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【村上春樹氏、尖閣列島をめぐる日中両国の『ヒステリー』を批判】[ガーディアン]

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「日中両国は、安酒の酔いから覚めよ」

ジャスティン・マッカリー / ザ・ガーディアン(英国) 10月1日


国際的にも評価の高い文学者である村上春樹氏は、尖閣諸島をめぐる紛争について、日中両国の態度はヒステリックであり、国家主義的立場に立って世論を煽り立て、状況を悪化させていると批判しました。
尖閣諸島(中国名は釣魚島)をめぐる両国の紛争は長年続いていますが、9月初頭日本が尖閣諸島の国有化に踏み切り、中国国内数十の都市で激しい反日デモを引き起こしました。

村上氏は中国国内にも多数の愛読者を持っています。
そして中国当局が彼の著作も含め、日本関連書籍の販売を禁止したことについて、非難すべき行動に出ることは予測していたと語りました。

村上氏は互いに譲ろうとしない日中両国に対し、国家主義という「安酒を飲みくらう」ような行為をやめるよう、呼びかけました。
「領土問題が現実問題では無く、『国民感情』の問題になってしまうと、出口の無い危険な領域に入ってしまうことになります。」
村上氏は朝日新聞の第一面の意見欄にこう記しました。
「それは安酒に酔うようなものです。二、三杯呷っただけで酔いが回ってヒステリックになります。大声でわめき、乱暴に振る舞う…しかし翌朝、酔いがさめた後に残るのは激しい頭痛だけなのです。」

「私たちはこの安酒に酔わせ、事態を手がつけられない状況に陥れようとするとする政治家、そして評論家などを、充分警戒しなければなりません。」

世界40カ国語に翻訳され、現存する作家の中で最も高名な村上氏は、ニューヨークで開かれた国連総会で、日本と中国が非難の応酬を繰り返した後、このようにコメントしました。

中国の楊外相は問題の島々について、中国は「犯すべかさざる領域」とみなしており、常に挑発的言動を行う右翼的な石原東京都知事の動きが発端となって、日本政府が日本人の個人所有者から買い上げて国有化したことについて、「盗み取った」と非難しました。

今回の紛争により世界第2、第3の規模を持つ経済圏同士の外交関係、貿易関係が脅かされることになりました。
日本製品のボイコットは懸念されたほど大規模なものにはなりませんでしたが、当局による日本製品の通関手続きの意図的な遅延が、日系企業により報告されています。


より高い賃金の支払いを求め、日本企業の中国人従業員によるストライキも発生しました。トヨタ、日産などの自動車メーカーはこの秋の需要の減少を見越し、減産に踏み切りました。

「投資家も含め、日本の企業経営者が『もうたくさんだ』と音を上げるだろうことは、避けられないでしょう。」
元外務省の報道官で、現在は慶応大学で教鞭をとる谷口智彦氏がこう語りました。
「中国人労働者の賃金は上昇を続け、その結果、たとえばビルマなどの地域の方が魅力的に見えてきています。今回の紛争により、中国から他の地区への産業基盤の移動が加速されることになるでしょう。」

10月いっぱい、中国から日本への何万件もの飛行予約が取り消されました。
この事態に、5月以降尖閣問題が深刻化するまでの間、中国人旅行客に対し記録的な数のビザを発給してきた日本の当局には、劇的な転換が訪れました

これまでも日本の極右の国家主義者にとって、中国は目の敵でしたが、つい最近、数百名のこの類の人々が、中国艦船を沈め、北京の『テロリスト』に決して屈服しないよう求める横断幕を掲げ、東京都内をデモ行進しました。


日本への渡航が禁止されているわけではありませんが、中国の各報道機関は西日本で起きた中国領事館への発煙筒投げ込み事件の報道などにより、今回の紛争を際立たせ、中国国内の反日デモの気分を煽っています。
日本国内で行われた世論調査で、好きな国として中国を挙げた人が3%しかいなかったのに、中国を嫌いだと言った日本人が38%に上ったことなども、こうした気分を煽ることになりました。

二国間の紛争が今後どれだけ長引くかは、意見が分かれるところです。
両国の貿易額は昨年3,450億ドル(約2兆7千億円)を記録しました。
しかし今回の紛争により、日中国交正常化40周年の祝賀行事がすべて中止されました。

中国は北京市内で開催を予定して板祝賀行事をすべて取りやめ、中国の温家宝首相と日本の野田首相が祝辞を交換することも無くなりました。
共同通信によれば日本国内で開催予定だった祝賀行事もその4割が中止に追い込まれましたが、そのほとんどは中国側の要請によるものでした。

相次ぐキャンセルは今回の紛争が、両国の人々の結びつきに打撃を与えた証拠であると、日本で中国人向けの雑誌の編集長を務める段躍中氏が語りました。
「私たちは民間レベルで日中間の友好のため、一生懸命努力してきました。しかしその努力も水泡に帰してしまいました。私たちは今、どうしようもない無力感に苛まれています。」
共同通信の取材に、彼がこう応じました。


当局の命令により、中国国内の書店から日本人作家の著作に加え、中国人作家による日本関連書籍の撤去が命じられたという報道に、村上氏は失望を隠しえないと語りました。
北京の報道・出版監督局は、そのような命令は出していないと否定しましたが、村上氏の作品『1Q84』を含め、日本関連書籍が書店の棚から姿を消したことは、幅広く報道されています。

影響は、中国の音楽と芸術の世界にも及びました。
ピアニストのユンディ・リは9月から日本でリサイタル・ツアーを行うことになっていましたが、当局の圧力により中止せざるを得なくなったと伝えられました。
東京国際映画祭に招待されていた香港中国フイルムの作品『フローティング・シティ』も、出品を辞退しました。

村上氏は日本も中国の書籍の販売を止める等の、報復行為を行わないよう呼びかけました。
「声を大にして言いたいことがあります。」
「中国に対し、そのような短絡的な報復を行わないようにしましょう。もしそんなことをすれば、私たち自身に問題があることになってしまい、そのつけがいずれ自分に回って来ることになります。」

http://www.guardian.co.uk/world/2012/oct/01/haruki-murakami-hysteria-islands-row
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【障害を持った若者たちの、見事な舞台】

アメリカNBCニュース 10月4日
(写真をクリックして拡大画像をご覧ください)

9月21日、エクアドル・キトのカーサデラ・カルチュラでの『夢』の公演で、出番を待つ女性出演者。


つい最近、エクアドルでは出演者のほとんどが20代に満たない若い出演者によるミュージカルが大当たりしましたが、その出演者の多くは目が見えない、耳が聞こえない人たちでした。
かれらは盲目、自閉症、ダウン症などの障害を持つ人々でした。

しかし彼らは『夢』と題されたこのステージの上で、役者、歌手、そしてダンサーとして自分たちの限界を超えることができたのです。

「この取り組みの最も大切な部分、それは障害者に人間としての誇りを取り戻してくれることなのです。とりわけ障害者の知性に対する偏見、そして多くの差別的感情に対して。」
舞台の上の演技と歌が観客を魅了した若い盲目の女性、マリソル・ヌーニェスがこう語りました。
彼女は幼い時に先天性の疾患により視力を奪われましたが、舞台の上では最も経験豊かな役者であり、そして歌手です。

盲目の少女、マリソル・ヌーニェスがステージに向かう。


この舞台の初演は3年前ですが、生涯を持ちつつも前向きに生きようとする若い障害者たちと、非営利組織の『エル・トリアングロ(スペイン語でザ・トライアングルの意味)』が支えてきました。

そして彼らの『夢』はこれまで何万人もの人々を魅了し、エクアドル国内はもちろん、ついにアメリカ合衆国やヨーロッパでの公演も実現したのです。

列を作って出番を待つ出演者たち。カーサデラ・カルチュラ。


出演者の一人、ジェニファー・アビラはすでにプロ顔負けの出演回数をこなしている。再び『夢』の実現のため、父と出番を待つ。カーサデラ・カルチュラにて


出演者による『夢』のカーテンコール。カーサデラ・カルチュラにて。

 

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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