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【 なぜ交渉は失敗したのか?テロリストとの交渉、そして報酬に関わる駆け引き 】

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所要時間 約 13分

人質の拘束・人質交換は、アラブ社会では勢力争いの際の常とう手段。相手の『交渉力』を見極めた対応が必要だった
イスラム国との人質交換は一部の国々にとっては悪夢、しかしその交渉はテロリスト集団と直接対決するより、効果的戦略である可能性がある

サイモン・ティズダル / ザ・ガーディアン 1月28日

ISISヨルダンパイロット01
イスラム国に捕らえられたヨルダンの空軍パイロットと引き換えに、何十人もの一般人を殺害したテロリストを釈放する用意があるというヨルダン政府の意思表示は、一部の西側諸国の政府、政治家、外交官をぞっとさせる決定です。
しかし中東諸国の多くは、このいわば捕虜交換が進行しても、肩をすくめる程度で大方は同意することになりそうです。

カリフ、首長、そして各部族が支配地域の争奪や勢力争いを行う際、人質拘束と人質交換は中東地域における常とう手段であり、それを生業とする人間たちの存在すら現実のものでした。
これは別にアラブ社会に限った事ではなく、非常に似たことは中世ヨーロッパでも起きました。
レオ9世がその典型的な例です。
皇子たちは格好の材料でした。
人質は通貨であり、事態を転換させるための『てこ』の役割を果たしたのです。
そして通常、死んでいるより生きている方が貴重な価値を持っています。

イスラム国の人質の取り扱いは、利用するのか、処刑するのか、その扱いは目的によって著しく異なります。

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見せしめのための処刑を人質をできる限り大々的に行うそのやり方は、国際社会におけるイスラム国の悪評を決定的なものにする一方、シリアとイラクにおけるその支配地域においては、立場の違いによる恐怖と尊敬を徹底させることにもなりました。
彼らは自分たちが演ずるドラマから受ける印象をより強烈にするため、動画や他のメディアを効果的に利用し、彼らに対する恐怖をいやがうえにも高めていく一方、交渉力も強めていきました。

こうしたイスラム国の一連の手口は、人質拘束を違法と考える西側の指導者たちにとって、基本的に受け入れられないものです。
彼らの要求に屈することはもちろん、交渉に応じたりその他人質交換に関わり合いを持つこと一切が、許せない事なのです。
その立場を具体的にしているのが、米国政府と英国政府です。
両政府は交渉そのものを否定はしませんが、譲歩をすることはありません。
結果的に人質交換に関わる一切の話し合いが無意味なものになります。

過去にイタリアその他のヨーロッパ各国の政府が、自国民を自由にするためにどんな種類の身代金の支払いにも応じました。
これに対し英米両政府は、結果的に将来より多くの人質拘束事件の発生につながるものであり、西側先進国同士の足の引っ張り合いにつながると批判しました。

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しかしそのアメリカ自身が昨年、アフガニスタンでタリバンの人質になっていたバウ・バーグダール陸軍軍曹と、キューバのグァンタナモ米軍基地に抑留していた5人のタリバン兵との人質交換に応じました。
この対応は国内外で論争の的になりましたが、米国政府はこれまでの方針を変更するつもりはないとしています。

しかし共和党のマイク・ロジャーズ議員は、この決定が「世界中のテロリストに、米国人を人質にとることの大きな誘因を作りだすことになった」として「米国の方針の根本的変換」を非難し、この決定が「これからアメリカの戦士の命を脅かす原因を作りだしてしまった。」と語りました。

ダブルスタンダードの問題は、より根深いものとなっています。
人質交渉を批判し、法に沿った裁きを行うよう求めている同じ人間が、裁判や訴追抜きでテロリスト容疑者をグァンタナモ米軍基地に長期間拘留することは、戦場で人質を連行することと何ら変わりない行為であるという批判があります。

この極めて複雑な状況に足をとられたのが日本政府でした。
日本政府はヨルダンとイスラム国の取引の中に自国民である後藤健二氏が含まれる中、その安全を確保できるのかどうか、折衝を続けています。

ISISヨルダン・パイロット02
日本政府は過去、誘拐犯に身代金を支払ったことがあると伝えられている一方で、1996年に発生したフジモリ政権下での在ペルー日本大使公邸占拠事件では、左翼ゲリラ側の要求には応じませんでした。

保守タカ派の安倍晋三首相は、こうした事件の際には犯人側の要求には従わないとする米国と英国の方針に、日本の歩調を合わせようとしているように見られています。
日本の外交官は、この事件を巡る一般市民の意見が割れていると語りました。
後藤氏を勇敢なジャーナリストと評価する人々がいる一方で、シリアの紛争地帯に入ったこと自体誤りであり自己責任を取るべきだとの意見も多数があると、この外交官は語りました。

安倍首相には今のところ、怒りをあらわにする一方で後藤氏の身を案ずる以外、なすすべがありません。
ヨルダン側が譲歩しない限り、後藤氏とヨルダン空軍のパイロットが生きていられる時間はあとわずかしかないというビデオが公開されたことに対し、「卑劣な」行為だと非難しました。

ISISヨルダンパイロット03
英国トニー・ブレア政権時代に参謀長を務めたジョナサン・パウエル氏は、人質事件が発生すれば最終的には当事国の政府自身がテロリスト・グループとの交渉に臨まなければならなくなると主張します。

パウエル氏の見解では、どうせ交渉することになるのなら、その取り組みは早ければ早い程有利になります。
そうした接触を続けることで、人質解放と武力闘争路線の放棄を含む平和的解決が得られるための糸口をつけることができると、パウエル氏は主張します。

北アイルランド問題では、サッチャー政権時代は爆弾テロなどが相次ぎましたが、ブレア政権になってやっと直接IRAとの直接対話が実現し、人質解放と武力闘争路線の放棄屁とつながっていったのです。

http://www.theguardian.com/world/2015/jan/28/jordan-shows-negotiating-terrorists-reap-rewards
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この稿をアップした朝、後藤さんが殺害されたニュースが大々的に伝えられていました。
痛恨という言葉以外浮かびません。
その来歴と実績を思うと涙しか浮かびません。

ただ思うのは今回、見栄を切ったのはその周辺をボディガードがしっかり警護している保守タカ派の安倍首相、そして殺害されたのはヒューマニストであり、紛争地の子供たちの保護者であり、難民の人々を同じ人間として理解するよう絶えず訴えていたジャーナリストの後藤さんという一般市民だったということです。

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根拠の無い話で恐縮ですが、イスラム教というのはマホメットが生きていた6世紀前後のアラブ社会の、殺人、強盗、強姦などが当たり前のように行われていた状況を嘆いた彼が考えだした究極の解決手段だと、私は考えています。
マホメットがイスラム教の聖典を編集する際、先行していたキリスト教を参考にしたのは有名な話です。
窃盗犯の手首を切り落としたり、姦淫の罪に対する処刑方法が極めて残忍だったりするのは、そのせいではないでしょうか。
一方で偶像崇拝を否定、他宗教であっても規律正しい生活を送っているならその『異文化』社会は尊重しなさいと諭す一方、『野蛮人』には容赦なく聖戦を仕掛けよとするなど、合理的な論理性を有しています。
聖戦の対象を対キリスト教徒にまで広げさせたのは、十字軍遠征を行ったヨーロッパ社会の方です。
十字軍遠征は『聖地』にこだわったキリスト教徒が、イスラム教徒に自分たちを敵として認識させた意味を持っています。

この記事を翻訳していた時も、パキスタンでスンニ派の中の過激派がシーア派のモスクを襲撃し、50人以上を殺傷したニュースを伝えていました。
こうした争いは宗教的動機よりも、実は過去部族間抗争を繰り返していた遺伝子がそうさせるのではないか、ふとそう思いました。
人を殺せば殺す程何かが進展するなどというのは、マホメットなら言下に否定するに違いありません。
マホメットは明らかに『識者』と呼ばれるべき人であり、深遠な哲学者であった仏陀と同じ領域にいた『聖人』であったはずですから…

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【 内戦という名の戦争、難民キャンプ、そしてずたずたにされた子供たちの心 】〈3・再掲載〉

アメリカNBCニュース 3月11日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

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レバノンのベカー渓谷では約5,000人の国外脱出をしたシリア難民が、フェイダ・キャンプと呼ばれる場所で生活しています。
AP通信のニュース・カメラマン、ジェローム・ディレイとNBC放送の番組制作者である立花由香が2日間キャンプを訪問し、まだ成年に達していない戦争の生存者がどんな生活を強いられているか、取材と写真撮影を行いました。

2歳になるシャハドがフェイダ・キャンプの外を歩いています。
彼女が1歳のとき、家族はシリアのホムスから逃れてきました。
母親のハタラがこう語りました。
「シリアでは子供たちが皆不幸な目にあっています。シャハドだけが例外であるはずがありません。」
シャハドの家族はシリアでは自分たちの家を持ち、子供たち全員が自分の部屋を持っていました。
「でも今は6人の娘と1人の息子の持ち物は、このテントだけです。」
(写真上)

9歳のモハメドは、シリア、ハレブの出身です。
モハメドト7人の兄弟、そして両親は2ヵ月前、このキャンプに到着しました。
「ぼくは、爆弾が空から落ちてくるのをみたことがあるよ。」
モハメドがこう離しました。
彼はシリアの自宅をすごく恋しく思っています。
(写真下・以下同じ)
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8歳のアイマンは、3人の兄弟、2人の姉妹と5ヵ月前、シリア、ハレブから逃れてきました。
彼女は、6メートル四方のテントで、両親と6人の兄弟姉妹と暮らしています。
ハレブでの生活は危険な上、食べるものにも事欠く有様で、それが脱出の理由でした。
彼女はキャンプ内の学校に通い、友人と遊んでそれなりに楽しんではいますが、今すぐにでもシリアに戻りたいと考えています。
彼女の夢は画工の先生になる事です。
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6歳のラニムと彼女の家族は、2月にシリア、ハレブから逃れてきました。
ハレブは治安状況が非常に悪く、食べるものも不足し、そして父親にとっては建設労働者としての仕事がありませんでした。
その父は、4人の子供たちが近くで戦いが行われていたために、もはや学校にも行くことができなかったと言いました。
「ここレバノンで少なくとも、子供たちは無事でいる事ができるのです、そして学校へも行くことができます。」
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12歳のマハムードと8人の兄弟姉妹は1年前に、このキャンプに逃れて来ました。
彼は午前8時から午後4時まで自動車修理工場で週6日間働き、週給30ドルを受け取ります。
通勤は徒歩で1時間ほどですが、すぐ下の弟のアーメド(11歳)も同じ修理工場で働き、こちらは週に12ドルしか受け取れません。
彼は教育機会を失ってしまうことを恐れ、夜学に通っています。
本当は働きたくなどないのですが、父親には仕事が無く他に選択肢は無いのだと語りました。
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http://www.nbcnews.com/storyline/syrias-children/tiny-survivors-faces-endless-conflict-n49401

http://www.nbcnews.com/storyline/syrias-children/tiny-survivors-faces-endless-conflict-n49401

 

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