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「無制限の金融緩和策を」という訴え

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「期待通りの結果が出なければ、その時こそ日本は…」

ヒロコ・タブチ / ニューヨークタイムズ 11月20日


日本国内では前首相でもある、自民党の安倍晋三総裁がこの12月に、首相に返り咲くという予想が専らです。
何年もの間、積極的通貨政策を支持する人々は、デフレによる経済不況から脱却し、日本経済を活性化させる策として、通常では考えられないこの対策を行うよう主張してきました。
日銀はもっと紙幣を印刷すべきだ、金利もゼロのままにしておけ、彼らはこう主張します。
しばらくの間日本は、インフレを許すのだということを市場に確信させろ、と。

そうした過激な措置を採れば急激なインフレーションを引き起こすのではないかと懸念する日本銀行は、こうした主張を取り上げませんでした。
しかし、10年以上の間弱々しい経済成長と価格低迷を打破するためには、思い切った貨幣政策を採るべきだと主張する、経済学者と国会議員が今までは考えられなかった連携をしたことにより、その日銀の手足が抑え込まれようとしています。

かつて首相の地位にあった自民党の安倍晋三総裁が、来月に予定されている衆議院議員選挙の結果、首相に返り咲く公算が高まり、こうした主張が勢いを得ることになりました。
きわめて保守的な立場をとる安倍氏ですが、一方では日本銀行に対し、価格、企業の利益、そして賃金を低下させ、15年間日本経済の不振を演出しているデフレに対し、対策をもっと積極的に行うよう主張し、自らの支持者をも驚かせました。

先週いっぱいこうした発言をさらにエスカレートさせていった安倍氏は、12月16日に投票が行われる選挙で、彼が総裁を務める自民党が政権をとれば、日銀が政府の指示に従わざるを得ないよう、法律を書き換えてでも、日銀の権限を縮小させると語りました。

木曜日に東京で行った演説会で、安倍氏は日銀に対し現在インフレ目標としている1%を大きく上回る2~3%に設定し、『無制限の金融緩和策』を行うよう要求すると語りました。
しかしこの『無制限』という表現に、懸念を抱いた経済学者もいました。
安倍氏はさらに、日銀の公定歩合を現在の0.1%からゼロに引き下げるように主張しています。


安倍氏は週末にかけ、一層踏み込んだ発言を行いました。
熊本県南部の都市では、日銀が政府から直接建設国債を購入することにより、公共事業資金を確保し、貨幣を強制的に市場に流通させるようにするつもりであると演説したと、地元のメディアが伝えました。
しかしこうした政策には疑問の声が上がっています。
日銀は日本の社会が必要とはしていない道路や橋の建設に、際限も無く多額の出費を強いられるようになるかもしれません。

しかしながら、安倍氏の発言は、株式市場を席巻する結果となり、翌火曜日に若干値を戻したものの、木曜日に日経平均株価を500ポイント押し上げました。
金融緩和が実施されれば値下がりすることになる円相場も、2.5%値を下げ、円安によって恩恵を被る日本の輸出業者を安堵させました。

「ずいぶん時間化がかかりましたが、最終的に変化に対する希望を持つことになりました。」
長年金融緩和を主張し続けてきた、東京の学習院大学の貨幣経済を専門にする岩田規久男教授がこう語りました。
「安倍氏が首相に就任すれば、日銀も自らの牙城を守ることはできなくなるでしょう。」

この首相候補はまだ発言を行っただけで、どのような新たな金融緩和策がとられたわけではありません。しかしこうした対策には、市場の期待が実際の金融政策に先行する場合があるという理解が不足しているとする強い反発もあります。
日銀は火曜日に政策協議を行い、これまでの方針を継続する方針をまとめました。


日本銀行は、実際的なゼロ金利政策、国債などの金融資産を買い入れる基金の拡大、量的緩和を含め、この数年間、再度日本経済を成長させるべく一連の対策を行ってきました。
しかし実際には1998年以来、日本の物価は加工を続け、日本経済はデフレーションの中に入ってきました。
確かに対策は採られてきましたが、日銀はデフレからの脱却を実現させることはできませんでした。
日本のデフレを決定的なものにし、消費者と企業の心理を冷え込ませてしまった、日銀による様々な政策の失敗を、経済学者たちは指摘します。
1999年初頭、日本の経済状況が悪化する中、日銀はデフレの兆候が消失するまで、公定歩合の金利を実質ゼロにする政策を維持すると発表しました。しかし2000年中ごろ、経済が上向きかけた時点で、政策変更はまだ時期尚早だと日本政府が抵抗したにもかかわらず、日銀は金利を0.25%に引き上げました。

こうした早すぎた日銀の対応の背景には、何よりバブルの再来を恐れる、恐怖心理があったのだと批判されました。
1980年代にバブル経済がはじけて以来、日本経済は立ち直りを見せていません。バブル当時、株価と地価はそれ以前の4倍にまで膨らみましたが、景気の停滞が本格化した1990年代には、ほぼバブル以前の価格に戻ってしまいました。

以来日銀は物価上昇に関するあらゆる兆候に対して過敏になってしまい、結果的にこの国がデフレに陥り、そこから長く抜け出せなくなった原因を作ってしまったと、批評されています。
日銀は、ゼロ金利政策を打ち出し、金融緩和策をとるようになった2001年以降ですら、インフレ懸念について度々表明し、その兆候が現れ始めた場合には、直ちに金融引き締め策をとることになるとの警告を行いました。


こうした、いわばおっかなびっくりの金融緩和策が、インフレの芽をことごとく潰すことにつながりました。
日本の消費者は賃金の下落と支出の減少が、いつまでも続くものという感覚を抱くことになりました。
収益の減少を予測する企業の設備投資も落ち込んでいきました。
日銀は可能な限り通貨供給量を増やしましたが、市中の銀行の貸出残高が増える気配は一向に無く、消費も投資も停滞を続けました。
日本はデフレーションの中に沈みっぱなしでした。

「日銀自身が自ら行っている政策に自信が持てない状態で、いったい誰がそれを信じることが出来るでしょうか?」
早稲田大学政治経済学部の経済政策が専門の原田泰(ゆたか)教授がこう語りました。
「人々にデフレが進行すれば大変なことになると納得させることが必要でしたが、インフレーションはすべて兆しが見えただけで終わりました。政策の失敗です。」

日銀が金融緩和策の継続に消極的な態度で臨み、さらには政府からの独立を維持したいと願い背景には、日銀は政府の経済政策のために紙幣を印刷する機関とは見られたくない、という動機があります。

市場が日銀を政府が行う経済政策のために安易に資金を供給しているとみなされてしまえば、政府が抱える公的債務に関する信用不安を引き起こすことになると、日銀側は主張しています。
もしそうなれば政府の資金調達コストが上昇し、日本の財政はヨーロッパのような債務危機に陥るというのが、日銀の説明です。

「我々の通貨政策が、実は公的債務を何とかしようという動機の下に行われているという誤解が広まれば、長期金利の上昇につながり、実体経済に損害を与えて、しまいます。」
火曜日、日銀の白川総裁がこのような懸念を表明しました。


野田首相は20日火曜日、安倍氏が「欠陥のある経済政策」を説いてまわっていると批判しました。
野田首相が率いる民主党は、直近の世論調査で自民党に対する退勢を挽回しつつあります。

金融緩和策では、日本経済の立て直しは不可能だという疑問を呈する人々もいます。
彼等は日本経済の根本、構造的な問題を指摘します。
急速に進む高齢化、硬直した商習慣、産業の空洞化などの問題です。

BNPパリバのチーフ・エコノミストである河野龍太郎は20日、日本の財政赤字について、
「悪化する一方の麻薬中毒患者」と表現しました。
「財政政策あるいは金融政策で、日本にとっての新たな価値を創造することは不可能です。」

しかし安倍氏のような金融緩和政策を強力推し進めようとする人々は、デフレを克服し、日本経済を回復させるためには、投資先としての信用回復がより良い方法だと主張しています。

小規模なインフレが価格を押し上げ、円安が輸出産業の追い風となってその収支を改善させる効果があることに言及した上で、収入が増加し、消費は活性化し、政府は税収が増加すると主張するのは、安倍氏率いる自民党の国会議員、山本厚三氏です。


「基本的にこうした政策は、日銀がこの15年間に行わなければならなかったことです。」
「2、3%のインフレを心配しなければならない理由などあるはずが無いのです。」

しかし、安倍氏があまりに強力な金融緩和策について声高に言い過ぎ、結局投資を呼び込むことに失敗した場合について、金融緩和策を支持する立場の人々も警鐘を鳴らします。
「彼らはこういうかもしれません。『だめだったな、いや、始めからだめだって解ってたんだよ…』、そして一層ひどいデフレがこの国を見舞うことになるかもしれません。」
学習院大学の岩田教授がこう語りました。

「その時こそ日本は、抜き差しならない状況に追い込まれることになるでしょう。」


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この原稿を訳していて、実は途中でやめようかと思いました。
私は金融については門外漢に等しいため、なかなか翻訳がはかどらなかったためです。
しかし訳し終えて、やはり田淵広子さんはさすがだな、と思いました。

私は今回の選挙を迎えるに当たり、自民党の『公約』について、何だか非常に乱暴な印象を受けました。
そしてこの記事を訳し終えて、やはりその印象は間違っていなかったのだな、と感じたのです。
すなわち「無制限の金融緩和策」というのは、イチかバチかの大バクチなのだという事が解りました。

賭けのモトデになるのは私たち国民の生活、そしてこの国の未来です。
賭けに負けたとき、最も悲惨な目に遭わなければならないのは、立場の弱い人々です。
定職のない人々や低所得の人々、母子家庭や父子家庭の方々、高齢者世帯に老老介護世帯、障害者の方や施設で暮らさなければならない子供たち…

古来、弱者に対する視点を失った政治がうまく行ったためしはありません。

塩野七生さんの『ローマ人の物語』に、こんな話が紹介されていました。

ハドリアヌス帝は、市民の話を直接聴くことが多い皇帝だった。
しかしその日は急用があり道を急ぐ皇帝に、一人の寡婦が進み出て、
「私の話を聴いてください。」
と話しかけたとき、
「今日はその暇が無いのだよ。」
と答えた。
するとその女性は
「だったらあなたに為政者たる資格は無い!」
と言い放った。
ハドリアヌスは身をひるがえし、女性の話を聴き始めた。

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【停戦合意を祝うパレスチナの人々】

アメリカNBCニュース 11月21日


21日水曜日、イスラエルとハマスが停戦に同意しました。

140人以上のパレスチナ人、そして5人のイスラエル人犠牲者を出した8日間の戦いがここに終了しました。
ガザ地区では数百人、数千人の人々が通りに出て停戦を喜び合っていました。
イスラエルによる爆撃に代わり、この夜は何発もの花火が夜空を焦がしました。


 

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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