一層先鋭化しています。
朝日新聞の記事は第二次世界大戦中、韓国人女性を従軍慰安婦として強制的に徴発する行為に加わったとする吉田清二氏の証言に基づくものでした。
しかし吉田氏の証言のいくつかの部分については歴史学者から疑問が呈せられ、その信憑性は早くから疑われていました。

この報道には欠陥があると見た保守派の政治家たちは、従軍慰安婦問題全体が作り事であり、第二次世界大戦中に世界各地で当たり前のように見られたように、女性たちは契約の上自ら進んで身を売っていたのだと主張し、朝日新聞に対しては記事そのものの撤回を求めてきました。

国家主義政策等とは無縁の立場で純粋に学問的立場から検証を続ける日本国内の歴史学者、そして日本以外の歴史学者の多くが女性たちが強制的に従軍慰安婦にさせられたという歴史的事実に、吉田氏の証言はほとんど無関係だとし、日本の保守派の主張を否定しています。

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歴史学者たちは、1990年代に沈黙を破って当時の自分たちの状況について証言を行った、元従軍慰安婦の女性たちに焦点を合わせるべきだと主張しています。

これらの歴史学者は女性たちの証言に基づけば、、日本の占領下にあった数万人のアジア各国の女性、さらにはオランダ(植民地であったインドネシアの宗主国)人女性も、自分たちの意思に反し日本軍向けの売春施設で使役されたことになります。

日本の保守勢力は彼女たちの証言は偏っており、信頼性も低く、その主張を立証するための証拠も不足していると攻撃しています。
これに対し女性たちとその支援者は、日本軍が降伏後に連合軍による戦争犯罪の追及の手を逃れるため、大量の記録を償却して証拠隠滅を行ったと指摘しました。

日本の保守勢力を代表する新聞社である読売新聞は10月に掲載されたインタビュー記事の中でクマラスワミ氏は、朝日新聞が従軍慰安婦問題に関する報道の誤りを認めたことは、彼女が国連の場で作成した報告書の撤回の必要性を形成するものではないと答えました。
クマラスワミ氏は彼女の報告書は多数の従軍慰安婦経験者の証言に基づいて作成されたものであり、その中で朝日の誤報問題の原因となった吉田氏の証言を引用はしているものの、報告書が出した結論に大きく関わってはいないと答えたと伝えられています。クマラスワミ氏はこの件に関するさらなる取材には応じませんでした。

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菅官房長官はクマラスワミ氏が日本政府の要求を拒否したことについて、追加の対応を取るかどうかは明らかにしませんでした。。

日本の共同通信社は、14日の日に日本政府の要求を伝えるためにニューヨークの国連本部でクマラスワミ氏に面会した日本側の外交官は、佐藤人権人道担当大使だったと伝えました。

安倍首相はこれまで日本の戦前戦中の歴史への評価があまりに否定的だと主張してきました。
そして今年2月、1993年に日本政府が行った謝罪、歴史上画期的なものとなった河野談話の内容の再調査を命じました。
しかし内外の厳しい批判を浴びると前言を翻し、河野談話の見解を支持すると表明したのです。


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この稿を書いている日の朝刊に、朝日新聞とクマラスワミ氏を攻撃する本の出版広告が掲載されていました。
議論することではなく、両者をいわば個人攻撃することが従軍慰安婦問題の解決にどうつながるのか、私自身は否定的です。

こうした本や今問題になっているヘイトスピーチなどの特徴は、問題を単純化することにあります。
「悪いのは朝日新聞とクマラスワミだ。」
このように問題を単純化する方が、
「賛否両論双方が根拠とする資料を積み上げ、互いに検証しあうことにより史実に近づこう。」
という正論よりもはるかに解りやすく、そして刺激的です。
様々な理由から現状に不満を募らせている、憤懣を何かにぶつけたいが大義名分がない、そんな人々に格好の材料を与えることになります。
戦前戦中、戦争に反対している、あるいは消極的というだけで『非国民』と罵り、長引く戦争により次第に窮迫していく生活に対する不満をぶつけていたのと、構図的に変わりありません。

その不満を暴力に変えてしまうプロセスのさらに極端な例が、下記のイスラム国の戦闘員の募兵だと私は考えています。
単純化した言い方をすると、イスラム教の始祖モハメッドは近隣のユダヤ教徒やキリスト教徒とは友好関係を保つ一方、文化もモラルも無い野蛮人に対する戦いをジハードと認めたはずであり、その証拠にコーランでは征服地において人々に改宗を迫ることは明確に否定しています。
それが今やイスラム教内の異なる宗派に対する殺戮行動すらジハードと呼号、イスラム国はこうしたイスラム教に関する正しい理解を持たない一方、不平不満ではちきれそうになっている若者たちを殺人器械に変えてしまっています。

日本に話を戻せば、報道機関の出版物がこの機に乗じて目障りな対立メディアを攻撃せよ、などというのはどうなのでしょうか?

 

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