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【 地震、津波、そしてメルトダウン – 日本史上、最悪の悪夢は続いている 】《第2回》

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所要時間 約 10分

空を覆ってしまうほどの高さから、人々に襲いかかった真っ黒な津波
完全な静寂、この世の地獄は完全な無音の世界

ヘンリー・トリックス / インテリジェント・ライフ7月号・8月号 / エコノミスト 

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2011年3月11日午後2時46分、1000年に1度という巨大地震が日本を揺さぶり、加納谷さんは家に飛んで帰りました。
戻ってみると、ひさ子さんは自宅で近所の人たちとお茶を飲んでいるところでした。
彼女はくすくす笑いながら、床に散乱した割れた茶碗などをほうきで丹念に掃き取っていました。
彼女の念頭には津波の危険という意識は無いようでした。

彼はそうではありませんでした。
加納谷さんの仲間17人ほどは、この時出来る最良の選択を行いました。
持ち船のトロール漁船に乗込み、沖合へと船を走らせることにしたのです。
彼らは津波が海岸に到達する前に船を操り、これをやり過ごす方法を知っていました。

しかし加納谷さんが一番に心配したのは、船の事ではありませんでした。
目の前にいるひさ子さんの事です。
事は一刻を争いました。
加納谷さんはひさ子さんに車に乗るように言い、内陸に向け車を走らせました。
地震が襲った午後2時46分当時、天候は曇りで、今にも冷たいものが落ちて来そうな雲行きでした。
村を出るとすぐ、水田の間を抜ける狭い道は車で渋滞しており、明滅するテールライトが見えました。

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いつもなら規則に則った運転が行われている状況なら、大きな交差点に進入する前には、だれもが一時停止します。
津波は刻一刻と彼らに迫り、カーラジオからは直ちに津波から逃げるよう、繰り返し警告が発せられていました。
しかし、一向に動く気配の無い渋滞に巻き込まれてしまった彼らは、ただただ一列に車を並べているだけでした。

何人かがホーンを鳴らしていましたが、多くはルームミラーを通し、背後に広がる海の方を見つめていました。
反対車線は走って来る車の姿は無く空いていましたが、右側車線に出て走行しようとする車はありませんでした。
加納谷さんはその道をあきらめ、目的地を2.5キロほど内陸にある小さな丘に変更しました。
底なら安全だという思いがありました。

目指す場所は竹薮に囲まれ、請戸の町を取り囲むように広がる湿地の中にそこだけ隆起していました。
前年に請戸小学校の子供たちのための避難点に指定された程、この丘は安全だと信じられていました。

しかしやっとその場所にたどり着いた時、加納谷さんは背後に地獄のような光景が広がっていくのを目の当たりにしなければなりませんでした。
「それは高さがさ5~6メートルもある黒い壁のようでした。ものすごく高い場所で波の泡がはじけ、どこまでが津波でどこからが空なのか、まるで解りませんでした。」

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地震発生から約1時間後、津波は防潮堤を一瞬で破壊し、内陸を襲いました。
加納谷さんは妻の手を引いて、丘を駆け上がろうとしました。
しかし押し寄せる波の早さは想像を超え、加納谷さんとひさ子さんが充分な高さにまで逃げる前に、波に飲み込まれてしまう事はもはや明らかでした。
加納谷さんは近くの木の枝を体に括りつけ、ひさ子さんを腕の中に抱きかかえました。

凍るように冷たい波が押し寄せ、ものすごい力で加納谷さんの体を引っ張りました。
彼の膝は砕けそうになり、そして最も恐れていたことが起きました。
ひさ子さんを加納谷さんの腕の中からもぎ取っていったのです。

「水が引いて行った後、私は一人になっていました。」
加納谷さんの膝の骨は完全に折れていました。
「私は丘を這い上りながら、何度も何度もひさ子の名前を呼びました。」
しかし彼の呼び掛けに応えたのは、完全な静寂でした。
「私は人生の中で、あれほどの静寂、全く音の無い世界を体験したのは生まれて初めてでした。世界から音が消えてしまった。まるでそんな感じでした。」

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天候はみぞれに変わり、打ちのめされた彼の体はがくがくと震え始めました。
彼は地面にうずくまり、何とか体温を逃がさないようにするため、地面に散らばっていた木の葉を着ていたシャツの中に次々と押し込みました。

数時間後、彼は地元の男性によって救助され、一番近い町まで車で送り届けてもらいました。
その場所で加納谷さんは女性もののジャージを貸してもらい、何とか体を温めようとしました。

翌日、加納谷さんは必死にひさ子さんを探そうとしましたが、ひざの治療のため、病院へ連れていかれました。

その数時間後、福島第一原子力発電所の第一回目の爆発が起きたのです。
福島第一原発を襲った津波はすべての電力の供給を破壊し、原子炉の冷却装置が稼働できなくなり、3基の原子炉をメルトダウンさせました。
原子力発電所の爆発を見た付近の住民は恐怖におののき、日本政府は福島第一原発の周囲20キロ圏内の住民に対し、避難を指示しました。

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加納谷さんが入院していた病院は、ちょうどその外側にあったのです。
しかし病院の医師と看護婦は、加納谷さんを含む入院患者のほとんどを置き去りにしたまま逃げて行ってしまいました。
それからの数日間、加納谷さんは取り残された数名の入院患者とわずかなおにぎりを分かち合いながら、病院で過ごしました。
そして、ひたすら妻の無事を祈り続けていました。

〈 第3回につづく 〉

http://moreintelligentlife.com/content/features/anonymous/fukushima
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3.11の後の数日間、それまで経験した事の無い「間近に死がある暮らし」を強いられる事になりました。
忘れようとしても、忘れられるはずがありません。

しかし自宅も勤務先も地震の比較的軽微な被害だけで済んだ私の場合は、立ち直りが早く済みました。
そこに津波の被害が加わった被災者は今、立ち直ろうとしても遅々として進まない状況の中で苦悩しています。
そしてさらに福島第一原発が吹き上げた放射性物質に、自宅も故郷も汚染されてしまったという方々は?
見通しすら立たないという方が、大勢いらっしゃるのです。

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【 夢を共有する母娘 - 国際婦人デー 】〈2〉

アメリカNBCニュース 3月8日
(掲載されている写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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ライムンダ・エリアンドラ・アルベス(45歳)と娘のアナポーラ・レオナルド・フスティーノ(10歳)。2月10日にブラジル、リオデジャネイロのスラム街の自宅で。
ライムンダは19歳で学業を終え、今はスーパーマーケットのレジ係として働いていますが、子供の時は数学教師になるのが夢でした。
今は娘のアナポーラが獣医になることを望んでいます。
アナポーラはハイスクールに進学の後、大学に進み2025年に大学を終える予定だと語りました。
アナポーラはの夢も獣医になる事です。
(写真上)

モハンナ・カナル(35歳)と娘のヴィパサナ・カナル(12歳)、2月4日にネパールの首都カトマンズの自宅アパートのキッチンで。
モハンナは20歳で学業を終え、学校の教師になりましたが、子供の時の夢は旅客機の客室乗務員になる事でした。
母の願いはヴィパサナが有名なメディア・パーソナリティになる事ですが、本人は2025年に教育を終えたら、ネパールの観光開発を促進する旅行業の職に就きたいと語りました。(写真下・以下同じ)
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ニクイナ・フィエラル(39歳)とフロリ・ガブリエラ・ドミトラチェ(13歳)、2月25日にルーマニアのグーラスティ村の自宅で。
ニクイナには2人の子供がいますが、現在失業中です。
彼女は、娘のフロリの縫製工場への就職を望んでいますが、フロリはポップ歌手になるのが夢です。
彼女は14歳になったら数マイル離れた町のハイスクールに行くことを希望していますが、家族はそのための費用を支払う能力がありません。
幸いルーマニアのNGOにより、進学を可能にする奨学金が給付される事になりました。
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クレア・バレット・バトラー(37歳)と彼女の娘ユリ・バレット・マクヒュー(11歳)、2月27日アイルランドのドニゴール郡の小さな村アーダラにある自宅の前で。
クレアは専業主婦主婦ですが、大学に籍を置き教育を続けています。
彼女は子供時代、特撮映画のスタントウーマンになるのが夢だったと語りました。
娘のユリは20歳前後まで学業を続け、その後美容師に道に進みたいと考えています。
クレアは娘の夢が現実になるよう願っていると語りました。
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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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